1部 12芒星魔方陣 編 3章 マジシャンの特質 1話
教室に戻った頃には午前の授業が終わっていてお昼休みになっていた。
多香子は他の女子生徒の所に居たが私に気付き私の所へやって来た。私も机の上に弁当箱と椅子を近づけ座った。
「先生に呼び出されて何が有ったの」
「もう一度、魔法のタイプを調べたの」
私も多香子もお弁当の包みを広げて蓋を開けた。
「それで浩子はどんなタイプなの?プリースト?」
「マジシャンだって」
「なにそれ、トランプでもするの?」
「なんだか珍しいタイプらしいのよ、魔法を使うとき魔具が要らないんだって」
「ええー!」
多香子はびっくりして立ち上がった。椅子が後ろに倒れるほど勢いよく立ち上がったせいで教室中の生徒が私と多香子に視線が集まった。多香子は少し恥ずかしそうに顔を赤らめ慌てて倒れた椅子を元に戻した。
「それでそのマジシャンってタイプはどういう感じなの?」
多香子は周りの視線を気にして小声で聞いた。
「全系統の魔法が使えてメイジタイプより魔法の効果が有るのだって」
「それって最強じゃない?」
最強?って思いながらも私は話を進める。
「でも、直接人や物に触れないと魔法が発動しないのだって、実際そうだったし」
「つまり、最強だけど欠点もあるって事」
「まあ、そうなるかな」
多香子は机に乗り出した姿勢から椅子の背もたれに体を預けた。私はお弁当のおかずを箸でつつきながら付け足した。
「坂本先生が言うには遠距離タイプでは無く接近タイプの魔法だと思えば良いって」
「教頭先生がそう言ったの」
多香子は私の様子を伺いながらプチトマトにフォークを刺して口に運んだ。
「今度の魔法の実技の時、浩子の魔法を見せてよ」
多香子は私に顔を近づけてそっと言った。
「でも、スマホまだ持ってないよ」
「それは、どうにでもなるよ」
「どういう事?」
「DMO-Systemは何でも良いのよ、携帯でも何でもそれにアプリをインストールして使うのだから」
「じゃあ、私のスマホでも良いの?」
「ええ、デジタル魔法のアプリをインストールするの」
「そうなんだ」
「今度の授業までに何にアプリをインストールするか考えておいたら」
「多香子は何にそのアプリをインストールしたの?」
「私は携帯に」
多香子はそう言ってスマートフォンをブレザーのポケットから取りだし画面を操作しアプリ画面を私に見せた。
「私、ガラケーなんだけど」
私は携帯電話を取りだした。父の反対を押し切って学研都市へ来て余りお金が無いからスマートフォンの通信料を払う余裕が無い。
「大丈夫よ、螺旋魔法用に学校から専用端末も貸し出し出来るから」
「そうなの?じゃあなんで多香子はそのスマホにしてるの」
「幾つも携帯を持ってたら邪魔じゃない」
「なるほど、所で螺旋魔法ってデジタル魔法の事?」
「ああ、まだ実際にデジタル魔法を使っている所見た事無いのだっけ」
「うん、今日のは属性を調べる魔法だったし」
「デジタル魔法は2つ魔法陣が出る事は聞いた?」
「うん授業で聞いたよ」
「それで第1魔法陣が螺旋模様になっててその中に魔法のプログラムが書かれているのだって、一瞬だから私にはなんて書いてあるか見えないけど」
「それで螺旋魔法って呼ぶの?」
「まあ、その方が言いやすいって事で呼んでるだけで正式な呼び方じゃ無いけどね」
「そうなんだ」
多香子は私はそう言いながら携帯電話を見た。学研都市に来る事に反対していた父が私に持たせてくれた物だったからまだ綺麗に使っている。
多香子の言った複数の端末を持つよりもこのスマホにアプリをインストールした方が良いのかと思い始めた時、野間君とよく一緒に居る井伊君がこっちに振り向いた。
「さっきから聞いてたけど、デジタル魔法のアプリって意外とバッテリー消耗するから別けて使うもの良いぞ」
「そうなの」
私は聞き返した。
「もう、なに人の話盗み聞きしてるのよ」
「お前の声は大きいから結構聞こえるんだよ」
「それでも、聞くな」
「そうは言っても突っ込みどころが多くて仕方無いんだよ」
「それはどういう所なの」
私は井伊君に問いかけた。
「まず端末だけど、スマホにインストールするのは良いけどバッテリーの消耗が早いからバッテリーが無くなったら魔法は使えないこと、その点、別の端末を持っているとその心配は減るだろ」
「そんなにしょっちゅう魔法使う事無いでしょ、それに予備の携帯のバッテリー持ってれば問題無いし」
「それに、デジタル魔法の専用端末の方が計算速度が速いから使いやすいよ」
「その専用端末って持ってる、見せて」
井伊君はポケットからその専用端末を取り出した。スマホと似た形だが厚みがスマホの倍くらい在るし結構傷だらけだ。
「これ、大きくない?」
「でも、完全防水だし衝撃にも強いし」
「確かに、結構傷が付いてるね」
「これでも壊れない」
「そんなに傷だらけしちゃって何してんのよ」
「でも・・・壊れない」
「その傷を治す魔法は無いの」
「?その発想は無かったな」
そう言うと井伊君は端末を操作し始めた。がしかし端末を持ったままどこかへ行ってしまった。
「どうしたのかな」
私は多香子に尋ねると多香子は残りのお弁当を食べながら
「浩子の言った『傷を治す』プログラムを持ってなかったんじゃない」
「そっかー」
「で、それより浩子はどうするの?DMO-System」
「しばらく学校の借りて使わせて貰う事にするわ」
私もお弁当の残りを食べながら答えた。