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1部 12芒星魔方陣 編  9章 魔法の攻防 2話

 翌日5月9日火曜日の放課後、部室にみんな集まった後に私と多香子で5番目の魔法陣の設置ポイントに向かった。

「何だか、不安になっちゃった」

「大丈夫よ、きっと」

 私の不安をよそに多香子は魔法陣の設置ポイントと予測した工場へ向かっていた。

 今度の魔法陣の設置ポイントは工場の裏手の敷居付近、何かの化学プラントみたいで何だか物々しい音が響いている。また周囲にも似たような化学プラントが建ち並び周りの人の気配が無い。

「誰も居ないね」

「今日は何も起きないかも知れないね」

「でも魔法陣の設置ポイントはこの塀の中でしょ?」

「入ってみる?」

「大丈夫かしら?」

「大丈夫よ」

 私と多香子は工場の中に入る事にした。

「でもどうやって入るの?」

「大丈夫よ」

 多香子は端末を取り出し私に一つのプログラムを転送した。

「これは?」

「空を飛ぶプログラムよ」

「飛べるの?」

「昨日、データバンクで見付けたの蝶の羽根を実体化させて飛べるよ」

「試したのね」

「そっ、飛べたよ」

 多香子はそう言ってる間に背中に魔法陣が現れそこから青い揚羽蝶の羽根が現れヒラヒラと動くと多香子の体がふわりと宙に浮いた。

「じゃあ行くわよ」

 私もプログラムを実行した。私の場合は目の前に魔法陣が・・・と言うよりも瞳の中に魔法陣が映し出され背中に羽根が直接現れ宙に浮き上がった。そして塀の向こう側へすんなりと飛んでいける筈だった。

「多香子、ちょっと止まって」

「これって?」

 塀の頂上部に赤外線センサーが張り巡らされ、すぐ上を飛び越える程度だとおそらく警報が鳴る。

「もっと上空を飛んで塀より離れた所に降りましょ」

「OK」

 多香子が返事した。私はプラントの線路が引いてある所を見付けそこへ着地し多香子も続いた。

「少し離れてしまったね」

「どこから行けばいい」

「とりあえずこっちじゃない?」

 私はプラントの建物の隙間の通路の様になっている所を指差し二人で向かう。隙間の通路はちゃんとした地面にラインの引いてあるしっかりとした通路になっていて上空から見た時よりも案外整然としていた。

「浩子止まって」

 外の壁が見える所まで来た所で多香子は私を呼び止め私の手を持ち建物の影に隠れた。

 多香子はそのままスマホを取り出し魔法の準備をする。壁の内側に男が一人立っていた。 男は地面にチョークで何か書いている。

「魔法陣かしら」

 男は魔法陣を書き終えると両手を合わせ地面に両手をついた。

 白いチョークで書かれていた模様は赤く光りを放ち魔法陣になった。

「行くわよ」

 そのまま多香子は表に飛び出しステッキを前にかざした。男は特に慌てた様子も無くこちらを振り返った。

 私はその隙に魔法陣に向かって走った。そして男の背後に回り魔法陣に手を触れた。

――ENTER――

 すると。魔法陣はガラスを割った様に砕け消えた。

「貴様!」

「こっちよ!」

 私の方へ振り返った男は私に銃口を向けた。が多香子はすぐに電撃魔法を実行した。

 男は多香子の放った強力な電撃で私の頭上を飛び越え吹き飛んだ。私と多香子は直ぐにこの場を離れ飛び立とうとした。しかし。

「多香子!」

 とっさに叫び多香子の側に飛び出した。どこから銃声が聞こえた。多香子の足元に銃弾の痕ができている。

「浩子、後ろ!」

「え?」

 振り返ると男が私に飛びかかっている。目の前にキラリと光る物が見えた。

――ENTER――

 男が私に触れた途端、私の体の周りで爆発するように炎が上がりあっと言う間に男に燃え移った。

「きゃっ」

 身構えて振り返ると男の右腕が炎に包まれていたが右腕が切断されたみたいに切り離され、地面に腕の骨格が焼けずに残った。

「何?」

 多香子は腕が無くなった男を見ている。腕の無くなった男は何事も無く私達の後ろに下がり隣に居る男と並んだ。どうやらここに居る者全てサイボーグの様だ。

「お前等、そこを動くなよ」

 私は多香子の方を見た。多香子はステッキを持ったまま両手を上にそっと上げた。どうやら囲まれている。私は、ここから脱出する方法を必至に考えた。

―魔法―

 だめ、デジタル魔法は発動時に貯めにも似たプログラム計算時間分のタイムラグが発生する。

「これだけの人を同時に相手するのは無理よ」

 多香子は私に言い聞かせる。私は周囲を見回すと4人の男と8体のギミックが有った。

 ギミックとは有人の機械歩兵でパワードスーツで複数人が搭乗する大型のパンツァースーツと小型で1人乗りのギミックが有りどちらも戦闘兵器として開発された物だ。

 それに私建ちは今、包囲されている。私も多香子と同じ様に両手をそっと上に上げた。

「もう、そっとしなさいよ」

 多香子は男に腕を捕まれている。

「こんなに毎回、邪魔が入るとはさすが学研都市と言っただな」

「腐っても日本だな、先進国から脱落してもこれだけの技術を持っているんだ」

「このガキどもをさっさと処分してしまえ」

 チョークで魔法陣を書いていた男が言った。

「あいつ、多香子の魔法の直撃を受けたのにどうして立っていられる?」

 そう言っている間にもギミック2体がこちらに体を向け腕に取り付けてある銃口を向けたその時。ギミック2体が地面に沈んだ。まるで蟻地獄の流砂に飲み込まれその中に落ちたと言った方が良いかもしれない。そして穴に落ちたギミックの上から真っ赤に燃えた無数の隕石が落ちていく。

