学園生活
あれから色々考えた。実力を隠すとはいえ、2割程度の力しか出せないのは不便だな。本当はフルパワーでいきたいところだがこの学校に悪徳貴族の息子がいても不自然ではないだろう。均衡者なのがバレても困る。
ならここにいなければいいのでは?とも考えたがこの学校を卒業することは後々の人生において重要なステータスになるだろう。将来、表の顔は一般人として過ごすつもりだしな。
かといって力を最大限発揮できないのは色々と不便だ。そこで俺は表の顔と裏の顔を作ることにした。バレずに隠し通すことは、将来に向けた実践訓練にもなるからな。
まあ具体的にどうするのかというと、将来に向けての訓練として普段は表の顔で生活し、何か事件が起こったら裏の顔で助けるということだ。
と、色々と考えていたら一限目の授業が始まりそうだ。そういえば、どうやらここの教師は全員超級以上の魔術師らしい。
以前、超級魔術師がどれくらいすごいのか教師に聞いたことがある。そうしたら初級魔術師から神級魔術師まで、事細かに説明してもらえた。
まず初級魔術師、町を歩いていればどこにでもいるレベルだそうだ。次に中級魔術師、一般的に冒険者に多いらしい。非公式の兵として雇われるくらいの実力とか。そして上級魔術師、国に正式に兵として雇われるほどらしい。続いて超級魔術師、これになるだけで魔法職ならほぼ何にでも就けるという。王宮魔術師や、教師が主に一般的だ。最後に特級魔術師、これは国に1人か2人いるレベル。魔術師団の隊長や、場合によっては実力だけで貴族にまでなれてしまうというほど。こりゃ見つかったらやばそうだ。おおっと忘れてた。これが本当の最後、神級魔術師。これは神話などに登場する神ほどの実力をもつらしい。地形を自由自在に操ったりとか。特に、超級と特級の間は人数でもわかる通り結構実力差があるらしい。俺は実力的には特級上位レベルだと思う。
だが、魔術師の資格を得たり、階級を上げるためには魔術師協会というところに行き、試験を受ける必要がある。今の俺は、特級相当の実力を持ったなんの資格もないただの一般人ってわけだ。まあそんなところだ。
さーて、授業がんばるぞ。
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2日目が終わった。内容はかなり簡単だった。それぞれの使える元素の魔術に分かれて別々の教室に移動、そこでその元素の魔術を教える。という流れだった。二元素を使える者もいたが、それを言った瞬間にすごく生徒が寄ってきていたので俺はモブになりきるために水魔術しか使えないことにしておいた。授業の内容は上級魔術や応用方法だった。本で読んだものばかりだ。
魔術の実践訓練もあった。見た感じ、一番すごいやつでも上級上位レベルだった。でも初級以下はいなかったな。
それにしても、この歳でみんな中級以上とは…正直驚いた。結構ハイレベル。俺も中級下位レベルの実力くらいあると思わせておこう。弱すぎると逆に目立つしな。
あと、明日は課外試験らしい。たまたま忘れ物を取りに行く途中、職員室を通りかかった時に聞いてしまった。聞かないほうが良かったか。それにしても事前説明がないとは。どんな試験なのだろうか。楽しみだな。今日は早めに寝とくかな。
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さて、今日は課外試験当日だが、どんなことをするのだろうか。
「今からお前たちに今日、明日の授業、いや試験について説明する。
今日から一泊二日の課外試験を受けてもらう。まず五人一組のグループを計九組作る。そして、学園の近くの森の各所に、作った九組のグループを別々に配置し、正午になったと同時にスタートする。 森にいる魔物は中級魔術師程度、強いやつは上級魔術師程度だ。一体倒すごとに一ポイントを獲得できる。この学園でのポイントは重要だ。後々成績に反映されるからな。だが、一人でも同じグループの仲間が欠けてしまった場合、その時点でそのグループは失格だ。ポイントを全て失う。学園側から食料や道具などは支給されない。森の外周には結界を設置した。逃げることは不可能だ。二日後に学園側が結界を解除し、花火を打ち上げる。それと同時に試験は終了。説明は以上だ。」
それにしても、人が死ぬような試験を突然発表するなんて結構ハードだな。もうちょっと優しいものかと。
さて、どうしようか。みんなは案の定混乱状態だし、一緒の組になってくれる人いるかな?特に今回の試験は、同じグループの仲間が一人でも欠けてしまえば即失格。ポイントを全て失う。人選びは慎重になるだろう。
まあでも俺は、特に自分から話しかけに行く勇気がないので、しばらく椅子に座って周りのモブたちみたいにしておくか。
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「一緒の組になってくれないか?一人足りないのでな。」
あの説明から十分ほど経って声をかけられた。誘われたのか?ということは今まだ誘われていない連中より、俺の方が使えると判断してくれたということか?
「ちょっとベクト!ごめんねー、ベクトはこんな誘い方しかできないの。まあともかく、私たちのグループにはいってくれないかな?」
「う、うん」
こういう判断をされたということは、まだ誘われていない連中よりも役に立たねば!そう思ったのであった。