1部 12芒星魔法陣 編 2章 術者のタイプ 1話
「デジタル魔法とは古代魔法の術式をコンピュータで解析して、そのメカニズムをプログラムした魔法の事です」
常徳学園に入学して2日が経った4月12日水曜日、竹田先生のデジタル魔法の説明だった。
「───つまり“デジタル魔法”とは、古代魔法をコンピュータのプログラムで近似の魔法が誰でも作り扱えるようになる、と言うことです」
午後5時間目の授業はデジタル魔法の説明だった。
デジタル魔法は全ての術はプログラムで召喚したい物を作り、召喚しそこから魔法の効果が発動する。そして召喚する時はプログラム表す螺旋魔法陣が現れその後で召喚魔法陣が現れるとの事だった。
「デジタル魔法では古代魔法の様に詠唱《スペル》が必要の無い分、螺旋魔法陣が現れます」
「つまり、古代魔法の原理をデジタル化したけど古代魔法と同じ術は使えないと言うことですか」
「そうね、でもほぼ同じ術を組むことは出来るね」
私の質問に竹田先生は返答した。
「デジタル魔法では実体化魔法しか出来ないって聞いたんですけど」
「だけどデジタル魔法を扱える人はレベル3以上の能力者に相当します。能力者と比べ魔法が発動するには多少の時間は掛かりますが多彩な魔法が存在し扱える様になります」
「デジタル魔法師は能力者と比較すると長所、短所が有る訳ですね」
教室に居た他の生徒の質問にも竹田先生は答えた。
「超能力の開発では個人差が大きく出てくるけど魔法師ではその差が小さいとも言えるわね、例外もあるけど」
「例外?」
「デジタル魔法でも個人差があるの、それに元々の魔法の才能を持った人だとデジタル魔法でもずば抜けた才能を開花させる事だって有るってことです」
それが竹田先生の説明だった。
6時間目の授業はデジタル魔法の実技を行う。
私は先生の後に続き地下へと続く階段を降り廊下を歩いてすぐのコンクリートで囲まれた殺風景な雰囲気のテニスコート2面分位の部屋に入った。
「これは凄いね」
多香子も地下にこんな所があるんだと見回しながら言った。
「ここは何するとこなの?」
私は多香子に質問した。
「ここは魔法の実習場よ」
「実習場?」
「そう、ここで魔法を使うの。だって、無暗に攻撃魔法とか使えないでしょ?それに、魔法のプログラムにバグが有って思い通りに発動しない事や暴走したりする事も有るでしょうし」
「それで、こんなに物々しい施設が必要なのね」
竹田先生は部屋に入るとクラスの全員を集める。
「これからデジタル魔法のタイプを調べます。もう分かっている人も能力値調を確認します」
竹田先生は部屋の端の台になっている所にノートパソコンを置きそこからケーブルを伸ばして壁から出ているコードに繋いだ。その頃に担任の前嶋先生ともう1人の男性が部屋に入ってきた。
「それでは坂本先生よろしくお願いします」
「はい分かりました」
竹田先生はそこで部屋の一角に在る装置を操作した後。
「それではこれから名前を呼ぶ人は私に付いてきて下さい・・・岩崎さん・・大久保さん・・岡本さん・・景山さん・・・・」
「後でどのタイプか教えてね」
多香子は私に言った。
「うん、分かった。じゃあまた後で」
私は竹田先生の後に付いて部屋を出て隣の部屋に入った。
さっきの部屋よりずっと小さく目の前に大きなガラス窓と沢山の機材が並び、さながら録音スタジオの様になっている。
しかし竹田先生はその部屋を素通りしてさらに奥の部屋に私達を誘導した。
「ここで皆さんは魔法のタイプを調べます」
「先生、どうやって魔法のタイプを調べるのですか?」
「それはここに有る機材と判定プログラム魔法を使います。通常、『デジタル魔法』は魔法の計算をするDMO-Systemと言うアプリケーションと魔法を発動させる為に魔法アイテム所謂『魔具』を身につけていないと発動しません。それと、魔法の能力には個人差があるので魔法の計算速度の条件を統一する為に使います」
竹田先生はヘッドギアとステッキを持って何も無いコンクリートの部屋を歩きながら言った。
「これが、魔法を発動させる為の『魔具』と言うわけですね」
