1部 12芒星魔方陣 編 3章 マジシャンの特質 2話
翌日午後の授業は魔法実技の時間になった。
私以外のみんなは魔法アイテムを持っている。ステッキだったり懐中時計だったりする。
「それが多香子の魔具?」
多香子のアイテムは銀で出来たステッキに細かい細工がしてある。
「そっかー、浩子には魔具が要らなかったんだね」
私は逆にみんなが持っている筈の魔具を持っていない事が何だか逆に浮いている感じがする。
「魔具が要らないなんて便利だよな」
野間君が私に魔具を持って無い事を珍しそうに言った。
「何だか私、場違いな所にいる気分よ、だけどそういう野間君も何も持っていないよね?」
「俺はこの腕輪が魔具なんだ」
野間君はそう言って右手に付けている腕輪を見せた。銀で出来た縁取りの腕輪で随分使い込んだような色に変わっている。
「銀ってすぐに変色するわよね、それでも大丈夫なの?」
「中まで錆びる訳じゃないから大丈夫だよ、それにこの年期の入った感じが良いんじゃ無いか」
「所で、みんな魔具として持ってる物ってステッキや腕輪の様な物しか無いの?武器っぽい物を魔具にしても良さそうなのに」
「そういうのは普通に銃刀法で掴まるだろ」
「そっか、そだね」
研究都市特区として経済学術研究都市、通称学研都市が設立されたが一部例外も有るみたいだが基本的に日本の法律が適用される。そこへ竹田先生と前嶋先生が私達が居る体育館に入ってきた。
「では、これからデジタル魔法の実技を始めます」
みんな整列して一礼をした。私は周りを見渡し同じように礼をした。
「今日は、攻撃系の魔法ですから、怪我や事故の無いように注意して下さい。それと、いつもの様に人に魔法を撃たないようにくれぐれも注意する事」
前嶋先生の簡単な説明が終わると。全員があのコンクリートで囲まれた広場へ移動し始めた。
「ほら、浩子こっちよ」
多香子が声を掛けた。
「ちょっと待って」
このコンクリートで囲まれた広場の事を『魔法実習室』と言うらしいこの部屋は5部屋部屋有って第1このコンクリートで囲まれたテニスコート4面分くらいの広場で第3はこれに屋根の有る地下室になっている。第2・第4・第5が教室になっているそうだ。主に第1・3実習室では攻撃魔法の実習を、第2・4・5実習室は回復系の実習をするそうだ。
そしてそれら教室の隣にコンピュータ室が有り、端末で作りづらい魔術のプログラムはその部屋に有るパソコンを使用しても良いことになっている。
「岡本さん、こっちへ」
私は竹田先生に呼び出された。
「貴方、まだ携帯端末を持っていなかったわね」
「ええ」
先生はコンピュータ室の棚から箱を取り出して中身を出した。
「では、これを使って」
昨日、井伊君が使っていたデジタル魔法の端末を私に渡した。
「これの使い方はどうやって使うのですか」
「まずはその端末に貴方のデータを記憶させないといけませんね」
「はあ」
竹田先生は私とさっき見せた端末を持ってラックに入ったサーバーの様なコンピュータの前に来た。
「ここに座って」
サーバーから繋がった卓上形の機械の前に有る椅子に座らせて竹田先生は
「端末に個人情報を入力する為に岡本さんの血をこの機械へ登録しないといけないの」
「それはどうしてですか」
「デジタル魔法は誰でも使える事は多分知ってるよね」
「はい」
「だから、誰でも使えるから無暗やたらと誰でも魔法を使って秩序が乱れないようにする必要があるの」
「血で魔法を使う人を確認すると言うことですね」
「どっちかと言うと、デジタル魔法は端末と使用者の接点が無いから血液でリンクさせると言った方が正確かな」
「分かりました」
「ここに親指を置いてくれる」
卓上形の機械の中央に丁度指を当てる部分が有りそこに親指を当てた。
「じゃあちょっとチクッてするから我慢してね」
「はい」
「はい、いきます」
竹田先生は機械の操作をした。親指に針が刺さった。
「ウッ!」
分かってても痛いものは痛い。
「はい、そのままじっとしててね」
その後、機械から音がした。
「はい、お疲れ様」
私は機械に当てていた親指を離した。血はまだ少し出ていて先生は医療用エタノールに浸したガーゼを当ててくれた。
「そのまましばらく血が止まるまで押さえてて」
私はそのまま竹田先生の様子を見ていた。先生はサーバーに接続されているパソコンを操作した後、端末にコードを接続してデータの通信を始めた。それからしばらくしてパソコンから合図が有った事を確認して端末のオードを外した。
「これで、この端末は岡本さん物よ」
「有り難うございます。これで魔法がいつでも使えるのですね」
私は、親指の血が止まったことを確認しながら言った。
「その前に、魔法の取扱に付いての説明をします」
竹田先生から魔法の使い方に付いて説明を受けた。
デジタル魔法の使用はかなりの制限を受けている。特に攻撃魔法は場合に寄っては人を殺傷する能力が有る事から自由に使用出来ず。使用した場合は端末のアプリから学研警備隊へ使用者のデータが送信されるようになっていて、場合に寄っては事情聴取を受ける事が在るらしい。