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男爵令嬢が階段から落ちたら国が滅びた話

作者: 山田 勝
掲載日:2025/11/15

 非常に遺憾ながら、私は故国、グレンシア王国の王宮に少数の武装兵を伴い乱入している。

 情報によると今日はパーティーの日だ。目的は王族一家の捕縛である。


「ヒィ」

「キャア!」


 しかし、誰も止める者はいない。何故なら、グランシア王国の宗主国ザルツ帝国の官吏の服を着ているからだ。


 宗主国、ネットの小説ならば、宗主国の王子様にパーティーで求婚されたざまぁとか。宗主国のお姫様に気に入られて不遇な待遇を解決した令嬢とかいる。


 しかし、そんな生やさしい物ではない。


 泣く子も黙るアジア的宗主国だ。


 支配国の王国のパーティーに訪れるのは王族、いや大臣ですらない。一役人の私である。


 清の役人が属国の王を捕らえる。そんなイメージだ。


 この国の衛兵達は道をあけ。中には頭を垂れる者すらいる。



 ドン!と乱暴にドアを開けてパーティーに乱入して宣言を出した。


「ザルツ帝国外務卿配下、属領管理科のリリーである!グレンシア王、並びに王妃カチナ、その子供達を捕縛する!」


 すると貴族たちは一斉に逃げ出した。巻き添えを食いたくないからだ。

 守れよ・・・と職務に反して言いたくなる。


「な、何だって!」

「あ、あたしは関係ありません!」

「お母様、ザルツ帝国の皇子に会えるの?」



「罪状は何だ!いえ、何でございましょうか・・・」


 王は私を覚えてすらいない。

 私はグレンシア王が王太子だった時代、その婚約者テオドア様付のメイドだったのだ。


 私は命令書を広げ。捕縛された王族の前で読み上げた。


【グレンシア王!並びに王族は不道徳である。よって、退位を命じる!】



 実質的な処刑宣告である。


 王はうなだれ、王妃はまだ私の隣にいる武官に色目を使う。


「まあ、立派な武官様、職位はなんですか?」


 カチナは決して美人ではないが、男好きをする顔をしている。

 さすがに、カチナの色気に自分の人生を天秤にかける者はいない。


 子供達は。


「ねえ、ザルツ帝国にいけるの?」

「僕は王になるんだぞ。縄を解け!」


 事情を知らないようだ。


「ふ、不道徳って何だ!」


 王の叫びに私は過去の扉を開けた。




 ☆☆☆回想


 私のお嬢様、テオドア様は心配になるほど、心根の優しい令嬢であった。


「リリー、私、厳しく言い過ぎたかしら・・・」

「いいえ。大丈夫ですよ。皆、分かっています」


 未来の王妃として、学園で副会長として頑張られていたテオドア様は忙しいはずなのに、使用人を叱ったときは後できちんとフォローを入れる。薔薇の香水がかかった便せんに『あのときは叱ったけども、頼りにしていますわ』とか書かれている。


