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1部 12芒星魔方陣 編  2章 術者のタイプ 2話

 翌日の朝、多香子は教室に先に来ていた私に向かって鞄も置かずに駆け寄った。

「どうだった?」

「それが・・・」

「何かあったの?」

 多香子は私をのぞき込むように机の前で屈み見上げた。

「それが・・・。属性が判らないの、何故か分からないけどステッキが燃えて」

「え!?ステッキが燃えた?」

「うん、ちょっと多香子、声が大きいよ」

 私は周りの視線を気にして言う。

「だって、でも何で?」

「私にも分からないけど、属性判定プログラムでそうなったのよ、ねえ、多香子もそうだったの?」

「私の時は炎の玉を出したわよ」

「じゃあ、なんで私の時は?」

「岡本さん、来てくれる?」

 教室の顔を見るなり突然私を呼んだ。

「はい?」

 私は竹田先生に呼ばれるままに、昨日の地下室に案内された。部屋に入った私と竹田先生は教室の内線電話をしてしばらくすると坂本先生が入ってきた。

「先生、この子です」

 竹田先生はそう言って部屋に入り私を中へ招いた。

「この子ですか、例のタイプの子は」

 例のタイプ?まだ、私には何のことだか分からない。

「とりあえず、見せて貰おうか」

「分かりました、岡本さん昨日やったことをもう一回やってくれる」

「ええ、でももうすぐ授業が始まりますけど」

「それは、今はいいわ、こちらが優先ね」

「わかりました」

 竹田先生がそう言うと坂本先生がガラスの向こうのコンピュータールームに入って行った。すると竹田先生からまたヘッドギアとステッキを渡された。

「昨日の属性判定プログラムをまたやりますので準備して」

「また火を出すのですか?」

「そうね、昨日は何が出るか分からなかったのだけど今日は意図的に炎や氷りを出して貰います」

「分かりました」

 頭に付けたヘッドギアのコードを竹田先生は確認すると手を上げて坂本先生に合図した。坂本先生はコンピュータを操作すると。

「じゃあまず炎から、自分のタイミングでやってくれるか」

「分かりました」

 私はコンクリートの地面に描かれているマーク迄歩き的を前にした。

「昨日みたいにまたステッキが燃えるかも知れないから十分注意して」

「注意って言ったってどうすれば・・・」

「もし、ステッキが燃える様な事があれば直ぐに手を放して」

「でも・・・」

「大丈夫、私が待機してるから」

 竹田先生は私の肩を持って言った。その後、竹田先生は携帯を操作した後部屋の端に寄った。

 私は一度深呼吸をして目を閉じた。頭の中に無数の数式が文字が浮び最後に・・・。

──ENTER──OR──CANCEL──

 私は頭の中に浮かぶENTERを選択した。

 すると突然ステッキが燃え出す。

「うわ!!」

 私は慌てて手を放す。と同時に頭の中に──STOP──が浮かび何が何だか分からないまま選択した。

 燃えていたステッキは急に鎮火し炎が消えた。

「岡本さん大丈夫?」

 竹田先生が駆け寄った。

「やっぱり燃えたか・・・」

 坂本先生はコンピュータールームから部屋に出て燃えたステッキを確認した後、私の所へ来てステッキを持っていた右手を取った。

「やっぱり、火傷はしていないようだね」

「え?火傷?」

 私は右手を見た。確かステッキが燃えた時一緒に右手も炎に包まれていた筈なのに何もなっていない。他にも制服の袖も燃えていない。

「魔法陣が出なかったな」

「魔法陣なら目の前に出てましたよ」

 坂本先生に私は返答した。それを聞いて竹田先生も不思議そうに言う。

「岡本さんの周りで魔法陣は見えませんでしたよ」

 坂本先生は立ち上がって私と的を見た後、部屋をぐるりと一周すると立ち止まり。

「もう一度他の魔法をやって貰えるか?」

「あ、はい」

 私の返事を聞いた坂本先生は竹田先生の所で何か話をした後またコンピュータールームへ入っていった。

「次は何も持たずにやってみて」

「何も?ステッキを持たずに?」

 竹田先生の言葉に私は質問した。デジタル魔法は魔法の計算をする為のDMO-Systemとステッキ等の『魔具』が必要と昨日の授業で言っていた。DMO-Systemとは『デジタル魔法演算システム』の略称の事でデジタル魔法を開発したメーカーが公開しているアプリケーションの事を指している。

