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東方作家萃 ~Phantasm Novel Union~  作者: PNU
第二回企画~リレー~<「スポーツ」の部>
19/20

東方野球録――第二幕<作者:糖類桜>






 

「さて二回。バッターは魔理沙。先ほどはツーベースヒットを叩き出しました」


「早さにも定評がありますからねー。彼女を止める止めないでこの回の戦局も大きく変わるんじゃないでしょうか?」


 実況席の二人はさながらプロの実況者の様にさまになっている。




 そして、再び打席に立った魔理沙は意気揚々に箒を構えた。

 対して投手のチルノは二度も同じ手など食らうまいといった顔つきでマウンドの砂をならす。


「今度こそ三振でバッターボックスに帰してやるんだから!」


「それは出来ない話だぜ。次もドでかいの打ち上げてやるぜ」


「だったら無理やりにでも帰らしてやる!――えりゃあ!」


 チルノはコントロールを捨て、最大の速さでボールを投げた。

しかし、当然ながらボールが大きくブレながら捕手の方へと向かっていく。


「ボール!」


「うわっととと。あんなの当たったら痣が出来ちゃうのぜ」


「余裕かましてーっ! ふんっ」


 今度は狙ったのかそうでないのか、ゾーンギリギリを通ってのストライクとなった。

チルノは全く反応できなかった魔理沙にどんなもんだと言わんばかりの笑みを送った。その行為が魔理沙の心に火をつけたとも知らずに……。


「これでもくらえっ!」


 次に繰り出されたボールは、また力が入り過ぎたせいかストライクゾーンを大きく外れた球だった。

誰しも見逃しで1,2となると確信した。


 が、魔理沙は全力で箒をスイングした。

すさまじい勢いとはいえ、ボールにあたった部分が少ないためか外野には飛ばずショートゴロとなった。

すかさずその場にいたサニーミルクが送球するが、グローブにボールが収まるころには魔理沙が一塁を駆け抜けていた。





「これは……。意外な球を打ちましたねぇ」


「そうですね。こういうプレイは彼女にしかできないものかもしれませんね」


「まあ魔理沙さんならパワーがどうたらこうたらって言いそうですしね」




「つ、次の霊夢は絶対打ち取るんだから!」


 悔しそうに地団駄を踏みながら叫ぶチルノに対して霊夢はうってかわり、無言で不気味なくらい静かだった。


「ええい!」


 今度はど真ん中のストレートだが霊夢はバットを振る様子もなく見逃す。


「どうしたのよ? まさか、あたいが怖くて怖気づいてるんじゃないわよね!」


「……」


「まあどうでもいいわ。――えいやっ!」


 今度も全く同じと言って過言ではないくらいのストレート。これを霊夢は高く打ち上げた。

しかし、そのままキャッチされベンチへと帰っていく。

 と、同時に魔理沙がかなりのスピードで二塁へと走り出した。


「大ちゃん、送って!」


「え? ああ、うん!」



 野球をしたことのないのだからルールもいまいち分からないままだった大妖精は反応が遅れ、そのまま魔理沙の進塁を許してしまった。



「これは、犠牲フライですね。確実に点へ繋ぐためでしょうかね」


「そうかもしれませんね。点差はありませんし。また厄介なことをされてどんでん返し、というのも無くはないですからね」




「ぐぬぬー、今度こそ。今度こそ!」


 進塁を許してしまったことにまた悔しがりながらチルノはピッチングフォームをとり、鬱憤をボールに込める様に投げた。


「あわわわ。えい!」


 まずまずの速さではあったが前ぶりなく(本当はそれが普通)投げられたボールに反応しきれなかった橙は、バットを投手に対して垂直になる感じに突き出した。

 ボールは突き出されたバットに旨い具合に当たり、内野に一度バウンドするとファーストを横切るように転がっていった。


「やった!」


 スイングはしていないが、ヒットしたことに喜んだ橙は魔理沙に負けじと一塁へ走っていったが、流石に送球のスピードには勝てずアウトとなってしまった。


「うぅ、またダメでした。ごめんなさい藍しゃま」


「大丈夫大丈夫。今度は魔理沙を進塁させれただろ? つぎはもっとよくなるさ」





「もう容赦しないんだから!」


 チルノはそういうと先ほどの霊夢のピッチングを思い出しながらだが、マネして投げた。


「何!?」


 奇跡なのかそれともチルノ自身の才能なのか、不恰好ながら強烈なカーブを繰り出し、藍からストライクを奪った。


「そんなバカな。でも、次こそは」


「ふんだ、あたいにかかればもっとすごいのだって。――あ、あれ?」


 今度はカーブでもなくストレート。しかもかなり遅めで軌道も不安定なの。


「そこっ!」


 藍としては見送って次を狙いたいところだったが、前回のことを考えると何かあっても困るので打つしかなかった。

 打たれたボールは内野へ転がったが、素早く回収、そしてホームベースへ送球された。


「おりゃああ!」


 あと僅かのところで魔理沙はスライディングをし、砂煙を立てながらキャッチャーにボールが送られたのとほぼ同時に帰還した。



「おーっとこれは審判の判定かー?」


 四季映姫がその現場を見た後、数秒ためて


「アウトですね」


 といった。


「はあ? どこに目ぇつけてんのよ! どう見てもセーフじゃない! ちゃんとしなさいよ、このダメ審判!」


 四季映姫がそう言ったとたん、ドンと音を立ててベンチから立つと怒りを露わにしながら霊夢は彼女へ近づいて行った。



「おおっと、博麗チームの監督の霊夢が審判へ抗議に出ました!」


「気持ちは分かりますが、ルール的にそれはどうなんでしょうかねぇ……」




 感情高ぶった霊夢は、大げさなジェスチャーと大声で魔理沙のセーフを訴えるが四季映姫はまるで耳の聞こえない地蔵のように固まって眉一つ動かさない。


「ちょっと聞いてんの? だからこれはどう見たって……」


「れ、霊夢落ち着けって! ルール忘れたのか? このゲームは審判絶対主義なんだぜ。下手したらこれでおじゃんなんだぜ?」


「んなっ。……分かったわよ。ハイハイ。それじゃ、みんな守備よー。点取られたらタダじゃおかないから!」


 霊夢は何事もなかったかのように自分のチームの方へ声を上げると、そのままベンチへ帰って行った。



「どうやら、納得したようですね」


「そのようですね。喧嘩などで失格にならないでよかったです」


「そうですねー。さて、少々混乱もありましたが、点の変動は無いまま二回裏へと入りました。妖精組、バッターはリリーホワイトです」




「さて、無失点でこの回終わらせてやるわよ」


 ふう、と一息ついてからまずは様子見と低めのストレートを投げた。

チルノとは違い、飽くまでスポーツとしてのスタイルだ。

 投げられたボールは、バットにかする気配さえせずに、キャッチャーへと渡った。


「なるほど。ほかの妖精(やつら)とはちょっと違うみたいね。――えい!」


 次にゆるいシュート。これもリリーはスルーする。


(下手な仕掛けは通用しなさそうね)


