004 ラロ日記02(修正)
天歴795年9月22日
ついに、ついに娘が産まれた。名前はイリアだ。
母子ともに健康だ。妻ミリーには感謝を。
天歴795年10月30日
イリアがなかなかハイハイしてくれない。成長が遅いのかと心配して知り合いの母親に訊ねると、「あなたの息子の成長速度がおかしいの」と言われてしまった。いやしかし、息子は普通の子よりちょっぴり成長が速いだけだ。おかしくなんてない。あるわけがない。
天歴795年11月29日
もうすぐ今年も終わる。子供たちが生まれてから、時が経つのが速い。それもこれも子供たちが可愛い過ぎるのが悪い。うん、そうだ。
もちろん愛すべき我が妻ミリーは別格だ。愛しているよ、これからも。
天歴796年3月12日
ネアンも私に負けず劣らず親バカだと思う。
天歴796年4月20日
ネアンと私の娘どちらの方が可愛いかの口論になった。私の娘に決まっているだろう。
次第にどちらが一番妻を愛しているかに話がずれてしまった。反省はしているが、後悔はしていない。
天歴796年5月6日
ハリス大公に仕事をするようにネアンと一緒に諭された。説教されるよりきつい。
子供の頃から兄のような存在だったためか全く頭が上がらない。
天歴796年6月15日
アウスト2歳の誕生日だ。仕事は無理やり休みにして一日中アウストといることにした。
天歴796年7月28日
アウストが虚空を見つめながら話していた。大丈夫だろうか、心配だ。
だがその姿も可愛い。
天歴796年8月10日
愛すべき妻の誕生日だ。なるべく2人きりで過ごしたい。そう思っていたのだが、イリアはまだまだ妻から離れたく無いようだ。手のかかる子だが、そこも可愛いから許す。
天歴796年9月22日
イリアが1歳になった。お祝いのケーキを頬張っている顔はもうたまらない。
天歴796年11月1日
ネアンと喧嘩してたらハリス大公に怒られた。しばらく家を離れて辺境へ行かなくてはいけなくなった。(泣)
妻や子供たちと離ればなれになるだなんて、耐えられない。
天歴797年1月17日
久しぶりにゴート国に行くことになった。大巫女の呼び出しがあったらしい。予言に関わることだろうか。
どうなることやら。
天歴797年2月4日
アウストを鍛え上げなければ。
……もっと大きくなってからでいっか。
天歴797年4月29日
今日はまだアウストとイリアの顔を見ることが出来ていない。仕事が忙しすぎる。
天歴797年5月13日
魔国が再び軍国へと侵攻し始めたとのことだ。
予言された日は近い。
天歴797年6月15日
アウストが3歳になった。もう普通に会話が出来る。成長速度は相変わらず速い。
天歴797年7月28日
イリアがアウストの後ろをちょこまかと付いていく。和む。可愛い過ぎだ。
天歴797年9月1日
お茶会を開いた。ネアンの家族とハリスの家族とでだ。
ネアンの娘のヒースとアウストを引き合わせるためだったが、軽い挨拶を交わした後はアウストは終わるまでイリアを構っていたし、ヒースは母親のアリスのそばにいた。
少し早まった気がしたが、ゆっくりした時間を久々に過ごせたので良しとしよう。
天歴797年10月3日
最近アウストは書庫に籠りっきりだ。私に構ってくれない。
天歴797年11月11日
書庫から大きな音が聞こえたので急いで駆けつけると、アウストが本に埋もれていた。急いで引きずり出してから、どうしたのか聞くと、「魔術に失敗した」らしい。
まだ教えてもいないのに魔術を使うだなんて…我が子ながら素晴らしい子だ。
天歴798年2月2日
大巫女の使者が来て、一緒に来た大巫女の娘のリアスが少しの間家に滞在することになった。うまく息子を引っ張り回してくれている。
天歴798年6月6日
再びリアスが来た。アウストが振り回されている姿はどこか懐かしい。付き合い始めの私とミリーみたいだ。
どうか、今の幸せが続きますように。
天歴798年9月22日
イリアの3歳の誕生日だ。たどたどしく話す姿が可愛い過ぎて困る。
天歴799年1月18日
再びゴート国に行くことになった。家族全員で行きたいのだが、道中危険があるかもしれない。そんな目には合わせられない。
ここは我慢だ、ラロ。私なら出来る。
天歴799年1月19日
やっぱり寂しい。
天歴799年3月23日
また忙しくなってきた。最近は古代文明関係の案件が多い。使えないし解読も出来ないのだから盗掘とか闇市とかやめてくれ。お願いだから、仕事を増やさないでくれ。
天歴799年8月7日
息子が古代の書物を、私が押収品として持ってきたものを読んでいた。見ていたのではなく読んでいた。
誰も解読できないモノだったのに。
天歴799年10月24日
最近のアウストはおかしいと思う。
天歴800年1月1日
今日見た事を正直に記す。書いても信じられないかもしれないが、本当に起きたことだ。
息子が、アウストが、「新年祝いだっ、イリアが可愛い記念だっ!」とか言っていきなり空に向かって魔術(?)をぶっ放しはじめて、綺麗な花の形をした火花を大量に生じさせたんだ。
その場にいた私や使用人が呆然としている中で、イリアははしゃぎ始め、妻はうっとりしながら肩にしなだれかかってきた。抱きしめたくなるじゃないかっ。
ではなく、何をどうやったらそんな事が出来るのか。どうやって思いついたのか。息子の事が理解出来なくて悔しい。
天歴800年1月2日
ネアンに呼び出された。昨日のことだ。
私も知らないことは知らないのだ、知っていることしか知らない。
だから、執拗に聞いてくるのはやめてくれ。私が一番困惑しているのだから。
天歴800年1月6日
追及が激しい。国王であるネアンだけでなく、あの時王都にいた貴族たちまでもがだ。
それに、「娘がまた見たがっているからまたやってくれ」とか完全に私情じゃないか、ネアンめ。
天歴800年2月17日
仕事が忙しすぎて愛しのミリーやアウスト、イリアと過ごす時間がとれない。もどかしい。寝顔だけでも癒されるが、実際に合うのが一番なのだ。
ストライキすべきだろうか、悩む。
天歴800年5月4日
今日は私の33歳の誕生日だ。こんな私でも身分は公爵であるから、そういった祝い事は盛大にしなければいけない。家族だけのこじんまりしたもので良いのに。
妻の美貌を他の男どもに見せたく無いし、可愛い息子を外見しか見るところのない貴族令嬢に狙われたく無いし、可愛い過ぎる娘を男どもに見せるわけにはいかない。決してバカップルだとか親バカでは無いぞ。妻と子供たちを愛しているだけだ。夫として、親として当然の思いだ。
アウストとイリアが「おたんじょうびおめでとう」って、「おめでとう」だって。これだけで家族のためにあと10年は闘える。




