001 はじまりはじまり(修正)
修正加えました。
人の少ないローカル線に乗って、久々の家に帰る。実家からは遠く離れた大学で、帰省するのは年度の終わりか夏期休暇のみ。家族にはとても心配されているが、実家に居るというのもなかなか難しいものがある。とりわけ隣に住んでいた幼馴染みと離れてからは。
久しぶりの人の少ない夜も速い田舎で、都会での慌ただしい生活から逃れてゆっくりと羽を伸ばそうと思う。
帰って親に何と言われるだろうか、何をしようか。頭の中に思い浮かべながら電車に揺られる。懐かしいディーゼル車の揺れ心地が身体に響いて気持ち良い。
自分以外に車掌の他に2、3人しか乗っていない寂しげな車内で、ガタゴトと相変わらず線路を走る音はうるさい。
小さな事を懐かしく感じる。幼馴染みが消えたのはいつ頃だったか。まだ1年も経っていないように思えて、4年も過ぎている。自分はもう大学3年になり、あと一年で卒業だ。時間の流れは速いなと最近は思う。そう思い始めたのはいったいいつ頃からだったか。
思い出せない。 いつの間にかだ。
踏切に近付き、カンカンカンカンと騒がしい音が耳に響く。窓の外を見てみると、目の前には大きなトラックの正面があり、踏切の棒を弾き飛ばしていた。
甲高いブレーキ音が耳を霞めながら、ゆっくりと時間が流れている錯覚に陥る。これはヤバイなと、身体を強く揺さぶるような衝撃を感じながら目を閉じた。
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日没新聞 地方欄
トラック事故
先日午後8時20分頃、地元ローカル線がにトラックが横から追突。乗客3人のうち1人死亡、2人が軽傷を負いました。
トラックの運転手は酒気帯び運転をしていたと警察は見解を述べています。
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柔らかな日差しが目に入る。奇跡でも起きて自分は生き延びる事ができたのかと期待して、ゆっくりと瞼を開く。
見知らぬ天井。
入院でもしているのかと辺りを見回して現状を確認しようとするが、首の動きが重い。まるで自分の身体では無いように、鈍重だ。 やっとのことで見えたのは、近くに開いている窓。そこから日差しが入って来ているらしく、寝起きの自分には眩しすぎる。反対方向に急いで顔を向けると、そこには大きな鏡があって小さな生まれたてのような男の子が写し出されていた。しかも目が合った。
…誰?
「ーぁあーぇ」
尋ねようとしても口が上手く動いてくれない。
かろうじて動く腕を鏡に向かって向けると、鏡の中の男の子も同じように腕を向けてくる。
状況を頭のどこかで理解し始めるが、感情の方は理解を拒絶する。だって、目が覚めて鏡を見てそこに写った男の子が自分だなんて信じられようか。無理だ。
だんだん疲れてきた。眠い。
そうだ、僕は疲れているんだ。きっとこれは夢だ。夢なんだ。ここで寝たらきっと電車の中で目覚めるんだ…
そう信じて、僕はまた目をゆっくりと閉じた。