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偶然助けた美少女に「貴方に告白するのは十五回目ですっ」と言われても、俺は過去の十四回を知らない  作者: 紐育静
第2章『十六回目の告白』

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第33話 神城小春からのお誘い



 午後の授業はちゃんと受けたが、やはり色々なことが頭をよぎって集中できなかったというのは変わらず、悩むだけ悩んで何も答えを出せないまま放課後を迎えた。

 結論を出せない問題について悩んでも意味がないことはわかっているのに、もうそれしか考えることが出来ないのだ。

 

 そんなに体調が悪いわけではなかったが、こんな状態で生徒会の仕事をしても迷惑をかけてしまうだけだと思って、俺は隣のクラスにいる生徒会長のボリノの元へと向かった。

 すると丁度教室から出てきたボリノと鉢合わせた。


 「あっ、ツバル君。調子はどう?」

 「すまん、今日は仕事中にボーッとして何かの間違いで生徒会の予算全部使い切ってしまいそうだ。この学校がデフォルトを起こしてしまうかもしれない」

 「そんな洒落にならないドジを踏んじゃう人を参加させるわけにはいかないわね……わかったわ。今日と明日とゆっくり休んで、また日曜日よろしくね」

 「すまない、恩に着るよ」


 俺というお目付け役がいないとボリノは無理をしそうで不安だが、今の俺はそれどころではなくなってきてしまっている。

 この後、今後のことについて神城と話さなければならないが、半ばデートのためという形で生徒会の仕事をサボるのは胸が痛む。

 しかし、俺に残されている時間は少ないのだ。限りなく……。


 「そういえばなんだがボリノ。一ついいか?」

 「どうかしたの?」

 「もし死神が訪ねてきて余命宣告されたら、お前はどうする?」


 ボリノは俺の突拍子もない質問を聞いて顔を歪めた。


 「……何それ。どういう質問なのよ」

 「いや、保健室で寝ていたらそんな夢にうなされてしまってな。お前って死神とか倒せそうだし、どうすんのかなと思って」

 「いや、倒せるわけないでしょそんなの」


 俺の夢の中に登場するボリノならきっと倒せそうだと思える。死神が持ってる鎌を奪って返り討ちにしそうだ。

 閑話休題。何か変に勘ぐられないようにするため、あくまで変な夢を見たとう体で話を進めると、ボリノは「そうね」と一言呟いてから言った。


 「私は、きっと自分の好きなように過ごすと思うわ」


 ボリノのそんな答えを聞いて、確かに彼女らしいと納得した。


 「好きなようにって、具体的に何をするんだ?」

 「……それは内緒よ、内緒」


 好きなように、か。

 俺の好きなように……。

 自分がどうするべきか、ではなく、自分が何をしたいか……。


 俺がウジウジと悩んでいる場合ではないのだ。神城が何度もタイムリープを繰り返して頑張ってくれているのだから、俺も頑張らないといけない。

 俺も俺なりに、未来を変える方法を探ろう。



 ボリノと話して少し胸が軽くなった俺は彼女に別れを告げてそのまま帰ろうとしたのだが──廊下で話していた俺とボリノの側で、俺達の方へ携帯のカメラを向けている奴がいた。


 「やはり噂は本当だったんですね、お二人共。まさか本当にお付き合いなさっていたとは……!」


 と、何故か目を輝かせながら俺達のカメラを向けている長い黒髪で編み込みに青いリボンをつけている女子の名は、長沼星良。二年生の後輩で俺やボリノが所属する生徒会の会計だ。

 普段は清楚で大人しい奴だが恋バナとかゴシップネタに目がない奴で、そんな彼女を見てボリノはその携帯を乱暴に奪ってから言う。


 「な、何撮ってんのよ! だからツバル君とはそういうのじゃないって言ってるでしょ!」

 「そんなに強く否定されると余計に怪しいものですがねぇ。津々見先輩はどうなんです?」

 「ん~、参っちゃいましたねぇこれは。彼女はねぇ、これはもう紛うことなき大罪人ですよ。私の心を盗んでいっちゃったんですからねぇ」

 「出ましたよ、津々畑任昴郎先輩!」

 「なんでそんなコアなモノマネしてんのよ。ていうかツバル君もちゃんと否定しなさいよ!」


 まぁ否定しない方がボリノのリアクションを見れて面白そうではある。しかしただ単に俺とボリノが付き合っているという噂が流れるだけならふざけることも出来るのだが、今の俺は神城と付き合っているのだから話は別だ。


