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現実逃避

「…………」


今の私は、まさにズーンである。すっかり忘れていた公開処刑。別名、文化祭説明会。合宿のことで頭がいっぱいで、自分が代理で出るのをすっかり忘れていた。


「ほら、シャキっとしなさいシャキっと!」

「部長、今からでも遅くありません。殺してください!」

「すまない……私はお前を殺すことは……」


とんだ茶番だとは思うが、こうでもしないと気持ちが落ち着かない。こういう時は、誰かと誰かをカップリングして……


「北疾……」

「やめい」


さすがに何を言っているのかわかって、クミン先輩に叩かれた。そうですね、後輩で考えちゃダメですね。うん、ごめんよ二人とも……私が悪かった。


『では続いて、漫画研究部です』


琴音ことね先輩の進行の声が聞こえた。次はいよいよ私たちの番だ。緊張で、なんだか足がガクガクする。

私は特に何も言わなくてよくて、基本的にクミン先輩が演説のようにみんなに伝える。


『先ほど、文芸部も仰ったように、今年は、漫研と文芸部のコラブでやろうと思ってます』


私たちの一つ前の発表が文芸部だった。すでにコラボの話は聞いていただろうに、みんな先輩の演説に引き込まれてる。ちなみに、文芸部の説明の時は、当然部長と副部長が出ていたので、ゆうはのんきに自分のクラスの列に並んでる。というか、撮影委員の蘭花らんか、写真撮りすぎだろ。あっ、目があった。

口パクで「ぐっじょぶ!」と言いながら親指を立ててくる。お前のせいで私はここにいるんだぞ。チラッと琴美ことみ先輩を見ると、優雅に笑ってる。もうなんだよもぉー……。


『以上で発表を終わります。多くの方のご来店、お待ちしてます。後、部員も募集してまーす』


ちゃっかり勧誘も入れて、私たちは舞台袖に下がった。そうすれば、まばらな拍手が響き渡った。


「素晴らしい演説でした、赤原せきはら先輩」

「そうでしょ?」

虹丿にじのさんも」

「えっ、私何も……」

「そんなことありません。スポットライトを浴びて、スッと立つ姿は、とても素晴らしかったです」


この人の目は腐っているのか?すぐに病院を紹介してあげなければ……眼科よりも、おっきい病院で診てもらったほうがいい。

無事に公開処刑も終えて、私は自分の列に戻る。クラスメイトとはそんなに話したことはないが、小さな声でお疲れ様と、数人の女子に言われた。なんだか気恥ずかしい気もした。

その後は、私も1生徒として公開処刑…………文化祭説明会を聞いていた。文化部が終わり、運動部へと移る。

運動部は基本的に食べ物の出店をだし、その売り上げ金をこれからの遠征だったり、備品代に使うらしい。

ちなみに我らが漫研は、来年の作品集の印刷代や備品代に回る。


「あっ……」


次にステージに上がったのはバスケ部だ。しかも、上がっている部員の中に空上くじょう君がいる。女子からの黄色い歓声が上がった。彼はにっこりと笑みを浮かべて手を振っていた。

どうやらバスケ部はワッフルを出すらしい。女子ウケ良さそう。あっ、商品のほうですよ。決して空上くじょう君のことではない。


『以上で全部活動の文化祭説明会を終了します。一般クラスの文化祭説明は、文化祭前日に行いますので、しっかり準備をしてください』


にっこりと笑う琴音ことね先輩。男子の雄叫びが上がるのであった。


                  *


「いやー、盛り上がったね」


私の前の席でしみじみという蘭花らんか。こちらと誰かさんのせいで犠牲に合いましたけどね!


虹丿にじのー」


と、こちらにやってきたのは、天性のコミュ力を持つ空上くじょう君である。何事!?えっ、なんで私話しかけられてるの!!


「手振ったのにガン無視とか……」

「えっ、あれって演出じゃなかったの!?」

「えっ、目があったと思ったの俺だけ!?」


なんでお互いに驚いてるんだ?蘭花爆笑してるし。だって普通、あの状況で自分に振ってるなんて思わないでしょ。


「いや、まさか自分に振ってるとは思わなかった……ごめん」

「はぁ……いや、俺こそごめん。というか、忘れて……すげー恥ずかしい」

「心配するな空上くじょう。お前のその瞬間は私のカメラに収められている」

「すぐに消してくれ」

「まぁまぁ。あっ、出店は行くよ。ワッフル好きだから、食べたい」

「マジで!」


一瞬にして目がキラキラと輝いた。あれか、カモが引っかかったとかそんな感じか?これで確実に一個は売れると。

まぁ何はともあれ、彼もいつも通りに戻ってよかったよかった。

さて、明日はいよいよ合宿だし、今日は帰って準備でもするか。


「あーそうだ桜花おうか。さっき先輩に聞いたんだけど」

「んー?」

「文化祭の売り子の衣装、今年はコスプレだって」

「……………あー、合宿のたけちゃんのご飯食べたいなー」

桜花おうかにはうんと可愛いキャラさせるって言ってた」

「あぁああああああああ!!聞こえない聞こえない!私は何も聞こえてない!なーんにも聞こえない!」

「コラコラ現実逃避するな。決定事項だ。後、文芸部も巻き込まれてる」


どんまいゆう。部長は文芸部までも道ずれにしたのだ。うんと素敵な格好させられるぜ……ふっふっふ……

あー人生初のコスプレが文化祭とか。というか、私はコスプレ反対派なのに!キャラの衣装着るとか、私の中では侮辱行為だ。そのキャラだからこそいいのに!3次元リアルでそれをやると、私の中では馬鹿にしてる感じがする。


「まぁ、仕方ないよ。先輩も、桜花おうかがコスプレ反対派だってしってるけど……」

「部長の馬鹿ヤロぉおおお!!」


その日の夜は眠れなかった。部長にどんな格好させられるんだろうと、もんもんと考えたせいで……


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