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偶然助けた美少女に「貴方に告白するのは十五回目ですっ」と言われても、俺は過去の十四回を知らない  作者: 紐育静
第2章『十六回目の告白』

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第42話 両者揃ってごめんなさい



 「では、お二人共。ちゃんとお互いに目を合わせてください」


 部屋に入ると、どういうわけか俺と雫は床の上に向き合って正座させられ、そんな俺達を見守るように小春はピアノ椅子に腰掛けていた。

 小春に促されて俺も雫もお互いに目を合わせるが、中々こういうことがなかったからなんだか恥ずかしくなってくる。雫は泣いていたのか、目元が赤いし。


 そして、この場を取り仕切る小春が口を開く。


 「では、これからお二人には仲直りしていただきます」


 そんな前フリで仲直りすることある?

 そんな小春の前フリを聞いて、俺も雫もお互いに目を合わせて首を傾げる。


 「良いですか、お二人共。私が合図をしたらお互いにちゃんと謝ってくださいねっ。ではどうぞっ」

 「ご、ごめんなさい」

 「ごめんなさい……」


 小春に促されるまま、俺と雫はお互いにごめんなさいと言って頭を下げた。


 そしてほぼ同じタイミングで俺と雫は頭を上げたが、お互いにきょとんとしながら見つめ合っていると、この不思議な儀式に耐えきれなくなったらしい雫がプッと笑い出したのだった。


 「あははっ、何これ。こんな仲直りの仕方ある?」

 

 無邪気に笑い出した雫を見て、俺もおかしくなって笑ってしまう。


 「ほんとだな……」


 小春は自信満々に俺と雫の仲直りを取り持つと言っていたが、まさかこんなハチャメチャな、まるで幼い子ども同士を仲直りさせる親や保育士みたいな方法だとは思っていなかった。

 なんだか、六年間も仲違いしていたのがバカバカしくなってくるぐらいだ……。


 「昴さん。雫さん。ちゃんとお互いのことを許してあげましたか?」

 「許すも何も、悪いのは俺だしな……」

 「ううん、悪いのは私の方だよ。お兄ちゃんは私に歩み寄ってくれてたし……」

 「ではお互い様ということですっ。今日からお二人は晴れて仲が良い兄妹ということになるんですから!」


 この世に存在する兄妹は皆仲が良い悪いかで二分されるわけではないと思うが、悪いよりかは良い方が良いに決まっている、当たり前のことだ。


 と、俺も雫も落ち着く暇もないまま小春の変な勢いに押されて仲直りしたということになってしまったのだが──。

 


 「ではっ、せっかく仲直り出来たことですし、ここで仲直りのハグをしましょう!」


 

 と、小春がいきなり言い出したので。


 「なんでだ!?」

 「どうして!?」


 俺も雫も小春にツッコミを入れるも、小春はボケたつもりではないらしく、俺と雫の反応が意外だったのか不思議そうな表情で言う。


 「へ? ですから、せっかく仲直りしたことですし、その証としてハグを……」

 「いや、どうしてハグをしないといけないんだ。別に仲直りしたからってハグをしないといけないわけじゃないだろ」

 「そ、それに、兄妹でそういうのはちょっと……」

 「でも、私と兄は毎日ハグしてましたよ?」

 「「毎日!?」」

 「はい、毎日」


 あれ? 前に小春のお兄さんの写真を見た時はとても優しそうなお兄さんだなぁって思ってたけど、何だか急に怪しくなってきたぞ?

 それともあれか? そういう兄妹の方が多数はなのか? そういう兄妹が身の回りにいなかったから判断材料が足りないのだが。


 「別に家族同士でハグをすることなんて珍しくないでしょう、そんな過剰なスキンシップというわけでもないですし。私はお二人がハグし合うまで、仲直りしたとは認めませんからね!」

 

 小春は鼻息を荒くしながらそう語る。

 もしかしたら、小春の家は欧米的な雰囲気でスキンシップが多い家庭だったのかもしれない。だが我が家のことも思い返してみると、そういえばウチの両親は未だにおしどりバカ夫婦だし、姉貴もスキンシップ激しめだったが……姉貴とは歳も離れているし、大体あの頃は俺も小さかったからというだけで、姉貴が今も生きていたとしてもあの頃と同じようなスキンシップを取っていたとは思えない。


 「って、言われてもなぁ……」

 

 小春が一人ヒートアップする中、困った俺は雫の方を向いたのだが……。


 「……んっ」


 どういうわけか、雫は恥ずかしそうに顔を少し赤めながらも、俺に向かって両手を広げていた。


 「雫?」

 「んっ」

 「いや、んっじゃなくてな」

 「……お兄ちゃんは、やっぱり私のこと許してくれないの?」

 「いやいやいやいや、そういうわけじゃなくてだな」


 まさか雫が乗り気だとは予想だにしておらず俺は一人慌てふためていたが、ふと冷静になって考えてみる。

 俺が姉貴の死を悲しんで未だにそれを引きずっているように、雫も姉貴の死を乗り越えられていないのではないだろうか?


