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1話5分で読めるショートショート集 ~隙間時間に贈るなろうの物語~  作者: とあるワナビ


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6-Aランクミッション

 俺は不自然にならないように、周囲の人々と同化するように雑踏を歩く。これは誰かを尾行したり、監視したりする上で一番重要なことだ。人は不自然さを嫌う、少しでも目立てばその時点でアウトである。


 俺はターゲットの女が自分の視界に収まっていることを確認し、人ごみの中を進んでいく。ターゲットの女は大学生くらいの歳で、その友達とみられる女の子と街を歩いていた。


 そのターゲットとその友達が喫茶店に入る。時計を見ると一二時だった。

 俺は少したってから喫茶店へ入る。すぐに入ると少し怪しまれるから、時間をおく。


 席に着くとターゲットを確認できることを確認して、アイスコーヒーを注文する。研修中らしきウエイトレスが慣れない動作で注文を繰り返しカウンターへ戻っていく。そこで俺は、ようやく一息ついた。



 探偵になって、もう5年経った。子供のころから探偵にあこがれて、高校卒業後に家出同然で東京に出てきた。そしてその当時有名だった実力派の探偵事務所に転がり込んだ。


 今思えばとても無謀だったと思う、普通に考えたらそんなどこのガキともしれないやからをすんなりと働かせてくれるはずがない。

 しかし、そこの所長は違った、こんな俺のためにアパートの保証人になってくれたり、色々と世話してくれた。そんな所長に恩返しをするために俺は一生懸命働いた。


 この五年間、がむしゃらに働いた、どんな依頼だろうと嫌な顔せず、誠心誠意こなしてきた。ペット探しだろうと、失せ物探しだろうと、なんだってやってきた。


 そのおかげか、俺はどんどんとランクが上がり、扱える仕事の幅も広がっていった。ランクはA~Eまであり、Eはペット探し、Cは浮気調査という風にランクが上がるほど難しい仕事を扱えうことが許される。


 そして昨日俺は、署長からランクAに上がったことを聞かされた。

 ランクAは最高ランクである。仕事内容は守秘義務があり外に出ないので詳しくはわからないが、重要な事件を担当することもあるらしい。もともと警察側の人間だった所長には協力依頼という形で仕事が回ってくる。そう言った任務がランクAに任されるのだ。


 そしてこのランクAミッションをこなせるのは俺を除き数人しかいないそうだ。うちの探偵事務所は結構人がいるのだがランクAをとれるのは一握りらしい。


 したがってこのミッションは絶対に失敗することはできない。


 今回のミッションのターゲットは二十代の女性である、朝から監視しているのだが、特に変わったところはない。普通の学生のように思える。見たところ友達と遊んでいるだけにも見える。


 しかし、あの署長が直々に、ランクAを渡して来たのだから、なにかあるのだろう。極悪人か、それとも重大参考人か、いずれにせよ失敗は許されない。


 喫茶店に入って、会話内容は聴こえない、意外と混雑しているようだ。本当なら近くの席に座りたかったのだが、仕方ない。


 十二時五〇分を少し回ったくらいに彼女たちは、外に出た。


 そこで、彼女たちは別れたようだ。さて、俺は見逃さないように追っていく。人通りの多い所を歩いているためかなり気を遣う、こういう所ほどやりにくいことはない。


 駅について有名な犬の像の前に行く、誰かと待ち合わせているのだろうか。男と待ち合わせていたようだ、もしかしたらこの男が、重要な秘密を抱えているのかもしれない。


 彼女らはそのまま、二人は仲の良いカップルのように、歩いていく。そのまま改札を通りホームへと進む。そして電車に乗り込んだ。俺もそれを見て同じ車両に乗り込む。


 しかし、駅員の声が響きドアが閉まり始めると、急に彼女たちが外に降りた。俺はとっさの事に、反応できず、そのまま電車は出発してしまった。まさか、尾行がばれていたのだろうか。


 いくら考えても仕方がない。ミッションには失敗してしまったのだから、このことは所長に報告しなければならない。所長に怒られると思うが、自分のミスが招いた結果だ。潔く怒られよう。まだまだ修行が足りないのかもしれない。


 * * *


 やっぱり、つけられていたか、朝から妙な視線を感じると思った。

 どうせお父さんだろうな、探偵事務所の所長という権限を利用して私を尾行させるとは、あとでお仕置きが必要だな。


 あんな若造をつけるとは私もなめられたものだ、彼はまだまだ技量が足りない。


 急に電車から降りた私に彼氏は不思議そうにしていたけど。あえて何も言わず、笑った。


 今日くらいはデートを楽しみますか。



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