竹林で花見<作者:幻想郷の住人>
顔に陽射しが当たり私の意識を夢の中から引っ張り出した。
「ふわぁ………良く寝たわ……」
私は目が覚めた…………が布団から出るつもりは毛頭無い。
「まだ眠いし〜なんたって私は姫だから布団から出なくても問題な〜い」
「問題大有りですよ。姫様」
私がゴロゴロしていたら優曇華が部屋へ入ってきた。
どうやらまた私を部屋から引きずりだそうとしてるみたい。
「あら、優曇華。私を引きずり出そうとしてるの?」
「そうです。いつまで経っても起きないので師匠が起こしてこいと」
「……そう。わかったわ。すぐに行く…………なんて言うと思ったかしら?」
私は指を鳴らした。
すると……
「きゃあ!?」
優曇華の頭に天井から巨大なたらいが直撃!!
そのたらいの衝撃で優曇華は気絶した。
「ウサウサ♪」
「ナイスよ。てゐ。また次もよろしくね」
「了解ウサ」
てゐはたらいと優曇華を回収していった。
「外を見ながら寝転がるのも良いかもしれないわ…………よっこいせ」
私は立ち上がって部屋の障子を開けた。
外は綺麗な晴天と竹林。
いつ見ても変わらない風景。
まぁ竹って基本的に枯れにくいから風景は変わりにくいと思うけど。
私は竹を見て思い出した。
「今日は…………3月8日。……なら今日は宴会ね」
「あら、輝夜。今日は宴会でも開くの?」
そこへ永琳がやってきた。
永琳は月の煩悩…………じゃなくて月の頭脳と呼ばれるほど頭が良い。
月の都では家庭教師をやってもらってた。
「まぁね。今日は特に良い花見びよりよ」
「花見? …………あぁ、なるほど……これは宴会しないと損ね」
永琳は私の考えを理解したみたいだ。
「なら準備はイナバ達に任せて……優曇華には宣伝してもらおうかしら」
「それが良いわね」
私の意見に永琳は全て賛成してくれた。
「私はそれまで暇を潰しておくわ」
「準備しておきなさいね。輝夜」
「わかってるわよ。永琳」
永琳と別れた私は自分の部屋に入った。
そして宴会の準備を始めた。
【out side】
姫様を起こしにいったらいきなり頭に衝撃が走り、私は気絶した。
「う………あいたた……」
「あら、優曇華。やっと起きたのね……」
起きると横に師匠がいた。
「あ、はい。起きま…………あれ?」
私は体を起こそうとしたが、起きれなかった。
自分の体を見るとベルトで縛られていた。
「あ、あの………師匠? これは一体?」
「これから注射をするのよ」
「な、なんの注射ですか?」
私がそう聞くと師匠は注射を取り出した。
「筋力強化剤。貴方にはやってほしい事があるの」
「わ、私にやってほしい事ですか?」
「そう。今日、竹林で花見するから宣伝してほしいのよ」
私は師匠の言ってる事がわからなかった。
竹林で花見?
竹林に花なんて全然無いし…………一体何をするんだろ。
いや、その前に注射する必要あるの?
「というわけで…………宣伝してきてね。優曇華」
「でもどうやって説明すれば良いんですか? 皆さん絶対罠とか思いそうですよ?」
特に妹紅さん。
あの人、姫様の事が大嫌いだからなぁ…………。
「宴会って言えば来るでしょ? 今日は満月だから」
「わかりました、それでは行くので解放して下さい」
私はそう頼んだが師匠は私を解放せず持っている注射を戻さなかった。
「何を言ってるの? 注射の効力を確かめるついでに宣伝してもらうのよ」
「え?」
「レッツ………トライ」
「アーーー!!」
私の腕に注射が打たれた。
そして薬が注入される。
するとすぐに体に変化が出てきた。
体中がとても熱くなりはじめたのだ。
「あ、熱っ!!」
「体温が上がってる……というか筋肉が発熱してるのね」
師匠はベルトを外しながら冷静に観察している。
「焼け死にそう!! し、師匠!! どうにかして下さい!!」
「死なないわよ。筋肉が活性化してるの。素早く宣伝してくれば治してあげるわ」
師匠……他人事のように……まぁ実際に他人だけどさぁ。
仕方ない………早く行ってこよう……。
「それじゃあ行ってきます。師匠、治療薬を用意しておいて下さいね……うわっ!?」
私は空を飛ぶ為にジャンプする。
すると普段の倍ぐらい高く飛んだ。
「気をつけてね〜。あ、妹紅には花見と宴会って伝えておいてね」
「わかりました〜。とりあえず急がないと………」
私は幻想郷を回りはじめた。
【side out】
あれから時間が経って今は夜の竹林。
地面には座敷が広げられ宴会をしている。
私はそこから少し離れた場所に座っていた。
するとそこへ博麗霊夢がやってきた。