 あんな能天気な両親でもちゃんと相談事には乗ってくれるし、勿論色々と相談したこともあるが……俺と雫との間で問題が解決することはなかった。だが問題が問題だっただけに解決も難しく、現状維持という選択肢を選んだのだった。


 でも、俺も雫もお互いに同じ悲しみを味わっているのだから、わかりあえることもあるはずだ。

 今の雫がそうであるように、俺もあの時突然失ってしまった温もりを求めているのだ……。


 「ごめんな、雫」


 俺は雫の体を抱きしめた。

 雫とハグをするのは何年ぶりだろうか。以前もそんな機会なかったし、多分十年ぶりぐらいになるだろう。


 「ごめんね、お兄ちゃん……」


 こうしていると、姉貴が生きていた頃を思い出す。


 姉貴が死ぬ前から俺と雫は喧嘩することもあったが、その度に姉貴が仲直りさせてくれていた。俺と雫の頭を手でガシッと掴んで、無理矢理頭を下げさせた。姉貴に怒られる方がよっぽど怖いから、俺も雫もお互いにごめんなさいと謝って、そして姉貴を笑顔にさせたのだった。

 思えば、そのハチャメチャさについては姉貴と小春は似ているのかもしれない……。


 「あの……」


 そろそろ良い頃かと思って俺が雫の体を離そうとした時、小春がふと呟いた。


 「私も混ざって良いですか?」

 「いやなんでだよ」

 「何だか良いなぁと思いまして……えいっ」

 「おわっ!?」

 

 小春はいきなり俺と雫に抱きついてきた。雫は妹だからまだあれだが、彼女に抱きつかれると少しドキッとしてしまう。


 「私、お二人が仲直りしてくれてとても嬉しいです」


 半ば勢いとその場のノリに押されたような形だったが、多分真面目にやろうと思ってもお堅い雰囲気でぎこちなくなっていただけだろう。もしかしたら小春はそういうところに気を遣ってくれたのかもしれない。


 「本当に、良かった……」


 小春の顔はよく見えなかったが、その声は涙混じりのものになっていた。

 そうだ。小春にとっては、これが俺が死の月曜日の乗り越えるための、大きな分岐点となるはずなのだから……。



 仲直りの証であるハグをやめると、小春がニコニコしながら雫に言う。


 「雫さん。私のことをお姉ちゃんと呼んでも良いんですよ」

 「あ、それはちょっと……」

 「それはダメなんですか!?」

 「私の中でお姉ちゃんは、お姉ちゃんしかいないので」

 「そんなぁ……」


 小春が雫の義姉になるというのはまだ気が早いと思うが、やはり小春も妹という立場だったからか、雫からすればお姉さん力が物足りなく感じるのかもしれない。まぁお姉さん力ってなんだって話だが。


 とまぁ、色々とあったが無事?俺と雫の仲直りも済んだところで、平和的に終わると思っていたのだが──。



 「せっかく仲直りしたことですし、お二人でピアノを弾かれてはいかがですか?」


 

 それは、小春にとっては何気ない、きっと俺と雫に気を利かせたつもりの言葉だったのだろう。

 だが、俺はまだ小春に伝えていないことがあったのだ。


 「お、俺と雫で?」

 「はい。ほら、連弾というのもありますし」

 

 確かに俺も姉貴と連弾したこともあるし、小さい頃は雫と連弾したこともある。

 だが……雫の方を見ると、彼女は不安げな表情で俺のことを見ていた。


 小春は知らないのだ。

 俺と雫が仲直りしたからといって、全ての問題が解決したわけではないということを。



 だがその時、俺の携帯の着信音が鳴り響いたのだった。湊やボリノからかと思って慌てて携帯の画面を見ると、画面には『鹿島美優』と表示されていた。

 俺は二人に断ってから電話に出る。


 「はい、もしもし」

 『あ、やっほ昴君。久しぶり~』


 俺に電話をかけてきた女性の名は鹿島美優。大手広告会社に勤める二十五歳のOLだ。


 「久しぶりですね。何かあったんですか?」

 『んー? 可愛い弟分にそろそろ彼女が出来たかな~と思って』

 「余計なお世話です」


 丁度最近彼女が出来たばかりだからちょっと怖くもあったが、それはただの冗談のはずだ。


 『まーそれはおいといて。私さ、最近引っ越して一人暮らし始めたんだけど、荷物の整理してたらさ、郁ちゃんの荷物見つけたんだよね』

 「あ、姉貴のですか?」

 

 美優姉さんの口から急に姉貴の名前が出てきて俺は驚いた。俺が姉貴と口に出したから、小春も雫も興味深そうに俺を見守っていた。


 『そーそ。多分ね、郁ちゃんが高校の頃に私に貸してくれてた楽譜なんだけど、返してたつもりがまだ私が持ってたみたいなんだよねー』


 美優姉さんは俺の姉貴の幼馴染で、俺も小さい時から彼女のことを知っている。美優姉さんもピアノを弾いていたから、ウチの家に遊びに来た時はよく弾いていたし、俺もその時によく教えてもらっていた。


 『せっかくだから返したいんだけどさ、時間あるかな? 今日とか大丈夫そ?』

 「はい。今からでも大丈夫ですよ」

 『お、マジ? じゃあ三時に駅で待ち合わせね~。ピッチピチのお姉さんとデートしようぜ!』

 

 と、美優姉さんは一方的にデートの約束をしてきて電話を切った。

 なんか、昔馴染みの人にあまりこういうことは言いたくないが、美優姉さんは歳を取るにつれて俺への絡み方が鬱陶しくなってきて、その対応が面倒くさくなってきたような気がする。

 そして電話が終わると、小春が口を開いた。


 「どなたからだったんですか?」

 「俺の姉貴の幼馴染の鹿島美優って人からだ。姉貴から借りてた楽譜が見つかったから返したいって。今から駅に取りに行くんだけど、小春も来るか?」

 「は、はいっ。是非っ」

 「雫はどうする?」

 「私も、久々に美優お姉ちゃんに会いたい」

 「じゃあ三人で行くか」


 美優姉さんは俺と雫の複雑な関係を知っているから、俺と雫が二人揃ってやって来たらさぞびっくりするだろう。

 そして小春という美少女もやって来たらさらにびっくりする……いや、最早驚きを通り越して妬まれるかもしれない……。



 お読みくださってありがとうございますm(_ _)m

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