003 幼児編(修正)
この世界に生を受けてから3年経って、流石に今の状況を受け入れました。駄々こねて事実を拒んでいても、転生して今自分は赤ちゃんであると受け入れなければいけないんです。でないと、吸わされるんです。無理やり、母乳を。
拒めませんでした。そもそも拒んだら栄養とれないので死んぢゃいますし。
白い綺麗な肌に吸い込まれそうな瞳、さらっさらな金髪でスタイル抜群な母親とか…母親が美人なのは夢でしたが、現実になって意識ある状態で吸わされるとか、生き地獄です。生きてきた年齢=彼女いない歴の僕の理性は限界寸前でした。
それはさておき(さておいてください。これ以上の説明は精神が持ちません)、母親がいるということは父親がいるということです。こんな美人さんを射止めた憎たらしい男は何処のどいつだって思っていましたら、父親超イケメン。父親爆発しろっと心の中で視界に入る度に言ってました。
この父、毎度毎度の行動を見ているとかなり親バカです。目を合わせると喜び叫び、声を出すと歓び叫び、ハイハイしはじめると悦び…ではなく喜び叫んでいきなり抱き上げられたと思ったら振り回されました。しゃべると余計に興奮するし、身体は小さいので抵抗できずにされるがまま。首がもげるかと思いました。
しばらく振り回され続けて、母に見つかって怒られたました。いい気味です。
そのまま嫌われてしまえば良いんです。そうすれば僕は母と2人きりに……と、すみません。欲望だだ漏れでした。
そんなこんなでいろいろあって、僕は何故かこの異世界に転生したということで一応納得し、この世界について知るために情報を集める事にしました。やっぱり本とかに出てくる転生モノのテンプレじゃないですか、文字とか言葉の習得や、魔法とか体術の凄いチートな存在になるって。そうゆーのを目指しました、努力しました。
割愛しますが、僕は頑張って身に付けたんです。神様とかに会ってチート能力を貰ったわけじゃ無いんです。褒めてください。
まあ、文字はアルファベットが変形した感じでスペイン語みたいな文法でしたし、言葉も聴いていれば自然と覚えてしまえるんですけど。
それもさておき、この世界には、念願の、『魔法』が、ありました。元の世界では30歳まで生きる事が出来なかったので『魔法使い』になり損ねたので、「今度こそは」と期待していた甲斐がありました。
さて『魔法』についてですが、誰にでも使える魔術というものが一般的らしいです。無属性魔術で、生活に必要な事は大抵何でもできます。威力は小さいので軍事利用は出来ないですけど。
精霊と呼ばれる存在するか見えないから分からないけど魔術使えるから居るんじゃね?っていう存在に詠唱(使用者の自由)という形でお願いしつつ、自分自身の余剰分の生命力を供物として捧げることで望んだ事象を起こすらしいです。使い過ぎると衰弱死するりしいので注意ですね。大抵、軽い疲労感とかで限界が分かるらしいんですが、たまにそれを無視して使い続けて悲惨なことになるとのことです。
また、属性魔法も存在します。こちらは無属性より威力を強くする事ができ、戦闘にも使えます。各人の習練によって威力は様々だそうですが。
属性の種類としては、光と闇の特殊ニ属性、木、火、土、金、水の一般五属性があり、その組み合わせで強くなったり弱くなったりするそうです。父の書庫を漁って調べました。
たまに昔の母以外からのラブレターやらエロい絵画やらが見つかったので、母の居る前で父に「これなーに?」と可愛らしく訊ねてやりました。空気の重くなっていく様が非常に楽しめました。あと、母の拗ねた顔がとても良かったです。
話を戻します。魔術の法則の考察としては、中国の五行思想+特殊属性といったところでしょうか。西欧の四行思想を組み合わせていくともっと面白くなりそうです。まだ試していませんが。
魔術についてはここまでとして魔法そのものはどうなのかというと、魔法を使える最低としてまず全七属性が使えること。産まれた時から使える属性は決まっているので、1つでも使えない属性があればそこまでです。
二つ目は、その全七属性の精霊に気に入られること。どうすれば目に見えない存在に気に入られるんでしょうか。意味が分かりません。
三つ目は自分の行使したい魔法を明確にイメージすることです。例えば、物を燃やすときに物理的なイメージを浮かべる必要があります。化学反応が起こっていることとか、酸素がそれには使われていることとか。面倒臭いことこの上無いです。
ただし、こんなにありえない条件があるのでその分リターンは大きいです。精霊に気に入られているので供物は必要ありません。威力も範囲も作用も思い(イメージ)のままです。
凄いですけど、悪用したら酷いことになりますね。気を付けなければいけません。
そんなこんなで、いろいろと蛇足でしたが自分、魔法使えます。30歳なれなかったのに『魔法使い』です。2歳の頃に視界に入った小さい光の粒達に触ってみたら、いきなり頭の中に声がドヴァーっと流れ込んできました。軽いパニックです。精霊達の供述によると、話し相手が久しぶりに現れて嬉しかったから興奮して喋りまくっちゃったらしいです。そういう時ってありますよね。仕方ありません。一時的に誰も居ない所で一人で喋っていて変な子扱いされましたけど。
それからは思考での精霊との会話を楽しみました。
精霊語などの普通の人間が理解出来ない喋れない言語や、今存在している国々全て、既に滅亡した国々全ての言語や文字を頭の中に突っ込まれました。あまり動き回れないので暇潰しに良かったんですけど頭パンクするかと思いました。意外とイケましたけど。多分精霊さん達の補助のおかげですね。感謝感謝。
ここまでは良いんです。良いんですよ。
僕が産まれてから約半年、ちょっとした事件が発生したんです。 母が妊娠、そして妹を次の年に産みました。
なんですかもう。僕が一生懸命この世界を知って頑張って強く生きていこうと(思ってないけど)一歩ずつ踏み出そうとしていた時に、父と母はやっちゃってたんですか。
グレてやりたくなりましたよ。そりゃ美人な母ですしまだ若いんですからそういうコトをしたくなっちゃうのは仕方ないですけど、こっちにだって心の準備とかいるんですからね。せめてやるなとは言いません(言えません)が程々にしてくださいよ。
ということで、妹が産まれました。名前はイリアです。まともに可愛らしい名前でいいですね、僕と違って。
この妹、成長するにつれて母に似てきて超絶可愛いんですよ。「にいさま~」とか舌足らずな声でチョロチョロと付いて来たりして。抱き締めたい、頬擦りしたい、可愛い子は正義です。実感しました。僕はロリコンではなくシスコンですので、そこは誤解無きよう。
公用語以外の様々な言語で危ない発言しまくりました。それもこれもイリアが悪いんです。可愛い過ぎるから。
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ちなみに、母の名前はミリーです。父の名前はラロです。僕の名前はアウストです。
家名はピテクスです。
そして問題なのが、男子が名乗るときは「自分の名前・父の名前・家名」の順に言わなければいけないんです。
父の父の名前は「キール」なので、父は「ラロ・キール・ピテクス」と正式な場所では名乗ります。貴族なので「卿」を付けるときもありますが。
そして、僕自身は父の名前が「ラロ」なので、「アウスト・ラロ・ピテクス」と名乗らなければいけないんです。何処の世界の原人ですか「アウストラロピテクス」だなんて!
実際、この事を知った時には絶望しました。orzになりました。しかも長男なので、結婚したとしても家名が変わる事がありません。確実に家を継ぐことになるので。
僕はこの世界で一生、この名前と付き合って逝かなければいけないんです。
親の皆さん、子供の名前はちゃんと考えてあげてください。原人からのお願いでした。orz