1部 12芒星魔方陣 編 3章 マジシャンの特質 3話
一方、治癒魔法に関しては特別な制限が無いと言うこと。しかしシールド系の魔法は法的制限が有ると言うことだった。
「では、端末の使い方に付いてですが」
そこから端末の使い方の説明を受けているうちに休み時間になってしまった。実技は次の時間となった。
「何をしてたの?」
多香子が聞いた。
「魔法の使う時の説明と端末の使い方」
私も魔法の実技は楽しみにしていたから少しがっかり気味に答えた。
「でも次から魔法の実技に参加出来るって」
多香子がそれを聞いて不思議そうに問いかけた。
「浩子って今使える魔法のプログラム、持ってるの?」
「え?」
「魔法のプログラムよ、持っていなかったんじゃない」
「昨日、使ったプログラムを使うんじゃないの?」
「能力タイプを調べるヤツでしょ?あのプログラムは今日の実技では使えないよ」
「じゃあ、もしかしてこれから自分で作るの?」
「私のプログラム?使う?」
「良いの?」
多香子は持っていたスマートフォンの画面を操作している。
「浩子が使ってる端末を貸して」
「うん」
私は端末を多香子に渡した。多香子はその端末を操作して赤外線通信でデータの送受信をした。
「これで使えるよ、これは先輩から貰ったプログラムだけど」
多香子はそう言いながら私に端末を返した。私は端末の画面を見たがまだ操作方法が分からない。
「これ、どうやって使うの?」
「どうやってって」
多香子が逆に聞き返した所で休み時間終了のチャイムが鳴った。
竹田先生は私と多香子の様子を見て、
「岡本さんにプログラムを渡したの?」
「ええ、はい」
「岡本さん、でもちょっと、そのプログラムを使うのは待ってもらえる」
「ええ、はい」
そう言った後にコンピュータ室に坂本先生が入ってきた。竹田先生は坂本先生に簡単な説明をしていた。
「それなら丁度いいかな」
坂本先生は、そう言って私の方へ向かった。
「君のタイプがマジシャンって話は昨日説明したね」
「はい」
「じゃあちょっと私もそのタイプの事を調べたいから試してみようか」
その後、多香子と私は坂本先生に連れられ第1実習室に入った。周りの生徒達は「何が起きるのだろう?」とばかりに様子を伺っている。
「えっと浦さんでしたね、ウィザードタイプの炎属性だったかな」
「はい、そうです」
「それじゃあ、さっき岡本さんに渡した炎のプログラムをやってくれないか」
「ええ、良いですけど」
多香子も私も比べられている事が分かった。
「竹田先生、準備は良いですか」
「はい」
竹田先生は三脚に固定したカメラを用意して待機していた。
「じゃあ、悪いけど頼むね」
坂本先生は多香子に言った。多香子はスマホを操作した後、スカートのポケットに入れ、銀のステッキを両の手の前にかざし目を閉じた。
「いっけ-!」
多香子が叫んだ。持っているステッキの前の空中で大きな青い魔法陣が現れた。「THIS CALL FIRE BALL!! ((DG3Q/E25R*UN108+(27√y+386(389)*√U2:25VE-38)=CE99XJE ENTER」と、ステッキの先から現れた魔法陣は的に垂直に現れ文字と文字の間には模様が現れてまたステッキに収束していくように魔法陣が消えた。一瞬しか見えなかった筈なのに全ての文字が何故か全て読めた。
そして、ステッキの先で新たに模様だけの魔法陣が現れ、そこから青い光の線で描かれた放電機の針が現れライオンの様な音と共に針の間に小さな炎ができだんだん大きな塊になった。現れた炎の塊はまるで小さな太陽の様でソニックブームを起こしながら的に向かって矢のように飛んでいた。
的に当たった火の玉は高さ3m程の火柱を上げて炎上し的は跡形も無く燃え尽き的を支えていた支柱が溶けて根元だけが残っていた。
「すごい」
私からは的まで30m以上離れているにも関わらずに伝わってくる爆風と熱波に驚いた。
多香子は凄いデジタル魔術師だ。と私は思った。周りの生徒達もさすがに驚いているようだ。多香子の本気を始めた見たかのように「すげー」とかざわついているのが感じて取れた。
「どう?」
多香子は満足そうな顔で私に言った。
「凄い、すごーい、もの凄い魔法だった」
私も興奮気味に言ったと思う。
「じゃあ、次は岡本さんの番、お願い」
坂本先生は手に持っていたファイルを確認しながら私に促した。
「私、あんな凄い魔法使えませんよ」
「君のマジシャンと言うタイプの資料がこの学園にも余りなくてね、その一つに『通常のデジタル魔法のプログラム』がマジシャンでも使えるかを確認したいんだよ」
「それって危なくないんですか?」
「通常は全く問題無く使用出来ると資料には有るんだが資料が少なくてね。危なくなったら助けるからやってくれないか」
「分かりました」
少し不安だが承諾した。
「どの魔法だったの?」
多香子に端末を見せた。
「えっと、これ」
多香子は私の端末の画面を指でタッチしながら教えてくれた。プログラム一覧の中に有った「FIREBALL DRAGON」を選択して実行し、ポケットに入れて的まで歩いて近づいた。
目を閉じるとまた今までに見たことの無いプログラムが次々と頭の中に流れ込んでくるように入って来る。データ容量にして2.83にもなる。一体貰った学校から携帯端末にこれだけの容量が入る物なのか?
──ENTER──
目を閉じていたにも関わらず多香子の時と同じ魔法陣が現れた。
目を開けると足元から緑色の光の柱が昇る様に全身に上登り、全身から真っ赤な炎が吹き出した。
「キャーーァ」
周囲に居た生徒が悲鳴を上げた。私も予想していなかった出来事だった。その場から一歩も足が動かない。しかし私に纏わりつくと言うより私の体中から噴き出すように出るその炎は熱くも冷たくも無く息も普通にできた。
私は業火の炎に包まれた中から周りを見ると慌てて消化器を持って来る生徒やその場で尻餅をついている生徒もいる。坂本先生もこの事態を予測出来ていなかったみたいでものすごく慌てて自分の端末を操作している。
──なんとかしなきゃ──
私は今、自分の周りに有る炎を的に移す様な事を考えた。何かまたプログラムが頭の中に浮かび上がる。
──ENTER──
何だか分からないが実行して的に軽く右手で触れた。全身を覆っていた炎が一気に的に移り爆発した。しかし爆風も熱波も何もかもが私を避けて炎が周囲に飛び散る。
「な、なにそれ」
多香子が怯えたような表情で私に言った。
「私も何が何だか」
私を避けるように黒く煤け的の周りは赤くコンクリートが溶けている。私はそのまま意識を失い膝が折れる様に倒れた。