 そう思った霊夢は直球勝負と、大きく振りかぶってボールを投げた。

そのボールはかなりの速さと安定さを兼ねつつ。キャッチャーへむかい、ミットへ吸い込まれていった。


 リリーは振るそぶりを一度も見せず。

これにはそこにいたメンツ全員が驚いたが、一番驚いたのはチルノだ。

チルノは依然として打席から動かないリリーに心配そうに駆け寄るとゆっくりと話しかけた。


「リリー、具合でも悪いの? 大丈夫?」


 そう聞くが動じない。


「リリー、リリー?――ね、寝てる?」


 よく見るとリリーは冷静で賢かったわけでなく、ましてや具合でも悪かったのでもなく、ただ単に眠りこけていただけだった。

 その衝撃的事実に皆、そろいにそろってずっこけた。




「こ、これは……。どうなんでしょうか、霖之助さん」


「うーん。春告精だから、時期以外は気だるいのかな?」


「ははは、確かにそうかも知れませんね」



 次の打者はチルノ。前回はスターサファイアと同じく、活躍した強打者である。


「次はホームラン打ってやるんだから!」


「はいはい、打てたらね。――えいやっ」


 今度はカーブ。チルノはストレートと同じ要領でバットを振ったせいか盛大に空振り、その場で一回転してしりもちをついてしまった。


「あいたたた。何よ卑怯者!」


「卑怯者ではないわよ。それにあんただってやってたじゃない、のっ!」


 言い切ると同時に放たれたボールは低めで早いストレート。

それを待ってましたと言わんばかりにチルノはバットを振り上げる様に振り、強打させる。とんでいった球はセンターをこえ、ツーベースヒットとなった。



「大ちゃーん、がんばれー!」


「うん、チルノちゃんもねー!」


 お互いに応援し合いやる気を高めるチルノと大妖精。非常に仲のいい妖精()達だ。

それにうってかわって、霊夢は気難しい顔をしている。


「うーん、後のをきっちり抑えないとキツイわねぇ。逆転なんて絶対嫌だし」


 そして考えた結果出されたボールは、大妖精の振ったバットは空を切りキャッチャーへと渡る。


「ううん……。バント位しかできないよ」


「弱音を吐いたって私は手加減しないわよーっと!」


 今度はカーブ。きわどい軌道を描いたボールはバットに触れることなく、またキャッチャーへと渡されていった。


「さーて、これであんたはラストォ!」


 大妖精を仕留めんと投げられたボールは曲がることのないストレート。

それを見た瞬間、大妖精は早すぎるタイミングでフルスイングをしてしまった。

が、先ほどのチルノと同じく勢い余って一回転した。そして、持っていたバットにたまたま当たり内野へと転がっていった。

 守備陣は誰も想像していなかった展開に反応できず、チルノを三塁へ、大妖精を一塁へと進塁させてしまった。


「……次よ次。次はサニーね。それならこれかしらっ!」


 放たれたボールは綺麗な軌道を描きキャッチャーへと渡った。


「は、はやいなぁ。もう」


 少し大きめなヘルメットを被ったサニーミルクは被り方をさながら麦わら帽子のようにしてずり落ちないようにすると、再びバットを構え、霊夢を見据える。


「せいやっ!」


 今度のボールは軌道もくそもないくらいめちゃくちゃの球で。ストライクゾーンに入ることはなく、ボールとなった。

そして、次に投げられたボールも同じくボールとなってしまった。




「霊夢さんどうしたんでしょうか? あれほどキレのいいピッチングだったのに」


「精神的、身体的両方で疲弊してるんでしょうかね。これは味方のフォローが必要不可欠なんじゃないでしょうかね」




「……ふう。今度こそ。それっ!」


