ナイト
これはいい機会だ。将来にむけた予行練習にぴったり。その場で変身すると実力バレちゃうし、逃げたのは悪いと思ってるけどちょっとだけ耐えててくれ。
ここなら近くに誰もいないな。よし、あらかじめ作っておいた装備に着替えてっと。これでよし。あとはさっきのところに戻るだけだ。レッツゴー!
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確かこの辺だったような…あ、いた。ってみんな寝てる?どういうことだ?まあ後で起こせばいいか。
「何者だ貴様。」
「こんに…我の名はナイト。この世の悪を討つものだ。」
「ナイト…か。そなた膨大な量の魔力、そして魔力制御。只者ではないな。」
「ほう。我が魔力制御を見抜くか。…まだ鍛錬が足らんな。」
「?まあいい。だがその魔力量では我には到底及ばぬな。」
あれ?魔力制御は見破れても魔力量は見破れないのかな?こいつよりは魔力量多いはずなんだけど。
「所詮はその程度か。」
「ほざけ!」
「闇の火よ、燃え上がれ。
恐怖と破壊をその焰に宿せ。
夜の力を集め、
無限なる破壊をもたらせ!
闇の弾丸よ、貫け!」
「死の火!」
「やはりその程度か。フーッ」
「なッ!息を吹いただけで俺の魔術を打ち消しただと!」
よし!新技息吹き成功!やっぱりこの悪魔弱い個体のようだな。魔術を使わなくてもなんとかなりそうだ。
「崩拳」
「ぐがッ」
「一撃で俺の体制を崩した…だと…」
「やっぱ体術だけで十分だ。」
「崩拳はいいぞ。何せ大した力がなくともある程度の威力を出すことができるからな。からの…」
「五行拳!」
「グァァァァァ!」
格ゲーみたいなコンボ決まったー!でも二発でKOだとチーターになっちゃうな。
というかあの悪魔、岩に激突したな。瀕死だ。やっぱり弱い悪魔だったか。それとも悪魔という種族自体が弱いのか?
まあそういうことはあとで考えればいい。今は仲間を起こすのが先だ。もしみんなが寝ている原因がこの悪魔の仕業だったらもうそろそろ夢から覚めてもおかしくないんだけど。
「ん?ここは…目覚めたのか…」
眠っていた仲間達が目を覚ました。やはりあの悪魔の仕業か。さっきまではあの悪魔が何らかの精神操作系の魔術をかけていて、あの悪魔が死ぬことによって同じ組の仲間が死ぬ可能性もあったから殺せなかった。だがもう殺せる。とどめを刺そう。
…でももったいないなー。ここで殺すには惜しい。…よし、俺の訓練相手にしよう。この悪魔に身体強化、魔術強化の魔道具をつけさせれば少しは強くなるはずだ。ひとまず持って帰って学園の近くに練習場を探そう。
侵食魔術で、こいつの精神を一回殺して、傀儡魔術で僕にする。・・・これでよし。いい練習相手の誕生だ。
「あ、あんたは一体…?」
今は戦利品を集めてる最中でしょうが。話を聞くにしても、もうちょっといいタイミングあるでしょきっと。
「我の名はナイト。この世の悪を討つものだ。」
「ナイト…聞いたことがない。」
「そうだろう。我を見たものは皆亡き者にしている。」
まあ、それは嘘でこれがナイトとしての初ミッションなんですけど。
「ま、まさか俺らも殺すのか?」
「いや、お前らは殺さぬ。」
「なぜ?」
お前らを殺したらポイントがパーになるからだよッ。と言いかけた。まだ口が軽いという短所は克服できていないな。でもそしたらなんて言えばいいんだ?ここはやっぱ王道の子供は殺したくないという善人っぽいのにしておくか。
「子供を殺したくはない。もう行かなければ。では、さらばだ。
「ま、待って!まだ聞きたいことが!」
これ以上質問されるといつかボロを出しそうだ。離れよう。それにしても目撃者が子供だけでよかったな。まあ分かってはいたが。もし大人があの場にいたらさっきの言い訳は通用しなかったからな。
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「ただいまー。」
「あら。途中で逃げ出した分際でのこのこと帰ってくるなんていい度胸じゃない。」
まあ怒ってますよねー。むしろ怒ってない方が怖いよ。さて、どう言い訳しようか。
「ご、ごめん。僕は昔から肝心なところでビビって体が固まっちゃうんだ。みんなの足手纏いになると思ったから…」
流石にこの言い訳はきついか。
「なんだ、そういうことだったのねー。事前にみんなに言ってくれればよかったのに。」
「それで気を遣われるのは嫌だったから。魔術学校の生徒として。」
「あなたもあなたなりの誇りを待っていたのね。ごめんなさい。勘違いしちゃってたみたいだわ。」
「ぜ、全然いいよ〜。」
なんか通ったー!まあ年齢的には小学生だしな。この会話が成り立つ時点で相当すごいことなのか。
「まあ今日は色々あったけど、みんな明日に備えて寝よう。おやすみー。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
「お、おやすみ。」
こうして課外試験一日目が終わった。