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偶然助けた美少女に「貴方に告白するのは十五回目ですっ」と言われても、俺は過去の十四回を知らない  作者: 紐育静
第2章『十六回目の告白』

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第31話 絶対に毒キノコは食べていない



 「ねっっっっっっむ……」


 朝、半ばふらつきながら教室まで辿り着くと、俺は自分の席に座ってそのまま机に突っ伏した。

 もう自分がどうやって家から学校までやって来たのかすらわからないぐらい、眠くて自分の頭が動いてくれないのだ。こんな調子では月曜日を迎える前に俺は死んでしまうかもしれない。


 「おぉーっす、昴~」


 そして、机に突っ伏して寝ようとしていた俺の体を、幼馴染でクラスメイトの中野湊がゆさゆさと揺らしてきたのだった。


 「おはよう、湊……すまないが俺は眠いんだ、ちょっと寝かせてくれ」

 「あぁ、リハジョの彼女さんとイチャイチャしてたの?」

 「別にイチャイチャしてたって良いじゃないか彼女なんだから……」


 と、俺は絡んでくる湊をテキトーにあしらって仮眠を取ろうとしたのだが──湊との会話を振り返ってとある疑問が思い浮かんだので、顔を上げて湊に問う。


 「おい湊。どうして俺に彼女がいること知ってるんだ?」

 「へ? だって学校中で噂になってるもん」

 

 さっきはかなり寝ぼけていて全然気にしていなかったが、教室の中を見るとクラスメイト達が俺の方を見ながらヒソヒソ話をしているように見えた。

 噂……噂ってなんだ?


 「ど、どんな噂なんだ?」

 「んっとね、昴がリハジョの可愛い女の子と幟さんと三角関係にあるって噂」

 「は、はあぁっ!?」


 湊の口から放たれた信じられない一言を聞いて、俺はようやく目が覚めた。

 俺と神城が付き合っているという噂が広まるのならまだ良い。何なら自慢したいぐらいだ。だがどうしてその噂にボリノが出てくるんだ……って、アイツが昨日ファミエスで同席してたからか!?


 「実際のとこどうなのさ、昴。幟さんと付き合ってたのに新しい彼女作ったの? 幟さんとは遊びだったってわけ?」

 「違うぞ!? 俺はそもそもボリノとは付き合ってない!」


 そして俺が騒ぎ始めると、今だ今だと言わんばかりに噂好きなクラスメイト達が俺の席へと群がってきた。


 「津々見! お前どうやってリハジョの女の子捕まえたんだ!?」

 「それにどうしてそんなに眠そうなんだ!? 津々見、まさかお前……朝チュンしてたのか!?」

 「ちがぁうっ! 朝方まで電話してただけだ!」

 「つまりそういうプレイ……?」

 「何だよそういうプレイって! 変なこと考えるな、ほらさっさと散りやがれ!」


 何だか話が卑猥な方向へ進んでいきそうだったし朝のHRの時間も近づいていたため、俺は集まってきたクラスメイト達を追い払い、そして俺とボリノが付き合っていたと勘違いしていた連中に頑なにそれは違うと叩き込んでやったのだった。



 ◇◇◇



 授業の内容が全然頭に入ってこない。

 きっと昨日の夜殆ど寝ていないからというのもあるだろうが、やはり三日後に自分の命日が迫っていると考えると落ち着いていられない。

 

 俺は俺なりにその運命を回避する方法がないか考えているが、果たして本当に回避することが可能なのかと弱気にもなってくる。


 神城はもう十五回も俺の死に様を目の当たりにして、それでも俺の命を救おうとタイムリープを繰り返してくれているが、神城に出来るのは過去を変えるということだけで、俺が三日後に死ぬという未来を変えることは出来ないんじゃないだろうか?


 神城はただ過去に戻っているだけなのか、あるいは彼女は並行世界を渡り歩いているのか……そういうタイムリープ系の仕組みの話になってくると複雑になってくるし、何より今は眠くてまともに頭が働かない。



 結果的に寝不足にはなってしまったが、昨日の夜に神城に電話をかけて正解だった。やはり神城が平気でいられるはずがない。


 『大好きです、昴さん……』


 神城が呟いたあの一言だけで、彼女がどれだけ俺のことを想ってくれているのかわかったし、彼女がどれだけ無理をしてきたのかも……いや、わかったつもりになっても、きっと俺の想像以上に彼女は苦労しているはずだ。


 大好きな人が目の前で死んでいく様を何度も見せられるだなんて、神様はなんて残酷なことをするのだろう。

 いっそのこと神城が俺のことを心の底から嫌ってくれたなら、彼女の心は和らぐのではないかとも考えた。かといって神城に酷いことをするのも相応の覚悟がいる。


 一体どうすれば、神城を救うことが出来るのだろう……。


 「おい、津々見!」

 「え?」

 「何ボーッとしてるんだ。ほら、ここの答えは?」


 俺は授業中であることも忘れて考え事ばかりしていた。答えを考えようとしたのだが、酷い眠気からか集中力は皆無で、黒板の文字すらよく見えなくなっていた。


 仕方ない、ボーッとしてましたと正直に言って怒られようと思ったのだが、少し不機嫌そうにしていた先生が急に俺のことをジッと見て、そして心配そうな表情で口を開いた。


 「おい津々見、大丈夫か? かなり顔色悪いぞ、具合悪いのか?」

 