 そんな気遣いをされるご令嬢であった。


 ある日、優しさを逆手に取る事件が起きた。


「キャア!」

「まあ、大丈夫ですか?」


 テオドア様の近くを通っていた男爵令嬢カチナが突然倒れた。

 階段付近だ。倒れてズルズルとゆっくりと体が階段を下る。


 テオドア様は迷わずにご学友達と協力してカチナを保健室に運んで看病をした。

 同じ学園の生徒、お見舞いまでして入院費の心配までされたのに。


 カチナはあろうことか、お嬢様からイジメられたと殿下に訴えた。


「カチナ嬢を助けたのは後ろめたさからだ!罪を誤魔化すつもりだろう!」

「そ、そんな殿下、母の名に誓って嘘はついておりませんわ。カチナ様が突然倒れたから助けたのですわ」


「ええい。そんな女は我の婚約者に相応しくない!よって婚約破棄である!カチナ嬢に賠償金を払え!」


 お嬢様は婚約を破棄されてザルツ帝国の第八皇子の婚約者と王命が下された。

 八番目の皇子、実質的な平民に降下である。

 旦那様と奥様は憤慨されたが決定は覆らなかった。


 しかし、たったこれだけの事でグレンシア王国は崩壊一歩寸前になった。


 この風聞が広まり。誰も人を助けなくなった。

 助けたら賠償しなければならないからだ。


 ・・・あったな。中国で老婆を助けた青年が逆に訴えられ治療代と賠償金を払わされた事件があった。

 それ以来、道ばたで人が倒れても基本助けないになった。


 更に、私の転生前はヒドい状態になった。


 子供が車に閉じ込められている。熱中症で意識不明だ。鍵は車の中にある。

 車を壊せば子供を助けられる。


 しかし、親は泣き叫ぶだけで・・・・助けない。助けを求めない。

 周りに集まった群衆は親に尋ねる。


『おい!ガラスを割るぞ!いいのか?』


『・・・・・』

 親はだんまりだ。



『自分の子供だろう!どうせ、ガラスを割ったら俺に賠償金を請求する腹つもりだろう!いいぜ!俺が車代弁償してやる!坊やを助けさせろ!』


『いいや、俺たちも出すぜ!』

『ヒドい親だな!』

『皆で集めて出すから子供を助けさせろ!』


 転移前にSNSで流れていた映像だ。同じような事件で消防隊に請求した親のニュースがあったからだ。

 子供の命と車代を天秤にかけて他人に壊させて賠償させる。


 この国も道徳崩壊寸前だ。

 道徳の崩壊は商取引にも影響する。

 約束を守らない。


 冒険者がクエストを完了しても難癖をつけてお金を払わない。

 ドレスを購入しても、パーティーで着たら返品をする。


 グランシア王国の商会だけではなく、他国の商会にも同じ事をした。


 皇帝陛下は、近隣諸国に悪影響を与えると。ついにグランシア王の廃位を決定された。


 その先遣隊が私達、外務卿配下の属領管理官である。



 ・・・・・・・・・・・・・・



 過去を戻すことはできないが未来に影響を与えることは出来る。

 カチナを裁判にかける予定だ。

 元グレンシア王とカチナがテオドア様を貶める茶番劇を行った事を証明する裁判である。


 道徳が欠如した輩のやり方は分かっている。だから私は配下に命じた。


「子供を徹底的に監視!カチナは使用人を使って子供に病気になる薬を飲ませるか。大怪我をさせて裁判でお涙頂戴をする可能性大よ」


「はい、リリー様、すでに、元王とカチナは子供と離して監視しています」

「それでも厳重に警戒」

「はい。了解です」


 やはり、料理番を使って毒を飲ませようとしていた。

 料理は作った者が試食するようにしたら、料理番が血相を変えて白状をした。


「そ、そんな王妃殿下の命令です。私は言われたとおりにしただけです」

「もう、この国に王妃はいない。誰の言われた通りにしたら良いか分かるか?」

「は、はい」



 裁判では、カチナの母は王族男子のお試し女であること。

 性行為を教える未亡人だった。

 カチナと元王は閨で出会った。


 など、赤裸々に語られ。


「そんな、私は陛下に言われたとおりにしただけです!テオドア様がしっかりしなかったからこうなったのですわ!賠償金を請求します」


「却下!」


 カチナは反論にならないことを叫ぶだけだった。


 判決は、


「テオドア様からもらった賠償金に利子つけて返すこと。更に名誉毀損の賠償金を含めて金貨1000枚!並びに謝罪を公式にすることである!」


 金で済んだ。

 学生時代の事件だ。


「まあ、そんなもので良いの?」


 しかし、これだけでは済ませるつもりはない。

「次に実子殺害未遂の裁判を行う」


「ち、違うわ!少し、具合が悪くなるお薬なのよ!」

「ゴホン、この発言は裁判の証拠として採用する」


 判決は子宮を潰され女だけの修道院で生涯幽閉になった。

 元王は全財産を没収されて平民に堕ちた。



 その後、私はグレンシア王城でテオドア様を待つ。


「ザルツ帝国外務卿夫妻ご登場でございます!」


 お嬢様のお相手は外務卿になった。

 お嬢様と皇子殿下のカップルは社交界で大人気だ。それ故の処置だ。

 お嬢様の力量も大きい。


「リリー、ご苦労様」

「お嬢様、遠路はるばるお疲れ様です」

「フフフ、もう、お嬢様という歳ではないわ」


 そう笑われるお嬢様は30を少し超えられているが、可愛らしい令嬢の面影を残しておられる。


「貴方も国へ帰りなさい。旦那様とお子さんが待っているわ」

「はい、そうさせて頂きます」


 この地はお嬢様のお父様がザルツ帝国の辺境伯として統治することに決定した。

 お嬢さんとは家族ぐるみの付き合いだが、息子を何とか良い職務に就けようと思うのは・・・・止めておこう。


 今は息子に旦那と母の背中を見せるだけである。


最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
スカッとしました。 リリーの果敢な行動力が素晴らしいですね。
短編と言う事も有るでしょうが、すぱっとしてて良かったです。
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