1部 12芒星魔法陣 編 1章 デジタル魔法
「私、こういう魔法を作りたいのよ」
私、岡本浩子は色々なメモや絵が書いてあるノートを見せた。ノートの中には色々な絵やメモでびっしり埋め尽くされいる。
「浩子ちゃん、これはやり過ぎ」
そう言って笑うのは浦多香子、ここは学研都市に在る常徳学園。多香子は知り合った最初の友達だ。
「昨日、随分遅くまで考えたのに」
私は膨れた。
「まあ、私はここに中学から居たから分かるけど“デジタル魔法”でそんな事は出来ないよ」
「え?でもでも、これくらいは出来るでしょ?」
私はノートに書いてある。背中から羽根が生えている絵を多香子に見せた。
「まあ、飾りなら出来るかもね」
「飾り?羽根が生えても空を飛べないの?」
「そんなビジュアルに凝ったプログラムを組んだら重たくて飛べないよー」
「えー」
私は落胆した“デジタル魔法”ってもっと万能なものだと考えていたからで・・・。
「それじゃどんな事が出来るの?」
「そうねー、デジタル魔法は基本的に召喚魔法なの」
「召喚魔法?」
「火を出したいならライターを召喚したり」
「でもまあ、新しい魔法を開発されたらこれからそういうの出来るのじゃない。それか性能の良いDMOSが開発されれば可能になるかもね」
余りに私ががっかりしている所を見て多香子が気を遣った。
「ところで、浩子はどんなタイプなの?」
「タイプ?」
「タイプってのは魔法を扱える形の事よ」
「形って何?どういう事?」
「魔法には扱う種類に相性が有るの。攻撃系の“ウィザード”回復系の“プリースト”攻撃と回復の両方が扱える“メイジ”ってね」
「そういうのが在るの?」
「その様子だと自分が何なのか知らないみたいね」
「私、回復系の魔法が良い」
つい、声が大きくなってしまった。教室のみんなが私の方を向いた。
「プリーストになりたいんだって?」
やって来たのは野間海斗。背が高く女子に人気が有るそうだ。しかし、はっきり言って私は余り野間君に興味が無い。
「野間君はメイジだったよね」
多香子が野間君に聞いた。
「そうだよ攻守どちらにも向いている」
「でもウィザードよりも弱いしプリーストより回復は小さい」
多香子が説明する。
「それは、同じ才能のヤツと対峙した時はそうだが俺は元々メイジでも能力値が高いから同じレベルのヤツはそう居ないよ」
「そういうものなの?」
私は二人に聞いた。
「そうね、魔法を扱うのって結構、生まれ付き才能が有るらしいのよ、後は努力と根性」
多香子は冗談交じりに答えた。
「努力と根性は大方合ってるけど・・・。まあ、魔力は多いに越したことはないな、後は魔法のプログラムを構築する計算能力かな」
何だかよく分からなくなってきた。とにかく魔法には向き不向きなタイプと生まれ付きの才能が有ると言うことだけは分かった。
「でもどうして『プリースト』が良いの?」
多香子が私に質問してくる。
「私ね、人を助けたいの」
「助けるって言っても、誰を?」
「それはもちろん、怪我や病気の人よ」
私はそれがごく自然な言葉になった。
私は小学1年生の時、家族とイギリス旅行の日程を終えし帰国する途中で時交通事故に遭った。その時私は脳に強いダメージを受けた。その脳機能を回復させる為、臨床試験中新技術で手術をして意識を取り戻したそうだ。
その後2ヶ月程ロンドンの病院に入院していた。退院後、日本に戻って学校に通ったのだが所謂勉強が出来る子で特に暗記問題や計算問題は得意だった。
この常徳学園へ編入する事になったきっかけは去年の夏の祇園祭で、熱中症で意識を失った老人の応急治療を行った。デジタル魔法はインターネットでの掲示板で見付けどういう物か興味本位で調べ試しにプログラムしていてた物を使うと老人は意識を取り戻した。その治療を見ていた人が私にデジタル魔法を教える学校が在ると言われ、常徳学園の事を知り、私は両親の反対を押し切って学研都市やって来た。
私の家は京都伏見の酒元で江戸時代の頃から日本酒の長造をしている家柄のせいなのか門限や家の家事手伝いを厳しくしつけられた。この学研都市へ行くことよりもデジタル魔法を習うことの方をとても反対していた。
私はそんな窮屈な環境から抜け出したかったのかも知れないし、デジタル魔法が私が家を出ることを後押ししたと思う。