「そう、何も持たずに魔法を実行してから、的に触れてみて」

「わかりました」

 私は言われるがまま魔法を実行する事にした。また頭の中に大量のプログラムが入り込んでくる。だがさっきと同じプログラムだと分かった。

 でもなんでそんな事が分かった?このプログラムのデータ量だけでも軽く3テラバイトは有る。そのプログラムの全てが何で分かる?私は的に近づき右手の中指が触れるところで。

──ENTER──

 すると的は一気に燃えた。私は思わず手を引いたが完全に炎に右手は包まれていた。しかし炎に熱さは感じず火傷どころか袖にも焦げた痕一つ残っていなかった。

「やはり、そうなったか」

「どういう事ですか?」

 私は坂本先生に問い返した。坂本先生はコンピュータールームの中からスピーカーで声が伝わった。部屋の中でコンピュータを操作し何かを確認し部屋を出てきた。

「君の魔法のタイプだけど・・・」

 気持ち無しか緊張する。また坂本先生も同じような表情をしている。

「君の魔法タイプは“マジシャン”だよ」

「マジシャン?」

 坂本先生は私をコンピュータールームへ案内して部屋の真ん中に在る椅子に座り、私を向かい側の椅子に座らせた。竹田先生も坂本先生の横の椅子に座った。

「実はこのタイプはとても珍しいんだよ」

 坂本先生の説明が始まった。

「そう、なんですか?それでどんな風に珍しいのですか」

「潜在的には最も多くの人がこのタイプだと言われているのだが、通常の能力者と区別がつきにくい事から逆に珍しいのタイプなんだ」

「それでマジシャンと言うのはどういうタイプなんですか」

「メイジのタイプと同じで全ての系統の魔法が扱えるし、魔法の効果もメイジより高い」

「そうなんですか」

 私は才能が有るのかと思って少し喜んだ。

「しかし、さっきので何となく分かっただろうけど、対象の物や人に直接触れないと魔法が発動しないのだよ」

「え?」

「このタイプの魔法使いが余り例が無いため研究実績も進んでいない。だから実技のカリキュラムも在るけど少ない、岡本さんが思っているように『炎の玉を投げる』とかが出来ない、つまり、魔法は『遠距離系』ってイメージがあるだろうけど貴方の場合は『超接近系』タイプって事になるかしら」

 竹田先生が追加説明をした。

「ゲームであるような魔法使いイコール『遠距離系』では無くて戦士みたいな『接近戦型』って事ですか?」

「その例えが分かりやすいわね」

「でも、魔法って事ですね」

「そうよ、マジシャンも歴とした魔法よ」

「そうだね、マジシャンには『闇』属性といって例えば、攻撃系に特化した魔法を使用出来るウィザードタイプでもその中で、『火』『氷』『地』『風』『電』のエレメント属性に別けられて向き不向きがあるがマジシャンにはそれが無いと言われている」

「それが『闇』属性ってことですか?」

「単純に魔法を発動直前に各特性特有の波長の様な物があってそれが分かるのだが、マジシャンは体内でプログラムを構築するからそれが分からない。だから『闇』属性と区別している」

「体内でプログラムを構築するというのは、どういう事ですか」

「普通、デジタル魔法はアプリでプログラムを作って、ステッキやワンドの様な魔具と言っている魔法アイテムを使って魔法を発動させるのだが、『マジシャン』はその術者の身体そのものが魔具だから携帯だけ持っていれば良いと言うことになるね」

「私の体が魔法アイテムそのものって事ですか?」

「そう言うことだよ」

 坂本先生は開いていたノートパソコンを閉じた後で私に言った。


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