課外試験
スタート地点までの移動時間で組のメンバーと、色々話し合った。
1、自己紹介
2、各自の魔術師の階級
3、階級に基づいた各自の役割分担
まず自己紹介、男三人女二人。まずベクト。使用魔術は火魔術。俺を誘ってくれた人だ。どうやら元々孤児だったらしい。つまり貴族のコネも使わず、実力だけでこの学校に入ったということだ。実力で言えば、上級魔術師のかなり上位に位置するくらいだろう。
次にゼナリオ。使用魔術は同じく火魔術。おっとりした性格だ。この人、異様に魔力量が多いんだよな〜。もうちょっとちゃんと魔力制御ができたら超級も夢ではないのかと思ってしまうほどだ。
そしてシレア。使用魔術は水魔術。この人はこの組のリーダー格となる人だろう。特に回復魔術が得意と言っていた。
続いてカイリス。使用魔術は風魔術。この子は結構な有力貴族の子供らしい。後々のことも考えて交友関係を築いておくか。おおっと、話が脱線してしまった。まあこんなところだ。
次に階級について、ベクトは資格を取ってないらしい。そうか、とっていないのか。まあ自分は上級くらいの実力はあると言っていた。
ゼナリオは中級魔術師の資格。まじか、中級。やっぱ魔力制御の影響だな。
シレアは上級魔術師の資格。カイリスは中級魔術師の資格をそれぞれ持っているようだった。ちなみに俺は資格は取っていないが中級魔術師程度と言っておいた。
最後に役割分担だが、ベクトとゼナリオが前衛。残りのメンバーはシレア中心として後衛でサポートをするということになった。
「これより、課外試験を開始する。試験前に注意点を再確認する。森にいる魔物は中級魔術師程度、強いやつで上級魔術師程度だ。魔物を一体倒すごとに一ポイントを獲得できる。集団で協力すれば問題ないとは思うが、万が一脱落者が出てしまった場合、その時点でその組は失格とし、ポイントを全て失う。食料や水は現地調達。結界により外には出られない。2日後に学園側が結界を解除し、花火を打ち上げる。それと同時に試験終了だ。正午には鐘がなる。それと同時にスタートしてくれ。」
緊張するな。集団で協力とか。入学してから四日でやることとは到底思えないが。
ゴーンッ
スタートだ。まずは組のメンバーたちの体力がどれくらいなのかを見た方がいいな。体力が低下している状態での戦闘はなるべく避けたい。
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恐るべし、子供の体力!あれから結構時間が経ったがずっと走っていて疲れないのか?この子達。魔力で多少のカバーができるとはいえこの時間を全力ダッシュ並で動くとは。
魔力で多少のカバーができるというのはどういうことかというと、例えば三割のペースで走った場合、残りの七割を魔力で補うことで全速で走れるということだ。速いペースで走れば走るほど魔力の消耗は少ない。ただ、風魔術は例外だ。風系統の魔術には風を前に出すことで逆風を相殺する魔法がある。魔力と体力、どちらも減りが遅い。
俺たちの組はもうすでに32体魔物を倒した。まだ強い方の魔物には会っていないが、配点は何故か同じだし、ラッキーと言うべきだろう。
「ここら辺で一回休憩をとりましょう。」
ジャストタイミング。ナイスシレア。さすが我らがリーダーだ。日が暮れる前に水辺を探したいな。一応言っておくか。
「ひ、日が暮れる前に水辺を探さない?」
「そうね、この休憩が終わったら水辺を探しましょうか。」
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ということで2時間ほどの休憩を挟んで今は水辺を捜索中だ。風魔術の飛行魔術を使えば簡単に見つかると思うが、カイリスはまだ習得できていないらしい。あれ超級魔術だもんな〜。当たり前か。
日暮まであと1時間を切っている。もうそろそろ水辺を見つけないとまずい。
「あ!あそこに湖があるわ。」
見つかったか。よかった〜。
「今日の夜はここで明かしましょう。」
さっきの休憩時間に寝床を見つけた時の役割分担を決めておいた。俺は確か簡易テント的なやつを作る係だったな。
今日は結局強い魔物には会えなかった。明日は会えるかな。会わないほうがいいのだが、やっぱこういう時は好奇心が勝つ。
「みんな準備終わった?」
「おう」
「こっちも終わった。」
準備が終わったようだ。あとは寝るだけか。
「ん?何かいないか?」
「どこだ?」
「ほら、湖の上。」
「んー?なんだあれ。」
「こ、こっちに来てないか?」
「敵襲ッー!」
みんな戦闘体制に入る。その間に魔物がもう上陸していた。早い。
「弱い。」
「は?」
「ここには強き者はいないのか?死にたくないなら道を開けろ。」
それと同時に魔物はもの凄まじい殺気を放った。仲間が一瞬たじろぐ。
「ど、どうする?」
「どうせ道を開けても殺されるんだ。一矢報いるしかないわ。」
「ほう、なぜそう思う?」
「だってあなた、悪魔でしょ?悪魔はそんな優しくないわ。」
え?悪魔?そんなやついたんだ。魔物上位種的な?
「よく分かったな。まあ分かっても関係ないが。」
「一つ、聞いてもいいかしら。」
「なんだ?」
「あなた、試験の説明で出てきた強い魔物?」
「さあな。でも少なくとも俺はさっき結界を破って入ってきた。違うと思うが?」
「結界を、破った?」
あの結界を破るとは。いまいる奴らの中では一番強いな。(俺を除いて)
あ、いいこと思いついた。
「悪いけど僕は逃げるよ。こんなところで死にたくないからね。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいワード君!」
「早速仲間割れかね?感心せんな。」
「くッ」
戦いの火蓋が切られようとしていた。