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偶然助けた美少女に「貴方に告白するのは十五回目ですっ」と言われても、俺は過去の十四回を知らない  作者: 紐育静
第2章『十六回目の告白』

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第47話 ここがギャルゲの世界観なら……



 今日は朝からボランティア活動だ! 奉仕の精神に則って街を綺麗に掃除しまくるぞ!


 ……と、俺はそんなテンションでボランティアに望むわけではないのだが、こんな変なテンションでないとやっていけなさそうな理由がいくつかある。


 「こういうの何だか久しぶりだね」


 俺の左隣には、ウチの高校の黒地のジャージ姿で大きなゴミ袋とトングを手にした雫が佇んでいて。


 「さぁ、一緒に頑張りましょうね、昴さんっ」


 俺の右隣には、ウチの高校ではなく杠葉女学院高校のえんじ色のジャージを着た小春が、俺に眩しい笑顔を向けていて。


 「ほなよろしくな、春ちゃんの彼氏さん!」


 小春の隣には、彼女と同じくリハジョのジャージを着た、黒髪のひとつ結びで関西弁を喋る女子がいた。

 誰だ、コイツは。



 「いや~全然男っ気のなかった春ちゃんに彼氏が出来たって聞いたからどんな人かと思って見に来たかっただけなんです~。あ、でもちゃんとボランティアには参加しますんでそこんとこはご心配なくど~ぞ~」


 彼女は小春の友人である立川凪紗という女子らしく、せめて奉仕の精神に則ってボランティアに参加したかったとかそれらしい理由をこしらえておけばいいのに、バカ正直に笑顔で本音を話しているのである。


 正直、おしとやかなお嬢様っぽい小春にこんなコテコテ関西人の友達がいるというのは意外だが、彼女の人懐っこい笑顔を見るに悪い奴ではなさそうだ。


 「あと、のぼりんも久々やなぁ元気してた?」

 「久々って、一昨日会ったばかりでしょ」

 「え? ボリノって立川と知り合いなの?」

 「せやで。ウチが小学校の時にこっちに引っ越してきた時から優しくてもらったからな、もうお互いのホクロの数を完璧に覚えてるぐらいの仲やで」

 「いや、私は凪紗のホクロの数なんてわからないし……って、私のはわかるの!?」


 小春の高校の友人である立川凪紗は、ボリノと小中の友人でもあったと。何だか世界って意外と狭いものだなぁ。


 「……にしても、ツバル君っていつからこんな人気者になったのかしら」


 と、ウチの高校の生徒会長であるボリノは呆れた様子で溜息をついていた。俺だって知りたいぐらいだが、これも小春の働きのおかげというべきだろうか。きっとこれまでの世界では、少なくとも雫がこのボランティアに参加することはなかっただろうし。


 「まさか昴にモテ期が来るとは思わなかったなー。しかも四股とか」

 「おい湊、お前誰をカウントして四股にしたんだ? まさか雫を入れたわけではあるまい」

 「流石にそれはちょっと」


 せっかく修復できた雫との関係に再び亀裂が入ろうとしているんだが。


 「でもエロゲならそういうのも平気でやってるし」

 「お前まだ十八歳以下だろ! やめろその話は!」


 俺の幼馴染の湊はこんな可愛いなりをしているのに喋ることは結構どぎついのが恐ろしい。面白いエロゲがあるなら是非とも教えてもらいたいところだが。


 「いえ、落ち着いて冷静になって考えてみてください津々見先輩」

 「なんだよ長沼。お前また変なことに頭を働かせてるんじゃないだろうな」

 

 ウチの生徒会の会計である長沼星良も普段はおしとやかで清楚な雰囲気なのに、恋愛が絡むと変なスイッチが入ってしまう変わり者だ。今まさに目を輝かせていやがる。



 「フフフ……津々見先輩。これはつまり、ギャルゲの世界観というわけですよ!」



 長沼。見てみろ周りを。小春も立川も雫もボリノもポカンとしてるぞ。湊だけ「なるほど」って頷いてるけど。


 「長沼、何が言いたい?」

 「つまりですね、津々見先輩はギャルゲの世界に転生してしまったラノベ主人公なんです」

 「一から十までさっぱりわからないんだが?」

 「考えてもみてくださいよ、まずメインとなる幼馴染枠のヒロインがいるじゃないですか」

 「俺の幼馴染にそんな仲の良い女子はいないが?」

 「いるじゃないですか、中野先輩が」

 

 長沼がそう言うと、全員が湊の方を向く。


 「え、僕?」


 湊はあまり背も高くなくて細身で顔立ちも中性的、ウィッグを着けてちゃんとおめかしするとあら不思議、立派な美少女になりそうな出で立ちをしている。


 ……いや、メインヒロインの幼馴染が男の娘とか攻め過ぎだろ!