「ねぇ輝夜。なんで永遠亭で宴会せずに竹林で宴会なの?」
「まぁ理由はいずれわかるわよ。後の楽しみにしておくと良いわ」
「ふーん……期待しておくわね」
霊夢は去っていった。
私は竹林を見上げてみる。
「あと少しね…………」
「おい!! 輝夜!! 私をこんな所に呼んでなんの用だ!!」
今度は妹紅がやってきた。
やっぱりイライラしてるみたいね。
私が主催だし仕方ない。
「いやね。花見って聞いたでしょ?」
「花見をするにしても花無しじゃないか!! どうやら私に喧嘩を売ってるみたいだな!!」
妹紅は両手に炎を宿して構えた。
「花見の席で戦おうなんて……そんなつもりは無いわよ」
「問答無用!!」
妹紅は襲い掛かってきた。
しかし私はそれを避けて妹紅に言った。
「なら、これでどう?」
私は指を鳴らす。
すると…………
「おぉっ!!」
「凄く綺麗………」
周りから感嘆の声が上がっていった。
「……輝夜。一体何をしたんだ?」
「私は指を鳴らしただけよ? 何もしてないわ。まぁ何に驚いてるかはわかるけど」
「う〜ん…………」
妹紅は考えこんだ。
上を見ればわかるのにねぇ………。
ネタバレしよっと。
「妹紅。上を見ればわかるわよ」
「上? ……あぁ……竹の花か……。しかし竹の花で花見とは随分と考えたな。お前にしては」
「竹の花が咲くのは珍しいからね。一回やりたかったのよ」
私は上を見上げた。
竹に花が咲いていて空には満月が浮かぶ美しい景色。
(こんな花見も時々は良いのかしらね)
私がそう考えていると永琳がやってきた。
「輝夜。サプライズ成功ね」
「えぇ。皆楽しんでくれてるみたいで嬉しいわ。そういえば優曇華は?」
「筋肉痛であそこで安静にしてるわ」
永琳が指さした方向に優曇華が座っていた。
筋肉痛って半日でなるものかしら?
「なんで筋肉痛?」
「さぁ?」
「ちゃんと治してあげてよね?」
「わかってるわよ。じゃあまたあとでね」
永琳は優曇華の方へ歩いていった。
「なぁ輝夜」
「何かしら?」
「一時休戦しないか? べ、別に宴会の時だけで竹の花に被害が出ないようにするためだからな!!」
妹紅は少し慌てて私にそう言った。
「私は元々そのつもりよ。さぁ飲みましょうか」
「飲み比べでもするか?」
「別に構わないわよ? だって勝つのは私だもの」
「勝つのは私だからな!!」
こうして竹林の花見兼宴会は盛り上がっていった。
私は妹紅と飲み比べしてお互いに飲めなくなるまで飲むつもりでいる。
この宴会が終わったら妹紅と私はまた戦う。
でも戦いは日常の出来事。
宴会が終わる事はいつもの日常に戻るだけの事だ。
「この非日常を楽しむのも良いかもしれないわね…………次の非日常は30年後かしら?」
「ん? どうした輝夜?」
「なんでもないわよ。さぁ早く座りなさい」
「あぁ、わかってるって」
「私も混ぜてほしいわね」
永琳がやってきた。
蓬莱の薬を使った3人がその場に揃った。
「良いわよ」
「酒はこいつで良いよな?」
「えぇ、それじゃツマミはこれで良いわね」
「……次にこの竹の花を見る時には私がお前を倒してるだろうな」
「出来るものならやってみるといいわ」
「私が先に貴方を倒してるかもしれないわね」
私達はお酒を入れたコップを手に持った。
「それは楽しみだな」
「さて、そろそろ飲みましょうか」
「そうね。それじゃ……」
『乾杯』
私は昔に永遠という名の鎖をつけたかぐや姫。
永遠は人間にとって誰もが持つ憧れ。
だけど永遠を手に入れると他人からは気味悪がれ、知り合いは死んでゆき、いずれは孤独になる。
でも永遠は嫌な事だけでは無いと私は思う。
退屈でもいつもと違う事が毎日起きて退屈を打ち消してくれたり、永遠の鎖をつけた者だけが見る事が出来る景色も世の中には存在する。
短くも儚く忙しい人生を楽しむのも良いし、終わりの無い無限の時間をグータラ過ごすのも良いが二者択一でどちらかしか選べないのだ。
だから私はこの無限にある時間を楽しみながら過ごしていきたい。
竹の花で花見…………考えてみると中々風流ですね(多分)。
はじめまして~幻想郷の住人です。
今回初めて短編小説を書かせていただきました。
意外と難しいものですね。
まぁなんとかなったけど…………。
永遠の鎖………枷にした方が良かったかな?と思いましたがあえて鎖にしました。
なんとなく鎖の方がわかりやすいかなって考えました。
東方生活録を書いていますので気が向いたら覗いてみてほしいです。
それでは失礼しま~す。
ありがとうございました~