10-いつもの朝
――ガコン。
新聞がポストに入れられる音。
だんだんだん、と階段を下りていく音が徐々に遠ざかっていく。
目を開けるとそこは見知った天井。
何百回も見たことのある風景。
一度くらいは知らない天井を見てみたいものだが、それはそれで怖いのでやっぱり見たくない。
まだ起きたくないという体の言い分を無視してベッドから起き上がる。
台所に行き、いつものようにポットに水を入れ、お湯を沸かす。
その間にカップにインスタントコーヒーの粉末を入れ、角砂糖を放り込む。
お湯が沸く間にポストから新聞を出す。
軽く一面を眺めながら慣れた手つきでカップにお湯を注ぎ、机に運ぶ。
新聞をその辺に置き、コーヒーを飲みながらパソコンの電源を入れ起動を待つ。
いつもと同じ習慣。
いつもと同じ手順。
いつもと同じ匂い。
いつもと同じ風味。
いつもと同じ場所。
何も変わらない。
いつもの日常。
起動したPCをマウスで操作する。
ブックマークからいつものサイトを表示させる。
そこにはいつもと違う物語でいっぱいだった。
それが私のいつもの朝。
日常から外れる、唯一の瞬間。
祝、十回!