 先生はそう言って俺の席までやって来て、しゃがんで俺の顔を見ていた。

 自分の顔色が悪くなっているだなんて全然思わなかったが、酷い寝不足と精神状態によってそう見えるのかもしれない。


 しかし、俺は三日後に死ぬかもしれないんですなんていうトンチキなことを言うわけにもいかない。相談したところで信じてもらえるかも疑わしい話だ。


 すると、少し離れた席から俺のことを心配そうな面持ちで見ていた湊が急に席を立って叫んだ。


 「先生! 昴は多分空腹のあまり道端に生えていたいかにもヤバそうな毒キノコを食べたんだと思います!」


 紛らわしい見た目の毒キノコならまだしも、どうしていかにもヤバそうな毒キノコを食っちゃったんだよ俺は。


 「そ、そうなのか!?」


 先生も素直に信じるな。俺がいかにもヤバそうな毒キノコを食べそうな生徒だと思ってるのか。


 「僕、昴を保健室に連れていきます! ほら昴、ハーリーアップ!」

 「病人を急かすなよ……」

 「シャットアップ!」

 「俺は尋問でもされるのか……?」

 

 そして、俺は湊に半ば引きずられる形で保健室へと連れて行かれたのであった。



 ◇◇◇



 「いくらお腹空いてたからって、道端に生えてるキノコを食べちゃダメだよ?」

 「だから食ってねぇつってんだろ」


 保健室のベッドに寝かされた俺にそんな冗談を言って湊はケラケラと笑う。能天気な奴だが、友人の異変にすぐ気づいて気を利かせてくれる良い奴だ。

 だが朝は寝ぼけていたし記憶も殆どないから、もしかしたら気が狂った俺がそこら辺に生えているキノコを食べてしまった可能性もあるっちゃあるのだ。


 「じゃあやっぱりリハジョの彼女さんと朝までイチャコラしてたの?」

 「だからそれもしてねぇつってんだろ」


 ……まぁ、バカな奴でもあるが、湊のその能天気な明るさに助けられる。


 「でもなぁ。昴が時間を忘れて彼女さんと朝まで長電話しちゃうだなんて信じられないなぁ。でも昴が初めての彼女相手に舞い上がっちゃったって思うと面白いかも。昴ってそういうのにもサバサバしてそうだったし」

 「へいへい、そういうことにしといてくれ」

 「うん。また授業終わったらお見舞いに来てあげるから。何か飲み物買ってきてあげようか? カレーとハヤシライスとビーフシチューの中から選んでね」

 「どれも飲み物じゃないだろ」


 湊が保健室を出た後、昨日の夜とは打って変わってあまりにも強い睡魔に襲われていたからか、俺はようやく眠ることが出来た……。



 ◇◇◇



 チャイムの音で目を覚ますと、丁度昼休みに入った頃だった。まだ体にだるさもあるし頭もボーッとしているが、さっきよりは多少はマシになったと思う。

 お腹も空いてきたしそこら辺に生えている毒キノコを食べるわけにもいかないので、昼飯でも買いに行こうと思ってベッドから立ち上がろうとした時、保健室の扉が開いた。


 「あら、起きてたのね」


 現れたのは、小さなトートバッグを手に持ったボリノだった。


 「どうしたんだ? 彼女だから見舞いに来てくれたのか?」


 今、この学校中に俺がリハジョの生徒(神城)とボリノと三角関係にあるという噂が流れているためからかってやると、ボリノはニッコリと微笑んで口を開く。


 「ツバル君。身長計と体重計のどっちが好き?」

 「まぁ待て早まるなボリノ。なんだその二択は、そのどちらかを使って一体何をするつもりなんだ? まさかそれらを鈍器にして俺を叩き潰そうという考えではないだろうな」


 身長計はデカいし体重計も結構な重量があるから女子一人で持ち上げるのは結構苦労しそうだが、ボリノなら馬鹿力でなんとかしそうなのが怖い。

 するとボリノはハァと呆れたように溜息をついた。


 「流石に私も病人相手に手荒なことはしないわよ」


 じゃあ俺が病人じゃなかったらそのどちらかで殴られていたということか?


 「で、何の用だ。今日はピアノ弾かないのか? お前のファン達が楽しみにしてるだろうに」

 「ふぁ、ファンって、あの子達は別にそういうのじゃないでしょ。私は時間潰しにピアノ弾いてるだけだし……それよりも、ほら」


 するとボリノはトートバッグの中からオレンジ色の弁当袋を取り出して、そのまま俺の方へ差し出したのだった。


 「はい、これ」

 「いや、これって言われても。それ、お前のお弁当だろ?」

 「食べて良いわよ」

 「は? 食べる? 俺が? ボリノの弁当を?」

 「だ・か・ら! 食べて良いって言ってるの!」


 ボリノは何故か急に怒り出して、俺の膝の上に無理矢理弁当袋を置いた。

 普段の俺の昼食は家でテキトーに作ってきたおにぎりか購買で買った惣菜パンなのだが、ボリノと一緒に昼食を食べたことはあっても、彼女のお弁当のおかずを分けてもらったことは一度もない。


 どういう風の吹き回しで俺がボリノの弁当を食べることになったのかさっぱりわからずにいる中、俺の目の前で怒っているのか照れているのか少し顔を赤くしているボリノが口を開く。


 「ツバル君、お昼はいつもおにぎりとかパンばっかりでしょ。こういう時ぐらいはちゃんとバランス良く栄養取らないと、また具合悪くしちゃうわよ。私はそんな食べる方じゃないし、購買で自分の分は買ってきたから」


 ……マジか、コイツは。


 ボリノの聖母様エピソードに新章追加だ。日頃からまともな昼食も食べずに過ごしている同級生男子が体調を崩した時、ちゃんと栄養取りなさいと自分のお弁当を丸ごと分けてくれる、と。

 そして☆5ボリノがガチャ実装……って、何を考えているのだろう俺は。



 お読みくださってありがとうございますm(_ _)m

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