7-なかよし
俺は御主人のしゅうくんに抱えられ、我が終の棲家から雑草の生い茂る庭に出された。終の棲家というとかなり大げさかもしれない。しかし俺はこの小屋を気に入っている。2年という月日をここで過ごして愛着がある。
「ちょっと掃除するから外で遊んでてね、名古屋」
しゅうくんは言い終わると、箒をもって我が小屋に入っていく。
名古屋というのは俺の名前だ。俺は名古屋コーチンという由緒正しい血統の鶏である。そこの頭文字をとって名古屋と呼ばれているのだ。我がご主人のネーミングセンスはいかがなものかと思えるが、それでも安全な生活を提供してもらっているので何も言えない。
(いいってことよ、しゅうくん)
バサッと翼を広げ、コケっ! と俺は元気よく返事した。種族の違いもあり、意図がきちんと通じているかは微妙なのだが。しかし、紳士な俺は感謝を忘れない。
そして俺は、しゅう君が俺の小屋の掃除に夢中なことを確認し、駆けだした。悪いなしゅうくん、今日の俺には遊んでる暇なんてないんだ。そう心の中で呟き、俺はある場所へと向かった。
普段ならばこの合間、ここで草やらミミズやらをついばんだり、仲良しのカラスと世間話している。しかし、あいにくと今日はやらねばならないことがあった。
庭を駆けて辿り着いた先には大きな扉があった。しゅうくんたち人間が住む家の玄関だ。この家の中に俺が探している奴がいるはずだ。
奴を見つけるにはこの中に入らないといけない。しかし当然ドアは閉ざされていて、俺の非力な翼じゃ開けることはできない。奴は俺と同じくらいの大きさであり、出入りしているため、どこかに出入口があるはずなのだが。
少し考えて、気付く。扉の下には小さな出入り口があった。これが奴の出入りするときに使っている扉だろう。俺は、扉の下についている小さな出入り口から家の中に入る。
家の中に入り、俺はあいつの姿を探す。
しばらく探し回っていると……いた。ソファの上でごろにゃんとくつろいでいる。そいつが俺の探していた奴だ。
俺は、バタバタと翼を広げながら言う。
「おい、おまえ」
ソファで伸びていた奴はごろんとこっちを向いて、けだるそうに
「うー、にゃん? だれだよ吾輩の昼寝を邪魔するのは」
「俺だ、名古屋だよ。今日という今日は許さん、いくら紳士な俺でも我慢の限界だ!」トサカに来た
「にゃんだ、名古屋君じゃないかどうしたんだいこんなところで。そんなに怒ってどうしたんだい?」
尻尾をふりふりしながら、にや笑いで答える
「てめえの心に聞いてみろ
「は? にゃんのことだ?」
「お前、俺の小屋で毎度毎度つめを研ぎやがって、今日は許さんぞ」
「にゃんだ、そんにゃことかよ、だってご主人がここでやったら怒るんだぜ」
「そんなことはどうでもいい、今日であったが百年目!」
俺は飛びかかり
「今日こそは許さん! くらえシザー」(つつく攻撃)
「ちょ、危ないにゃ」
三毛はひらりとかわす。
ちっ、身のこなしの軽い奴だ
「にゃにを怒ってるかは知らないがそっちがその気ならこっちも本気でやらしてもらうぜ」
「そっちがその気なら、くらえ」猫パンチ
三毛が俺に飛びかかってきた、その場で飛び上がり間一髪その攻撃をかわす
「ちっ、やるじゃねえか」
く、やるな。
へ、お前もだぜ。
しかしこれはどうかな。
◇ ◇ ◇
「おーい、名古屋。掃除終わったよー。あれ? どこ行っちゃったんだろ。ん?」
掃除を終えた修君が目にしたのは、仲よさそうに眠る1羽と1匹の姿でした。




