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均衡者

気づいたら赤ん坊になっていた。これは走馬灯かな?と、思っているとどうやら違うようだ。まさか本当に転生したのか?そう思って周りを見てみたところ、壁に書いてある文字が知らない文字だった。英語でもアラビア語でもない。まあ今は思うように動けないし、しばらく待ちますかね。


ここに来てから三年、とりあえず歩けるようになってから、家の中を歩き回ったところ次のことがわかった。

1、ここは魔力という概念があること。

2、この世界に生まれてくる人の中に稀に《スキル》を持って生まれてくる存在がいるということ。

3、魔力が中心で世界が回っているため、前世の世界よりも文明の発展が遅れていること。

4、生まれはドルディア家という一般的な農業の家系だということ。

まあこんなとこだろう。文字は赤ん坊だからか覚えるのが早く、比較的覚えられた。他の言語とかもあるのだろうか。あったら覚えたいな。後々役に立つかもだし。

ちなみに俺の能力は均衡者プロテクターというらしい。

ぶっちゃけ何か分からんが、2歳の頃その能力が判明した瞬間、両親の顔が青ざめ、


「知られたら大変なことになる。絶対に口外するなよ。」


というかんじのことを言っていたような気がする。何かまずい能力であることは確かだ。俺は平凡に暮らしたいんだが。

という感じでここに来てから今までのことは以上。今日からは魔術の訓練をしていこうと思う。どうやら魔力は増えるらしい。2歳半くらいのころに一度魔力を使ってみたことがある。その時は扇風機の弱くらいの風を起こすのが限界だったが、翌日もう一度試すと、扇風機の強くらいの風を起こすくらいのことができるようになっていた。こんな簡単に成長していくのだろうか。このままいけば台風くらい作れるようになるぞ、と思って今の今まで訓練を続けてきた。だが、これ以上の出力を出すと家を壊してしまいそうなので今は別の魔術の訓練をしている。

ズバリ水だ。最近は村に雨が降らず、不作が続いているようなので、水の魔術を極めれば雨くらい降らせることができるのではないかと思ったからである。

やるぞー水の魔術。魔力総量も結構多くなってきたし、今日中に水大砲くらいまでならできると思う。

ただ魔力切れを起こすと死にそうになるので、ならない程度にね。

そしてそれを繰り返しているうちに、3日目には雨を降らせることができるようになった。できればこの場で使ってしまいたいが、やめておこう。能力バレたら怖いし。

ということで、誰にも見つからない山の奥にやってきた。ここなら雨を作る魔術を使ってもバレないだろう。

魔力を水に変換するイメージをし、それを空に伝える。


「水のウォーターストーム!」


成功だ。しかしこんなにうまくいくとは。案外イージーなのか?この世界の魔術。こんな簡単に魔力総量が増えるなら魔術の練習は毎日欠かさずコツコツやっていこう。


——————————————————


あれから四年、俺は七歳になった。相変わらず能力はバレていない。毎日コツコツ訓練してるおかげで、魔力総量は増え続けている。


「ワードは魔術を鍛えます!」

「いや、剣術だね」


そう言い争っているのは俺の父と母、ザイクとナディアだ。

どうやら魔術を鍛えるか、剣術を鍛えるかは能力が判明した時点で決まるが、俺の能力は例外らしい。

それで最近になって言い争いを始めた。どうやらお互い譲ってくれると思っていたそうだ。


「ワードはどうなの?」

「確かに。ワードはどうなんだ?」


急に話を振られた。まあいつかそうなるとは思っていたが。俺の答えは決まっている。そう、魔術だ。


「やっぱり僕は魔術の方がいいかなー」

「やっぱりそうよねー!諦めてください、ザイク。」

「わかったよ。でも週に一回くらいは剣術でもいいかな?」

「まあそれくらいなら、ねえ。」


え、ちょっと勝手に話進めないでもらっても?まあ別にいいか、たまには体を動かす訓練もしたいしな。

ということでこれからは週四で魔術、週一で剣術を習うことになった。意外とハードだな。おい。

といっても母親から教わる魔術はほぼなく、母親が借りてきた魔術関連の本を読んでそれを実践する、というのが魔術の訓練だ。そういう本を読んでいてわかったことがある。魔術にもランクがあり、初級、中級、上級、超級、特級、神級となっている。俺が今使える魔術は水、火、風、地、闇の五元素魔術+治癒魔術という感じだ。どうやら一番得意な水元素の魔術、「水の三稜鏡アクアプリズム」はどうやら特級相当らしい。オリジナルの特級魔術を作るのは特級魔法使いでもできないらしく、褒められた。うへへ。

次に剣術だ。剣術は昔少し護身術と剣道を習っていたことがあり、意外と簡単だ。何せこの世界は剣と魔術に頼りっぱなしなため、体術などはあまり発展していない。まあ剣の腕はいまだにザイクには遠く及ばないが、体術も使って良ければ、間合い管理のしっかりできる俺が勝つ。何せ元々それなりに間合い管理の意識はしていたが、能力がそれをさらに引き出してくれる。万能だ。

この世界では学校というものは七歳からいくものであるらしく、剣術学校と魔術学校に分けられていて、全寮制らしい。

俺は魔術学校に入ることになった。そして入学式が終わり、翌日からの学校に備えて早めに寝ようとすると、


「ワード、少し話がある。」


ザイクから呼び出された。俺、入学式でなんかやらかしたかな?


「実力は隠しておいてほしい。」

「どうしてですか?父さん。実力を隠さなければ優秀な成績で学校を卒業すればそれなりの収入だって得られます。悪い点がありませんよ?」


俺はわからなかった。実力を隠さない方がさまざまな利点があるからだ。多少デメリットがあったとしても、このメリットを超えるデメリットがあるのか?そう思っていると、


「お前の能力は少し特殊でな。本来なら指名手配されてもおかしくない能力なんだ。」

「どういうことです?」


どういうことだ。俺はさっぱりわからないが。確かにこの能力は万能だ。だが、別にチートってほどでもない。

俺がこの能力の真の力を知らないという可能性もある。だが、今までやってきたことの中ではチート級の力は発揮しなかったし、別の使い道があるのか?


「実はお前の能力“均衡者”は世界が腐ってしまった時、それを直し、均衡を保つために生まれた能力なんだ。

だからそれを嫌がる上級貴族たちが均衡者が現れると排除しようとしたがるんだ。均衡者の力は、魔力総量、魔術、剣術、体術の底上げ、さらに大幅な成長速度上昇だ。この年齢で特級魔術を使えたらすぐに均衡者だとばれて、暗殺されてしまうだろう。だから実力を隠して暮らせ。」

「わかりました。」


こういうのは厨二心がくすぐられるな。案外ありなのか。世界を裏から支える存在も。そう思ったのであった。



———————————————————————————————————————



2025年6月27日(金) 修正しました。

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