合宿だぁああ!!
5月2日。今日から合宿なのですが、若干名ダウンです。
「「………」」
「こらー、引きこもり二人、しっかりしろー」
その若干名は、私と空色です。別に体調崩したとかじゃなくて、眠さで死にそうなだけです。
「たけちゃーん………」
「虹丿しっかりしろ。合宿はもう始めってるんだぞー」
「合宿の楽しみは、たけちゃんの食事だけです……それ以外はねかせてくれ……です」
現在バスの中。バスは琴美先輩が準備してくれたものだ。だからだろうか……乗り心地最高で、すっごく眠気を誘う。
「桜ちゃん……だ……うん……」
まるで死ぬ前の言葉のように、パタリと空色が私に寄りかかって眠ってしまった。
「部長のせいだぁああ………」
「私を巻き込むな」
「ほら、もうすぐ着くからがんばれー」
と言われましても、隣では空色がすでに爆睡してる。いいなー……私も寝たいな……
「先輩飴食べますか?」
「何かしてた方が目が覚めますよ」
「ありがとう後輩二人。私なんかを気遣って……飴はいただこう」
口の中で飴を転がしながら窓の外の光景を眺める。すでにバスは山道を走っていて、遠くに街が見える。今頃運動部は練習してるだろうし、夕は家で作業してるだろうし、兄ぃは旅行中だったりと、何かしらみんな、GWを楽しんでるのだろう。
「着いたよ」
バスが止まり、琴美先輩がそう声をかけた。空色を起こし、バスを降りる。この子の荷物は、私が持ってあげてる。
「わぁー……」
バスを降りた空色の目がキラキラと輝いていた。
先輩の別荘は、山のほぼてっぺんにあるため、そこからの景色は絶景だ。空色のお気に召したようだ。
「桜ちゃんすごいね!」
「そうだね。ほら、部屋に荷物置きに行くよ」
「うん」
よかった。空色、結構楽しそうだ。別荘の中はいつも通り広い。初めて来た一年二人と、空色は声をあげていた。
「さて、部屋割りだけど……」
「あっ、私と空色と蘭花は同じ部屋で。ベットは二つでいいんで」
「いいの?」
「私は空色と一緒に寝るんで。いいよね?」
「うん」
「俺はソファーでいいから、お前ら好きにしていいぞ」
部員以外の二人の寝床が決まれば、あとは早い。三年組・二年組・一年組で部屋が分かれた。まぁ、無難だな。
「じゃあ、お昼食べたら早速始めようか」
「たけちゃんごーはーん」
「先生!とりあえず合宿のご飯のレシピください!」
「お前ら落ち着け。すぐに準備するからおとなしくしてろ」
「じゃあ、それまで改めて自己紹介でもしようか」
カバンからゲーム機を取り出そうとしている空色の方を見る。行動早いな……さっきまでバスでダウンしてたのに……
「我が愛しの、可愛い妹、空色。属性はゲーム廃人です」
「空色、です。宜しくお願いします」
「私と蘭花以外とは初対面だよね。大丈夫、みんな優しい人だから」
「よそしく妹ちゃん」
「よろしく、空色ちゃん」
じーっと、今いるメンバーを見渡す空色。全員が頭に?を浮かべる。もちろん私もだ。
一通り見渡した空色は、私に耳打ちした。
「漫研は、美男美女ばかりだね」
まぁ、みんなイケメンで、美人ばかりだ。私は例外だけど。たけちゃんも、しぶいおじさまだから、かっこいいっちゃーかっこいいよなー。
「よぉーし!じゃあ空色歓迎会で、ゲーム大会するぞー!」
「おぉー」
ハイテンションに言う蘭花の手には、トランプがあった。たけちゃんのご飯はまだできそうじゃないみたいだから、それまで盛り上がろうという感じだ。ちなみにうちでは、たまにアナログゲームをするが、やっぱり空色が強い。兄ぃと私は五分五分って感んじ。
まぁ、だから、当然……
「あがり」
「あぁー!また空色が一抜けした!!」
一回戦、ババ抜き。一抜け空色。5戦5勝。
Vとピースをする空色。ビリはバラバラだが、基本的に私と蘭花がビリである。
「なぜTVゲームじゃないのに空色強いの……」
「どやっ……」
くそっ!そのドヤ顔も可愛いな!さすが我が妹だ!思わずハグしてしまった。
「あれだね。改めて、桜花のシスコンぶりを実感するね」
「仲がいいのはいいことよ」
「いや、桜花のは度が過ぎてます。まじ天使っていう程ですし」
「だって天使だもん。私の妹は。羨ましいか、蘭花」
「うっわ、うっざーい」
その後は、大富豪や七並べ。ジジ抜きやポーカー。あらゆるカードゲームを行った。なのにどうして。誰も、一度たりとも空色に勝てなかった。
ちょうど、トーナメント戦のスピードをやっていた時、鼻をくすぐるいい匂いがした。
たけちゃんの作ったお昼ご飯ができたようだ。この匂いは、カレーだ!お昼にカレーだ!
「目玉焼きが乗ってる!」
「半熟だぞ」
「たけちゃん最高!」
「それじゃあ、全員手を合わせて。いただきます」
全員で声をそろえて、部長の後に続いていった。
カレーは、市販のルーを溶かしただけなのに、なぜかコクと深みがある。目玉焼きもいい感じにトロトロで、もうすっごくうまい!
「たけちゃん……なんでこんなに料理上手なのに、お嫁さんいないの……グスッ」
「やめろ。俺が聞きたいぐらいだ」
「鷹瀬先生。今度教えてください」
「俺も」
「おぉ、いいぞ」
「後輩が、女子力上げに来たな。負けてられないね、蘭花」
「だね!」
ガシッ!と手と手を取り合う私と蘭花。けど本当に頑張らないと、すでに鈴兄ぃに女子力で負けてる。
「ご飯食べたらスケッチね」
「私、天使書きます!」
「はい却下」
「なんでですか! 天使ですよ、天使!」
「妹ちゃんを天使と言ってる時点でやばいので却下」
「そんな節操な……」
「桜ちゃんドンマイ」
そのままガバッと押し倒すように空色に抱きついてやった。
蘭花が写メを撮ったので、後でくれと頼んだ。