「そう、これは属性を調べる為に使う仮の魔具と言った所でしょう。まず、私が魔法を見せるから見てて」
「はい」
竹田先生は持っていたヘッドギアを被り入り口の台に置いてあったステッキを取って部屋の中央に進むと、目を閉じ集中してから目を開けるとステッキの先で魔法陣が現れた。
しかし最初に現れると言っていた螺旋魔法陣では無く召喚魔法陣だけが現れ、その後、魔法陣の先に霧の様な小さな粒が幾つも集まりやがて10cm程の大きさの水の塊が出来た。そして部屋の奥に有る的へ水の塊は飛び的が一瞬に氷り着いた。
「これがデジタル魔法です。私はメイジの水属性なので水の玉が出来ます。ウィザードの炎属性なら火の玉が出来ますしプリーストの光属性なら光の塊が出来ます」
「凄い・・・」
周りの生徒達もざわついている。さすがに魔法を目の前で見せられれば驚く人も居ると思う。しかし他の生徒達は魔法を間近に見て驚いて居ると言うより自分がどんな魔法のタイプの方に強い関心を持っている。どんなタイプなのかや雷属性ならどう言う反応をするのかと言った話をしていた。
竹田先生はまた入り口へ歩き台にヘッドギアとステッキを置き変わりにファイルを取り中身を確認し始めた。
「では名簿順にタイプを調べますので呼ばれたらこの部屋に入って下さい」
部屋に居た全員は部屋に入った時とは別のドアから廊下に出て待たされた。
「ねえ、岡本さんはどんなタイプだったらいい?」
私に話し掛けてきたのは大久保媛之、直接話をするのは今日が初めてで初日にクラス全員で自己紹介をした時に私と同じで高校からデジタル魔法を学びに学研都市に来た生徒だ。
「私、プリーストがいい」
「プリースト?回復系だよね」
「そうプリースト。人を助けられる事がしたいの」
「そうなんだ、私はどちらかというとメイジかな、魔法の研究者になりたいから」
「そうなんだ。それでどう言う魔法の研究をするの」
「え?」
「ほら、魔法だって生活の役に立つ物から医療の魔法とか色々あるじゃない」
「私まだそこまで考えて無い、でも人の役に立つ魔法を研究していきたい」
「でもどうして?」
「大久保さん次部屋に入って」
先に魔法タイプの判定を受けていた岩崎さんが大久保さんを呼び部屋から出てきた。
「あ、はい」
大久保さんは少し緊張気味に返事を返し部屋に入っていった。
「じゃあお先に」
岩崎さんは私達に一言言った後、多香子達が居る部屋へ入っていった。
時間が過ぎ大久保さんが私を部屋に呼んだ。
「どうだった?」
「ウィザードの雷属性だった」
「すごい」
「後で岡本さんのも教えてね」
「分かったわ」
部屋の中に入ると竹田先生がガラス窓の手前の台の前に立っている。
「岡本さん、それじゃあヘッドギアを付けるからこっち来て」
「はい」
私はヘッドギアを持つとヘッドギアを頭に取り付け先生がベルトを締め固定して、ヘッドギアから伸びているコードが外れていないか確認していた。
「よし、じゃあこのステッキを持ってここに立って」
先生は的の前に私を立たせ、ガラス窓の向こうのスタジオの様な機材を操作し始めた。「これから属性判定プログラムを送るから的に向けて意識を集中して」
竹田先生の声が部屋のスピーカーから聞こえる。私はどうなるか不安混じりに集中した。
「あっ、何?」
突然、頭の中にとてつもないプログラムのイメージが流れ込んでくる。
──ENTER──
「あっ、キャーー」
目の前に魔法陣が現れ、持っていたステッキが燃える。
「岡本さん!大丈夫?」
竹田先生は慌てて部屋に入ってきた。私はぺたんとその場に座り込む私の所へ駆け寄った。
地面に落としたステッキは燃え尽き煤の痕が残った。私は怖さのせいか涙が止まらなかった。
「まだやれる?」
「・・うん」
泣いている俺の様子を見て背中をさすってくれた。
「貴方の魔術タイプ判定はまた今度にしましょう」
「え?」
私は泣きながらも思わず竹田先生を見上げた。先生は微笑んで私の手を取った。
その後、何人かのクラスメイトが魔法のタイプ判定を受けている所をガラス窓の向こうから見ていた。