1-一人のワナビの物語
そこに、ワナビがひとり居ました。
ワナビは机でPCに向かいながら、キーボードを叩きながら、小説を書こうとしていました。
けれど、そこから生み出される物語は稚拙で読むに堪えないものでした。
彼には文章力がなかったのです。
それでもワナビは書き続けます。
それが、彼の最後のあがきだったからです。
ワナビは飽きっぽくて怠け者でした。
音楽家になりたいと言って始めたピアノも三年で辞めてしまったし、
作曲家になりたいと言って始めた音楽理論の勉強も一曲も作れず終わりました。
漫画家になりたいと言って始めた絵の勉強も三日坊主を三十回程度繰り返して描かなくなりました。
ゲームを作りたいと言って始めたプログラミングも始まる前に挫折してしまいました。
ワナビは口だけだったのです。
そして今度は小説家になりたいとほざくのです。
なぜ自分は生まれたのか、目の前の現実に目を背け
自分の役割は何なのか、身の前の障害を背に
認めてくれない世界から逃げているのです。
だから、これが最後の逃げなのです。
自分自身を認めるために。
でも、辞めるといけないから枷を付けました。
まずは百話毎日投稿すること。
できなければ、まっとうに生きること。
それが、良心の、常識の、最後通告でした。
言い訳できないように衆人監視の元それは行われるのです。
だからワナビは書き続けるのです。
ただ、ひたすら、認めてもらうために。