「二人とも無事か?」

「大丈夫よ何処も怪我してない」

 向かってくる爆風を腕で防ぎながら答えた。

 私達に話掛けた金髪の女性と男性2人、女性は防弾チョッキに黒のパンツ姿で一見するとSATの戦闘服の様になっている。綺麗なブロンズの髪は後ろに一纏めに縛ってあり夜なのに色の濃いサングラスを掛けている。何より左手に女性の身長と同じ長さの大きなスタッフを持っている。後ろの男性はコマンドーの様に銃やナイフ、手榴弾を防弾チョッキに付けていて私達の向こうの相手に向けて銃を構えていて、最後の一人は銃持って私達の方へ駆け寄った。

「これはお前達がやったのか?」

 傭兵みたいな男性が燃え尽きた残骸を見て私達に聞いた。

「ええ」

 次々と日常とはかけ離れた世界で私は声を絞り出した。

「なんでこんな所に・・・とにかくここは危険だ。直ぐにここを離れて」

「でも・・・」

「本部へ転送しなさい。本部の者に聴取させろ」

「分かりましたチーフ」

 男はそう言うと私と多香子をひっつけて私達の肩を掴んだ。足元に青い魔法陣が現れ魔法陣は回転しながら上に上がって行く。と同時に目の前を下がっていく魔法陣が有った。足元に気を取られていたが頭の上に魔法陣が出来、腰の辺りで2つの魔法陣が重なった。

 私達は薄暗い部屋に。照明が数カ所点いていて薄暗い部屋に居た。

「暫くここでじっとしてろ、いいな!」

「・・・はい」

 私と多香子は小さく返事した。男はそれを聞くとまた同じ魔法で居なくなってしまった。

 何も無い部屋に2人だけが残された。私も多香子も何も言葉が出てこない。気を取り直して部屋をよく見回すと5m位の高さの天井から照明が数カ所点いていて真っ白で窓も何も無いテニスコート2面分位の部屋で入り口のドアが1つだけ有った。

「ここ、何処なのかな?」

 互いに落ち着きを取り戻した多香子は声に出した。

「分からないよ、私も」

「だよね」

 私達は顔を見合わせ緊張の糸が切れた笑い合った。突然、部屋が明るくなり一つしか無い入り口から武装した人が現れた。

「動かないで!」

「誰?」

 私は思わず声を上げた。黒髪は背中まで有りとても整った出で立ちの女性は私達に銃口を向けて入り口から数歩入った所で構えていたが私達を見て銃を下ろした。

「貴方達あんな所で何をしていたの」

 銃口を向けたまま右前に構えゆっくりと近づいてくる。

「それは・・・その・・・」

「あんた達警察が何もしないから私達がしているのよ!」

 多香子は逆上して言い返す。女性はその言葉にため息を付いた。

「連絡は受けているし事情は分かったわ」

 女性はその場で少し立ち止まり少しして私達に手を差し出す。

「じゃあこっちにいらっしゃい」

 女性は扉を開け通路正面のエレベーターに乗り3階へ私達を連れて取調室へ案内した。

「さすがに、部外者にここの施設内を見せるわけには行かないの」

 言いながら一度部屋を出るとコーヒーを持ってきて差し出し向かいの椅子に座った。

「現場は制圧したわ、そう言えば貴方達の名前を聞いていなかった」

「私は浦多香子」

「岡本浩子です」

「浦多香子と言えばシフト・フレイムの?」

「ええ、そう呼ばれています」

「なるほどね、だからか・・・そして岡本浩子ね」

「はい、それで今、何が起きているのですか?」

「それは、捜査情報になるから説明は出来ないわ」

「でも、12箇所のうち4箇所も事件が起きているのよ」

 私のその言葉を聞いた途端、女性の表情が鋭くなった。

「岡本さん、その情報を何処から入手したの?」

「推測です。3箇所の魔法陣・・・多分他の2箇所も魔法陣が有るのじゃないか・・・って言う」

「何故、魔法陣の事を・・・それとこの件は我々警察の仕事よ、貴方達があの連中に殺されそうになった報告は受けているわ。たまたま仲間が現場に駆けつけたから良かったものの今後も同じ事が出来るとは限らないでしょ?警察ごっこは止めなさい」

 女性はドンと机を叩き身を乗り出す凄い剣幕に私達2人は、椅子の背もたれにもたれ掛かるように身を引いた。

「分かったらもう今日は良いわ近くまで送るから帰りなさい」

 女性と取調室を出てエレベーターで地下2階へ降りていった。

「私の名前は御門芽よ」

 警察の覆面パトカーに乗り込むと、御門芽は私達に手錠とアイマスクを付ける」

「あの、これは」

「この施設は警察では有るけど警察署では無いの」

「それは、どういう事?」

「公安?」

 私が訊くと多香子は冷静な口調で御門芽に訪ねた。

「そうね、その通りだわ、だから隠密生を持たせる必要が有る。貴方達は常徳だったわね?近くまで送るわ保護する事も目的だったし」

 御門芽は車を走らせ私達はプラザタウンの近くに在る公園で手錠とアイマスクを外された。

「今日はこのまま家に帰りなさい」

「あの」

 この場を去ろうとしている御門芽を引き留める。

「ありがとうございます」

 御門芽は私の言葉に振り返りもせず場を去って行った。


ここでは第1主人公の周辺キャラクターが多数、登場しています。(第一主人公「シルビア」はこの頃日本に居ない設定になっています)


ギミックとは(あくまでこの物語中での設定です)

パワードスーツをより戦闘に特化した兵器、全高およそ2m以下で有人のロボット兵器。


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