表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1話5分で読めるショートショート集 ~隙間時間に贈るなろうの物語~  作者: とあるワナビ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/20

8-宝くじ

 宝くじが当たれば天国。外れれば地獄。


 私はしがないサラリーマン、大学を卒業して就職したのはいいが安月給。昇給も雀の涙ほどで、なかなか貯金もたまらない。なのに、増税や年金問題もあり自分の将来が不安になってきた。もはや年金も当てにできない老後をどうやって乗り切るか考えていた。まだ三十代半ばだが、毎日のニュースで取り上げられる貧困問題を見るたびに不安だけが積み重なっていった。


 そんな時である、投資に興味が湧いたのは。ある時本屋で見かけた雑誌にこう書いてあった。

 「社会に頼らない生き方。自分の未来は自分でつかめ」

 よくある投資のあおりだったが私の心に響くものがあった。会社にも国にも頼れないなら自分しかないじゃないか。気づけば、その雑誌を手に本屋のレジにいて購入し、速足で家に帰って熟読していた。


 その雑誌は、仮想通貨への投資に関するものだった。


 仮想通貨とは仮想空間で受け入れられた電子マネーで、ブロックチェーンという技術をもとに作られている。通常、円やドルなどの通貨は国によって発行され、その価値は国によって保証されている。それに対し、仮想通貨の価値や信頼は、使用者によって保証されている。送金も簡単にでき使い勝手もいいので、昨今の国家への不信感も合わさり価値が上昇しているようだ。例えば数週間で価格が倍になるのも消して珍しくはない。

 

 その本を読んだ私は早速口座を作り、貯金をつぎ込み雑誌で取り上げられていた仮想通貨を購入した。こういった取引ではレバレッジをかけられるので少ない金額でも大きな利益を上げることができる。ただ、初心者がやると危険なのでやめておいた。


 それから仮想通貨のチャートを見るのが日課となっていった。毎日見るたびに増えていく口座残高を眺めながら、にやにやが止まらない。


 「こんなことならもっと早く始めておけばよかった。そうだ、こんなに上がっていくならレバレッジをかけてもいいんじゃないか。そうすればもっと大金を得られる」


 上がり続けるチャートを見て気を大きくした私は、レバレッジを最大までかけて仮想通貨を追加購入した。毎日増える数字を眺めては幸せな日々が続いていた。


 しかし、その生活は突然終わりを迎える。


 「えっ!?下がってる……」

 今まで上がり調子だったチャートが下がり始めた。どうも中国が仮想通貨に対する規制を始めたようだ。

 「まぁ、でもすぐに戻るだろう。まだ買った価格よりは高いし、そのうち戻るんじゃないかな」


 しかし、日に日に下がるチャートを見ながら、そろそろ上がるだろう、と自分に言い聞かせるようになった。そうしてついに、損益がマイナスになった。今まで貯めた貯金が減っていくのを見ていくのはとてもつらい。正直、ディスプレイを壊して見なかったことにしたかった。だがそれをしても根本的には解決しない。

 

 そのうちみるみる減っていく数値を見て、画面に警告が出た、どうやら仮想通貨を維持するためのお金がなくなりそうで追加入金してくれとのことだ。それをしないと強制決済するとのこと。しかし、貯金をすべてつぎ込んでいるため追加するようなお金はない。給料日もまだしばらく来ない。


 「とんでもない、強制決済されると貯金が消えてしまう。どうせ戻るんだし、なんとかならないか」


 私は金策をいろいろ考えたが、良い案が浮かばなかった。サラ金に手を出そうとも思ったが、親から怖さを教え込まされていたのでそれを使うことはできない。ではどうするか、悩んだ私は宝くじを買った。正直これくらいしか方法がない。神に祈る私。


 そして、当選番号が書かれた新聞を見る。

 

 その結果は。

 

 その夜、私の十年分の貯金が吹き飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