 「お二人は私達が帰った後も遅くまで残ってらっしゃることもあるとは聞いてましたが、やはり生徒会室を舞台に色々なさってたんですね……?」

 「あぁ、色々な……」

 「何意味深な反応してんのよ! ちょっと残ってた仕事をツバル君に手伝ってもらってただけだから!」


 ボリノかて彼女持ちの奴にいじられるのは嫌だろうし、俺もそれをネタにするのは神城に対して不誠実だと思う。

 なお、本音はもっとボリノの面白いリアクションを見てみたいのだが……。


 「あと星良ちゃん。ツバル君はちょっと体調崩してるから今日は欠席よ。明後日には清掃活動もあるし」

 「津々見先輩、体調が優れないんですか? せっかく彼女さんが出来たのに勿体ないですよ! いやむしろ彼女が出来たことに浮かれて熱でも出しちゃったんですか?」

 「そんな浮かれてるわけじゃねぇよ。大体、この後会う予定だし……」

 

 そう呟いた瞬間、俺はハッとして思わず自分の口を手で押さえた。本来は神城と放課後デートをする予定だったのだが、俺の体調も優れないし話だけして帰ろうと思っていた。

 だがこの話の流れだと──。


 「つ、つまり津々見先輩は生徒会の仕事をサボって彼女さんとデートに行くということですか!?」

 

 と、長沼のように勘違いしてしまうわけである。


 「いや、元々放課後に会う予定で、向こうも待ってるだろうから一旦会って少し話をしようと思ってただけだ。別にどこかに行こうとか思ってたわけじゃない」

 「いいえ津々見先輩、そう一生懸命になって弁明なさらなくても結構です。わかりますよ、えぇわかりますとも。普段は真面目な優等生である津々見先輩が生徒会の仕事をサボってまで彼女さんとデートがしたくなる、これは素晴らしい青春ではないですか! とうとう津々見先輩にも春が訪れたということですよ! これはもうお祭りですよ! お祭り騒ぎにするしかありません! そーいそいそい!」

 「待て長沼、一人で勝手に盛り上がるな」

 「そーいそいそい!」

 「待て湊、お前も何しれっと混ざってやがる」


 何故か湊までお祭り騒ぎに混ざってくるし、こんな茶番を廊下の真ん中でやってるから同級生達の注目まで集めてしまっている。

 そして、そんな能天気な部下を従える立場にあって気苦労が絶えないボリノは、大きくため息をついているのであった。


 「気にしなくていいわよ、ツバル君。別にサボりだとか思わないし、こういう時だからこそ彼女さんに看病してもらった方が良いんじゃない? 体調悪かったら恋人と一緒にいちゃダメってこともないし」

 「あぁ、すまないな。ありがとうボリノ。じゃあまた、日曜にな」

 「帰りに毒キノコ食べたらダメだからなー」

 「だから食ってねぇつってんだろ!」


 俺はボリノ達に見送られて校門へと向かう。するとやはりリハジョの生徒は目立つからか、昨日ほどではないがちょっとした人だかりが出来ていた。


 「あ、こんにちは昴さん」

 「早かったな。待たせてすまない」

 「いえいえ、私は待つのが好きなので」


 俺が神城と合流すると、校門の側にいた生徒達が急にざわつき出す。なるほど、あの連中は「あれが噂の二股クズか……」とか思っているわけか。

 俺としては若干居心地が悪いぐらいだが、一方で神城は上品そうに笑いながら言う。


 「昴さんって人気者なんですね」

 「いや、連中は面白おかしく思ってるだけだろ。ほら、早く行こう」


 そう言って俺は神城の方に手を伸ばした。神城はきょとんとした表情を浮かべていたが、俺の意図を察してくれたのか嬉しそうに顔を綻ばせて俺の手の上にポンと手を乗せ、そして手を繋いで歩き出したのだった。

