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魔王といふ存在  作者: 谷川山
プロローグ
6/8

006 extra

 むかしむかし、一人の神様が居ました。何もすることがなく暇で暇でしょうがなかったので、一つの箱庭を作りました。そして、その中で遊ぶことにしました。

 幾年もたった後その箱庭で遊ぶことに飽きて、また別の箱庭を神様は作り始めました。遊ぶのに飽きた箱庭は、壊すのも面倒だったので自壊させるための因子を八つ、箱庭の中に配置しました。一定の時間が経つとその因子が動き出すようになり、全てが動き始めたとき、その箱庭の世界は終わることになりました。

 因子は長い年月を経て、大きな黒い龍の形になりました。この因子を壊すことは誰にもできません。この龍を倒しても、倒したモノにその因子は受け継がれるからです。

 古代文明の時代に、一つの因子が目覚めました。古代の人間たちはそれを邪神と呼び、恐れ、敬いました。その因子は一人の人間によって、多大な犠牲を払いながらも倒されました。滅びをもたらすものに他ならないからです。龍を倒したモノは『龍殺し』の称号がつけられ、不老不死の存在となりました。しかし、滅亡の因子を体内に宿しているので、世界にとっては邪魔者です。世界の理によって、誰もが嫌い、拒絶し、迫害しました。

 その『龍殺し』は、今でもこの世界のどこかを一人で彷徨っているとのことです。一時的に世界を救った英雄でありながら、その存在はさすらいの魔王として。

 残り七つの因子は今もなお、眠っています。その覚醒のときに、再び英雄の現れることを願います。


 <とある物語より抜粋>

<とある遺跡文書>


XX12年11月23日


AM01:00

 南の大地より黒龍が現れる。名の通り、色は黒一色。幅50m、長さ500m程の円筒を横倒しにしたような大きさで、顔の威圧感がすさまじい。正面から見ることは出来ないし、画像を見ただけで気絶しそうだ。南の砦は陥落したらしいが、情報を映像や画像で送ってくれたので対策が取れそうだ。今までこんなことは無かったのだがな、終末論もあながち間違ってはいなかったということか。


AM02:23

 兵器が効かない。ライフルもミサイルもあまり効果を及ぼしていない。国内で核兵器を使用したくはないのだが、収束させた試験段階のビーム兵器でさえ効かないとは。

 いたるところで被害が出ている。南の街は壊滅したそうだ。中央都市に現れるまでに何としてでも倒さなければ。

 いつも何もしていない偉ぶっているだけの奴らが喧しい。お前らの愚痴を聞いている暇は無いんだ、助かりたかったら口ではなく体で動け。何のための権力だ。


AM04:48

 また一つ部隊が壊滅した。知り合いも死んでいく。どうにかならんものか。


AM06:31

 夜が明け始めてから民衆が今の警戒態勢に気付き始めた。少し騒がしい。さっさとシェルターにでも逃げ込んでいろ。


AM07:14

 西の街が落ちた。通信技術の進歩もあまりいいとは言えないかもしれない。民衆の間に動揺が広がっている。「終わりだ、終わりが始まったんだ」と叫んでいる奴がいる。誰かと思ったらさっきの口うるさい奴じゃないか。変に不安だけを増長させやがって、全く厄介だ。さっさと一人で去ね。


AM09:11

 学園都市が落ちた。あそこには優秀な奴が沢山いたんだが、2時間も持たなかった。


AM09:58

 非常事態宣言をやっと出しやがった、トロい政治家のバカ共が。

 魔素生成装置を起動。魔力思考体を解放。実験段階だが仕方ない。物語の中だけだった魔法というモノを現実に使えるようにした。


AM10:05

 軍部に通達。ヘルメットに内蔵されたチップによって魔法の思考制御をできるようにしたと。

 魔力生成装置、リミッター解除。暴走状態に。


AM10:25

 魔法の使用により少しはダメージを与えられるようになった。

 ただ、使い勝手が悪いとか言ってきやがる。お前らの想像力が貧相なんだよ。

 魔素はこの世界全体に一瞬でいきわたるようにプログラムされているし、供給も装置のリミッターを外したから無限大だ。使用のためのサポートも性能の良いチップしか使ってないから思考に忠実に魔法が使えるはずだ。この魔法理論は想像力がモノを言うからな。頭の固い軍の連中め。


