浪士組上洛
浪士組募集の噂が広まってから、翌年の文久3年2月。
小石川の伝通院に集められた200名余の浪士たちが今か今かと、上洛の時を待っていた。
「かなりの人数が集まりましたね」
「あれだけの好条件だ…集まらないわけがない」
広場でそわそわしている浪士達をみながら、清河は細く薄ら笑みを浮かべた。
―これも計画通り……。
一方、試衛館の面々は発表された道中編制に不服を漏らしていた。
「何で源さんも同じ隊じゃないんだよー!」
「ちょっと話つけてくるか」
藤堂平助、永倉新八は今にも清河のところに乗り込もうとしていた。
「まぁまぁ、藤堂君も永倉君も、落ち着きなさい。私の事はいいから」
宥める源さんを横目に沖田はある人がいない事に気がついた。
「あれ?土方さんはどこにいったんですか?」
「おや…そういえば見かけませんね……」
「トシなら厠でもいってるんだろう! ああ見えてトシは緊張しいだからな!」
近藤の能天気な言葉に試衛館の面々は心をそろえた。
(((絶対違うぜ近藤さん!!!)))
「土方さんまた抜け駆けかよー」
「彼の事です。近藤さんに役が無い事と源さんの隊についての直談判にも行ってるんでしょう、この事はそういうのが得意な人に任せましょう」
「ですね。頭の回転だけはいいですからね、だけは!」
「おい総司、それ土方さんに聞かれたらお前殺されるぞ」
「あはは、おかしな事言うねサノさん。僕は土方さんなんかには殺されませんよ僕の方が強いし」
散々な言われような土方はその頃清川の待機する部屋の前にいた。
もちろん、金数両を懐に忍ばせて。