 何か周囲がやけに騒がしかった気がするが気のせい気のせい。もうこんなの見せつけることぐらい怖くない。



 そして駅へ向かう途中で、歩道を歩きながら俺は今日のことを神城に説明する。


 「俺、今日は体調が悪くてな。だから体調不良って扱いで生徒会の仕事も休んでるから、あまり大っぴらにデートは出来ないんだ。神城は体調問題ないか?」

 「はい、特には問題ないですよ」

 「なら、二人で少し話をしたいんだ。どこか静かな雰囲気で、二人で落ち着いて話が出来る場所に行きたいんだが……」


 ファミレスはちょっと雰囲気が違うし、小洒落た喫茶店なんか普段行かないため全然わからないし、中々限られているような気がする。

 何か良い場所はないかなぁと考えていると、神城は俺の手をさらにギュッと強く握ってから、何故か顔を紅潮させていた──。


 「つ、つまり……、ら、ラ◯ホですか……?」

 「いやなんでだよ」


 おしとやかな雰囲気漂う清楚なお嬢様っぽい神城の口からラ◯ホという単語が出てきたことにびっくりして思わず冷静にツッコんでしまう。


 そして一人で恥ずかしそうに顔を赤らめている神城を見ていると、なんだかこっちまで恥ずかしくなってきてしまう。そういうことを一度想像してしまうと中々頭の中を切り替えるのが難しい。


 「あ、あのだな、神城。一応確認しておくが、その……別の世界では、行ったことあるのか?」

 「さ、誘ったことはあります……」


 ……。

 やっべ、思わず鼻血出そうになった。おい今すぐその時の映像見せろ。ていうか神城は俺のことを誘っただけということは、別世界の俺は神城の誘いを断ったということか!? よく断れたな!? 一体何があったんだよその時の世界では!?


 「じゃ、じゃあ行ったことはないんだな。流石にそれはやめておこう」


 俺が鋼の精神でそう断ると、神城は俺の手を握ったままズイッと俺の方へ身を寄せてきたので俺は思わず口から心臓が飛び出しそうになったが、神城は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしながらも言ったのだった。


 「こ、今回は、行っても良いかもしれないじゃないですかっ」


 俺が……神城と?

 そ、そういう場所に?


 プルプルと体を震わせる神城の様子を見るに、それは場を和ませるためのジョークなんかではなく、本気だ。以前に一度誘ったというのも嘘でも冗談でも何でもなく、神城は本気で別世界の俺を誘ってくれたのかもしれない。


 この世界においては、俺は神城と付き合い始めて二日目だが、神城にとってはもう二ヶ月もの月日が経っているようなものなのだ。

 それでいて、俺のために十六回もタイムリープを繰り返してくれているのだから、俺に対する想いも相当なものだろう。


 だが……い、今ではない。


 「い、いや……だ、大事な話だから、もうちょっと落ち着いて話が出来る場所がいい」


 俺は日和ったのではない。これは合理的な判断だ。何も準備していないし、神城の顔を見れて体調は少し良くなったがまだ万全ではない。色々と悩んだが、それよりも大事な話があるのだ。

 運命を変えるために、必要かもしれないことを……。


 神城は少し残念そうな表情をしていたが、いやそんな切なそうな目で俺を見ないでくれ。ただでさえまだ頭が痛いのにパンクしてしまいそうだ。

 そして神城は「あっ」と何か思いついたように呟いて、そして笑顔で言ったのだった。


 「では私の家はどうでしょうか?」

 「え?」

 「丁度両親も今日は帰ってこないと思うので、落ち着けると思いますよっ」


 ……神城の家? しかも両親がいない? 彼女の家に二人きり?

 

 そ、そっちの方がさらにドキドキするんだが……!?

 


 お読みくださってありがとうございますm(_ _)m

 場合によっては聖夜にセイヤセイヤする可能性もあったんですかね。投稿のタイミングと話の内容は完全に偶然でしたが……。

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