AM11:33

 治癒魔法が確認された。やっぱ回復役の魔法使いが居ないと面白くないよな。

 北の街が落ちた。2時間半近くもった。


AM12:40

 昼飯食いてー。


AM13:16

 バカが。シェルターまで壊しやがった。一般人が避難した意味がないじゃないか。


AM14:00

 東の街壊滅。黒龍の尾を切り落とせたのは良いんだが、怒って余計に狂暴になって暴れまくったことで殲滅されたっぽい。リアルタイムの映像が悲惨だ。


AM14:28

 技術者の俺が戦場に立たされるとか。

 確かにこの魔法技術組み立てたの俺だし、一番ちゃんと使えるのも俺だろうけど。都市防衛の最前線に、非戦闘員を置くとか。非常識すぎるだろ。


AM14:40

 来やがった。

 映像見てたが、でか過ぎるだろう。勝てんのかね、これは。勝たないと死ぬんだろうけど。

 壊滅した都市にも少しは生き残りが居ると良いな。そしてこの都市で生き残るのが俺だと良いな。

 軍の人間固まってるし。使えねー。


AM15:00

 とりあえず、水爆なみの破壊力を叩きつけてみた。軍の人間みんな吹っ飛んじゃった。防御くらいしろよ。

 それでもまだ普通に生きてる黒龍。ありえねー。


AM15:21

 軍の連中邪魔。使えねー。

 もっとド派手に攻撃しろよ。全く通用してねーじゃん。


AM16:34

 めんどくさくなってきた。被害考えないで巨大なのかましまくっていいかな。


AM16:40

 バカ将軍が死ににいった。最後までバカだったよ。

 しかもあいつのせいで一般人がかなり死んだ。民衆盾にするとかありえんだろう。

 この都市もほぼ壊滅だな。もう、いいよね。


AM16:55

 星を疑似的に創造して落としてみた。隕石のエネルギーって凄いね。地形が変化しすぎでしょ。

 ちょっと暑い。


AM17:30

 やっと這い出してきた。もう一発ぐらい落とせば死ぬかな?


AM18:09

 死んだのかな。

 なんか黒いのが飛んできて胸の中に入ってった。破壊衝動が半端ない。


AM18:30

 都市に戻った。生き残りからの視線が痛い。そんなに見ちゃいやん。

 こちとらまだ20過ぎたばかりの乙女だぞ、見つめるな、恥ずかしいだろ。


AM18:38

 生き残りを全部集めて記憶改ざんした。だって化け物見るような目で見てくるんだもん。


AM19:00

 全員明日から再起動するようにした。この国は滅亡したものとして新しい歴史を形作って欲しいものだ。

 さあ、私を楽しませてくれ。


 あの時からだいたい5千年くらい経ったか。私はいつの間にか不老不死の体になっていたらしい。寝ている黒龍をもう一匹倒したら破壊衝動を制御できるようになった。

 それまでは、押さえつけていたものがたまに暴発して天災みたいになっていたんだが。自分の体を持井通りに動かせるとはいいものだな。

 一人の人間がたまたま黒龍の弱点を(普通は無いんだが何故かあった)突いて倒してしまった。そしてその黒龍の力を手に入れた奴は魔王になって世界を壊そうとしてやがる。まあ、私に関係ないから見物してようかな。


 魔力思考体(通称:精霊)は私のことを「母さん」と呼んでいる。私は一度も子供を産んだことがないのだが。それに何より永遠の処女なのだが。まあ、開発したのは私なので仕方ないか。

 魔法も発達したり衰退したりと歴史の流れは面白い。と思っていた矢先、いきなり精霊たちが騒ぎ始めた。子供が生まれたと。2度目の世界の崩壊が近づいている、目覚めの時は近いと。


 見物のための特等席を手に入れるため、ガラクタの山と化した研究所から久々の外へと歩き出した。


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