 「お兄ちゃん、まさか……」

 「湊君とそういう関係だったの……?」

 「昴、僕のことをそんな目で見てたの……?」

 「おいやめろ! 何を勝手に勘違いしてやがる! あと長沼、湊をギャルゲに登場させるとするなら多分友人枠だぞ!」

 「ですがそういった友人枠が隠しキャラとして攻略対象になることだってあるではないですか! 昨今の時代の潮流に乗って、そういった性別の壁を乗り越えるべきです!」

 「僕は性自認もちゃんと男のはずなんだけどなぁ……」

 「それはそれで好きな人もいるんちゃう? 幼馴染系のBLもそんな珍しくないで」

 「な、凪紗ちゃん、そういうのとは違うと思うよ……」


 しかし、実際に湊に告白されたら俺はどう答えるのだろう? いや、余計なことを考えるのはよそう。今の俺には小春という彼女もいるんだし、大体メインヒロインが男の娘とかいうギャルゲを買おうとも思わない。


 「そしてですね、ツンデレヒロイン枠には幟先輩がいらっしゃるわけで。しかも生徒会長でもいらっしゃるし後輩達には聖母様と崇められる程の人格者です」

 「いや、私はそんなツンデレじゃないし」

 「ボリノがツンデレじゃなかったらただの美人になるだろ」

 「い、いきなり何言ってんのよ!」


 と、いつものように俺のスネに蹴りが入る。


 「なるほど、では訂正しましょう。幟先輩はただのツンデレヒロインではなく、ツンデレ暴力系ヒロインであると」

 「何か要素足されたんだけど!?」

 「でもウチの目から見てものぼりんはそんな感じやで」

 「そんなー!?」


 己の日頃の行いを恨むんだな、ボリノ。多分湊よりかはよっぽどメインヒロインっぽいが、少なくとも俺目線では負け確ヒロインだぞ。


 「そしてですね、そんな幟先輩の前に現れるライバルが、転校生ヒロインである神城先輩というわけですよ!」

 「わ、私が転校生!?」

 「まぁありがちな設定やな」

 「鈍感系主人公極めたりな津々見先輩は全く覚えてないわけですが、実は幼い頃に神城先輩と出会っていて……」

 「あったら良かったんだがなぁ」

 「僕もそんな人覚えてないなぁ」

 「神城先輩みたいな綺麗な人がいたら、私も覚えてるだろうし。大体お兄ちゃんってそういうのに全然縁がなかったからね、子どもの頃は」


 どうだろう、実は幼い頃に俺はどこかで小春と出会っていたりしないだろうか。小春もピアノを習っていたらしいから接点はあったかもしれないが、俺は同じコンクールに出場していた面々すら覚えていないぐらいだからどうしようもないなぁ……。


 「さらにですね、やっぱり場を和ませる要員としてこってこての関西人キャラも必要なんですよ」

 「誰がこってこての関西人キャラやねん」

 「そういうところでしょ」

 「大体な、まず津々見君と全然接点がないわけやし。学校も違うんやし、のぼりんとか春ちゃん経由でしか知り合うこと出来へんで。ちょっと出てくるお助けキャラぐらいやろ」

 「……でも凪紗ちゃんってフランクだし、知らず知らずの内に昴さんに惹かれていく可能性も……」

 「ちょい待ちや春ちゃん。ウチに対してジェラシー妬くのやめい」

 

 今日会ったばかりだし立川の人となりはあまりわからないが、俺の身近にいる人間で信頼できるトップツーの小春やボリノの共通の友人なのだから、それなりに頼りになりそうな奴ではある。

 

 「後ですね、やはり妹キャラも欠かせないわけですよ」

 「し、雫が攻略キャラに?」

 「えぇ勿論。今まで津々見先輩と雫さんの仲はあまり良くありませんでしたが、ここから一気に仲が深まる可能性も……」

 「ない」

 「だそうだ」

 「残念……」


 そういうギャルゲで自分の妹が攻略キャラになるのって特殊なケースだろう。実は血が繋がっていなかったり複雑な事情があったりしてもやはり倫理的な問題とか色々あるはずだ。もしかしたら湊はそういうのに詳しいかもしれないが。


 「そうなるとですねぇ、やはり学園モノだったら先輩や後輩キャラも欲しいところなんですが、津々見先輩って三年生ですからそもそも先輩がいないんですよねぇ。手頃な後輩もいないですし……」

 「いや、いるでしょ」

 「へ? ……あ、私か!?」


 自分の知り合いを使って色んな妄想を繰り広げていたくせして、長沼は自分のことが全く頭に入っていなかったようである。俺は部活とかにも所属していないから、接点があって親しい後輩といえばそれこそ同じ生徒会に所属している長沼ぐらいである。


 「星良ちゃんもギャルゲヒロインの仲間入りというわけね」

 「でも津々見先輩に主人公感あるかと言われるとそうでもないですし……」

 「じゃあなんでギャルゲだとか転生モノの主人公だとかそういう話を始めたんだよ! 大体俺にはもう小春がいるんだよ!」

 

 と、清掃活動が始まる前にダラダラと無駄話をしていた俺達の元に、生徒会顧問である平間先生がやって来た。


 「おーい、そろそろ始まるから集合なー」

 「あーあ、平間先生が女だったら良い感じにヒロインに加われたのに……」

 「何だー? 何で俺は日曜の朝っぱらから自分が男であることを否定されないといけないんだー?」


 そして、昨日仲直りしたばかりの妹の雫、俺の彼女である小春、そしてガヤとしてやって来た立川凪紗の三人が急遽加わった中、愉快な清掃活動が始まったのであった



 お読みくださってありがとうございますm(_ _)m

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