 汗を拭き、呼吸を整えてから投げられたボールはやはりストライクゾーンには入らないものの、大分軌道修正されてきている。


(次の球こそ……!)


 自分にそう言い聞かせ、投げたボールは速度は遅いものの、中々のコントロールである。


「そりゃあ!」


 しかし、球威などは無いに等しかったせいか大きく打ち上げられてしまった。


「おっと、これは大きい! 妖精チーム逆転ホームランか!?」


 間違いなくホームランとなると霊夢が諦めきったとき、それまでいいとこなしだった萃香が動き出した。


「これ以上は好きにさせないよ~。そーれミッシングパワー!」


 幼女並みの身長だった萃香が一瞬にその何十倍にもなってボールを楽々とキャッチして見せた。


「でりゃああああ!」


 どんなもんだいとえばる萃香を尻目に三塁からチルノは走り出した。


「ありゃりゃ? 紫、パース」


「はいはい、ゆかりんにおまかせー」


 元の大きさに戻った萃香が力任せで紫にボールを投げ、それを紫が隙間の中に入れてキャッチャーの藍の付近に移動させる。それを内野守備に回っていた突如藍の後ろに現れた橙と魔理沙が加わって三人(の内二人が人外)がかりで球を受け止めてみせた。


「あ、アウトーッ!」


「へ……? そ、そんな」


 あともう少しで帰還できたはずのチルノは一瞬の出来事に理解できず、そのまま走り、ホームベースで立ち止まってしまった。



「これは凄いゲッツーです! 萃香選手、紫選手の能力がとても上手く使われました!」


「とても鮮やかでしたねぇ。でも、別に萃香選手は思いっきり投げなくてもよかった気もしますがね。それと、キャッチに回った二人はどんな仕掛けでキャッチに回れたのでしょうか?」


「それは……。おそらく紫選手が転送したのでは無いでしょうかね? 何やらメンバーともコンタクトを取っていたようでしたし。――まあ、何はともあれナイスプレーで失点を阻止しました!」


 目の前で起こったことに全く理解できなかったチルノは大妖精に声を掛けられるまで、ホームベースに突っ立っていた。


 そんなこんなで二回が共に点の変動なく終わり、遂に三回表へと移るのであった。



……そろーそろ、公開する作品を完成させようと奮闘しとりまする。


あ、どうもご無沙汰ですね。私です。八雲糖類でございまする。

今回の企画。新しい感覚で戸惑いと興奮(厭らしい物ではない)を胸に抱きながら書かせて頂きました。

実はこれ、5時間くらいで完成したんですよん。文だけ、ですが。

没にしたり、途中で何か思っているものと違うと止めたりしたものを含めますと1週間はかかりました。

連携プレイって大変ね!


それでアイディアもなく死んでいるところに頭に御柱がごっつんこ。霊夢の抗議や萃香のミッシングパワー(パパパッパッパッパ、パァウァー!!)件など一気にビビッときましてね、とりあえず紙に書き留め、夜明けまで、何かに取り憑かれたかのようにドドドッと書きました。

そんな作品です。


この企画でPNUのことを知って、少しでも興味を持って下さる方がいらしたら幸いです。

「この同盟ってどんなのー」だとか「kwsk」といった意見などはお気軽に私の垢やPNU垢に送って下さって全然かまいませぬ!


さて、少しばかりダラダラとしすぎましたね。

では私はここらで筆を置こうかと思います。

お次は幻想郷の住人さんです。果たしてオチはどうなるのか……!

これは見るべし!(お願いします)


では、またPNUの活動報告などでお会いしましょう。

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