レッツポリスメーン!!
「というわけで、今からケイドロとやります」
「何がというわけなんですか!!」
翌朝、たけちゃんのおいしいおいしいごはんを食べた後に、急に部長に外に出るように言われたから外に出たらこれだ。
ケイドロなんて久しぶりにやるなぁ……小学校以来だ。蘭花にも話を振ったけど、彼女も私と同じで小学校以来らしい。
「文化部とはいえ体力は必要!というわけで、体を動かすよ!!」
部長の突然の提案はいつものことで、それが強制であることは部員全員が知っていたので、反論すらできなかった。
「桜ちゃん、蘭ちゃん、ファイ、オー」
そして、我が愛しの天使である妹空は当然見学です。
「ヘイヘイ、アイアムポリスメーン」
「あったま悪そうな警官」
警察と泥棒の二手に分かれ、戦いは三対三で行われる。
ちなみに、私が所属する警察チームには、私と部長と北斗君。そして、泥棒は残り。
「おい、紹介が適当すぎだろう」
「ワルイヤツハ、ツカマエル」
「琴美先輩、あの警官ざるでるよ。すっごい頭悪そうです」
「失礼な!」
「俺も、そっちがよかった」
「ドンマイ」
なぜか落ち込んだ様子の疾風君を励ます北斗君。え、やっぱりそういう関係?そういう関係なのかい?
私の思考を完全に無視するように、部長の合図とともに泥棒組はそそくさと逃げ出した。
「よーし、捕まえるのは君ら二人に任せよう」
「部長……私の記憶が正しかったら、このケイドロの目的は運動不足解消でしたよね」
「そうだな」
「部長は完璧な人間です。それはもうみんなが憧れるほどの」
「誉めんなよ桜花」
「つまり、どういうことですか?」
あぁそうか。北斗君は知らないか。この部長の唯一の汚点とも言えるもののことを。
「部長こそ走り回らないといけないんじゃないんですか?体育、D判定ですよね?」
学校の成績は、A〜Eと評価される。Aが一番よくて、Eが一番ひどい。
私の体育の成績はBかA。北斗君も、中学時代バスケ部に入っていたことから、運動神経はいいだろう。だが、部長はさっき言ったように、体育だけはからっきしダメなのだ。
「部長さんって、運動ダメなんですね。なんか意外です」
「結局、完璧な人間はいないってことだよ」
「いいからさっさと行く! 言っておくけど、森の中でイチャイチャしちゃダメだからね」
「なっ! お、俺そんなことしません!」
「そうですよ! かわいい後輩がそんなことするはずないじゃないですか!」
「おーい、完全に北斗君をヘタレ扱いしてる上に、あんたが襲われる前提か。私は、北斗君の心配をしてるんだよ」
あぁなるほど。確かに、蔓に絡まっていい感じにそれっぽくなるように細工するとか、ちょっとドロドロした場所に突き飛ばしたりとか、そういうのも結構ありかも。
「わかりました!」
「なにが?」
「と、とにかく行きましょう先輩。早くしないと、お昼になります」
「それはいかん! たけちゃんのご飯を逃してしまう!」
そう言って、私たちは別れて泥棒を探した。
あのメンバーだと、一番足が遅いのは琴美先輩かなぁ。申し訳ないけど、先に先輩を捕まえ、残りを狩る!
「っと、言ってるそばから琴美先輩発見!」
「え?」
「逮捕ぉおおおおお!!」
後ろから抱きつくように、そしてそのまま先輩の胸をわし掴みした。
ふおぉおおお!!や、柔らかい!!なんていう弾力。
「あ、あの……桜花ちゃん?」
「あ、先輩お気になさらず。このまま檻に行きましょう」
しかし残念ながら、琴美先輩に叱られてしまった。くっ、もう少し堪能したかった……。
「部長、女の武器を使って宝石を盗んだけしからん女怪盗を捕まえました」
「ご苦労。琴美、何もされなかった?」
「された」
「先輩!私と先輩の秘密では!?」
「よぉーし、虹ノ刑事。君の処分は後だ。仕事に戻るんだ」
ぐぬぬ……やはり警察と泥棒は相容れぬか。
さてさて仕事に戻りますか。というか、北斗君はどっち追いかけてるんだろう……疾風君かなぁ?じゃあ、蘭花を捕まえればいいか。
「おっ」
私はまるで忍者のように物陰に隠れてその姿を見た。
「疾風君みーつけた」
全くこっちに気づいてない疾風君は辺りをキョロキョロ見ている。
彼がこっちにいるってことは、蘭花の方に北斗君が行ってるのかな。
「んじゃ、さっさと捕まえますか」
「っ!」
がさっと音を立てて走り出せば、当然その音で疾風もこっちに気づいた。
「虹ノ先輩!?」
「悪いね疾風君。捕まえさせてもらうよ」
「クッ!」
森の中での追いかけっこ。
地面はデコボコしてるし、木々に囲まれて、それはもぉ一種のアトラクションみたいになってるから、なんかすっごい楽しい。
「先輩速くないですか!?」
「インドアだけどなめてもらっちゃ困るよ!」
疾風君は私のことを見ながら必死に走り回る。
あと少し、あと少し、あと少し……
ほんの数センチ、必死に伸ばせば届く。
(とった!)
グシャ……
「え?」
一歩踏み込んだ瞬間、足場が崩れた。
何が起きたのか全くわからなかった。全部がスローモーションのように見えた。
体がゆっくりと後ろに倒れて行き、手を伸ばして行く。
「先輩!」
私が落ちて行くのに気づいて、疾風君が手を伸ばしくれた。
手首を噛まれたけど、走り疲れてるせいで踏ん張りがきかずに、私も疾風君も、そのまま崖の下に落ちていった。