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非日常の始まり


現在2045年の日本では科学技術が発展し、様々な物がバーチャルリアリティとして実現していた。


完全フルダイブ型VRMMORPGのゲーム、バーチャル空間内でのVtuberとの交流、旅行完全シュミレーションなど様々なVR技術を使ったシステムが海を超え世界中で流行していた。


その中で現在最も人気を有していたコンテンツが、完全フルダイブ型TRPG、通称「VRPG」と呼ばれているコンテンツであった。


「VRPG」がどのようなゲームかを解説すると、従来の「TRPG」をAIやVR技術を利用しバーチャル空間内でシナリオを再現する。


そのシナリオを「VRPG」の界隈では【ゲームメモリー】という。


そのメモリー内のシナリオにプレイヤーがフルダイブしてゲームをする。というものだ。


そもそもTRPGとは何?という人もいるだろう。

TRPGとは通称テーブルトークRPG、あるいはテーブルトップ・ロールプレイング・ゲームと呼ばれているゲームである。


テーブルゲームのジャンルのひとつで、ゲーム機などのコンピュータを使わずに、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を用いて、人間同士の会話とルールブックに記載されたルールに従って遊ぶ“対話型”のロールプレイングゲームを指す言葉とされている。


そして、日本では最初にオンラインでTRPGをするようになり、徐々に技術が進化していった結果「バーチャルリアリティ」別名VRを利用したRPGが流行したというわけだ。


そこで起こった最低最悪の事件を僕こと、【石井いしい 和明かずあき】がここに綴ろうと思う。


その事件のきっかけは忘れもしない。ある夏の日の学校の放課後が始まりだった…



「ねえ、みんな!見てみてよ。面白そうなVRPGが最近出来たゲーム屋に売ってたんだ!!」


僕は前日の放課後にいつの間にか出来ていたゲーム屋さんに心を奪われ、そこで奇妙なVRPGのゲームメモリーを買っていた。


そこで学校の科学技術研究部という名の部費でゲームしかしない部活メンバー達とプレイしたいと思い、今日の放課後に皆を集めたのだった。


「なんだ和明、また部費を使ってゲームメモリーを買ってきたのか?」


そう返事をしたのは、部活の部長にして僕の悪友でもある

赤坂あかさか 雄治ゆうじ】だった。


「うん。一本しか内蔵されてない代わりに推定参加人数∞

新規探索者のみ、推奨技能不明とかいう意味不明すぎるシナリオだったからつい」


「おぉ、今回はクトゥルフ神話TRPGか!」


クトゥルフ神話TRPGとは何かを簡潔に説明すると、アメリカのゲーム会社であるケイオシアム社が1981年に製作したテーブルトークRPG。クトゥルフ神話の世界観を体験するホラー・ジャンルの作品である。


PLプレイヤーが自分の好みのPCプレイヤーキャラを作り、攻撃力や体力などのステータスをサイコロで決める。その後、ステータスに合わせた職業に就き、技能と呼ばれるゲーム内で、そのキャラが出来ることをPLが設定する。職業によって取れる技能が異なる物もあるため、キャラ作りの命とも言える。


そうして出来たPCを使用し、そのキャラになりきってゲームのシナリオをクリアしていくゲームだ。


「赤坂さんは確かクトゥルフ神話TRPGがすきなんでしたっけ?」


雄治に反応したのは、この部活メンバーの中の数少ない花である【雨崎あめさき うた】さんだ。


「あぁ。俺はやっぱりTRPGといったらクトゥルフだと思ってる!やっぱりホラー、胸熱バトル、感動があり、そこに推理力と閃き力が生きるゲームはクトゥルフ神話TRPGぐらいだからな!!」


「流石雄治!もうクトゥルフ神話TRPGのメモリーだって気付いたんだね!!」


「新規探索者や推奨技能なんてワードはクトゥルフ神話TRPGぐらいしか使わないからな」


僕ら3人で談笑している所にもう3人部活メンバーが来た。


「おお〜結構揃っているようだね!」


爽やかで中性的な声で僕らに声をかけてきたのは部活メンバーの中で一番の常識人、【一ノいちのせ かおる】だった。見た目が美少年で声が中性的なので一部のお姉様方からモテまくっているそうだ。


「…石井がまた変なメモリーを買っている」


一ノ瀬とは反対に小声で部屋に入ってきたこの男は、

春海はるみ 幸太こうた】。普段は僕と同じぐらい馬鹿なんだけど、とある分野では一番頭がいいんだよね。


「あ〜!和明、また面白そうなメモリー買ってきたんだね!!僕、すごい楽しみ!!」


このボクっ娘で元気の塊みたいな女の子は【大城おおしろ 夏希なつき】。こいつとは何か一緒にいると元気になれるし、なんというか最高の友達だ。


「あれ雄治?片霧さんは?」


「ああ、響子か。あいつは何か生徒会の活動があるとかで合流はかなり遅れるようだ。」


「やっぱり生徒会長は大変だねぇ…」


雄治の幼馴染である【片霧かたぎり 響子きょうこ】さんはこの桜月高校の生徒会長をしている。しっかり者でとにかく優しい人だ。幼馴染の雄治が羨ましいよ。


「石井君、よければこのメンバーでそのゲームをやりませんか?他の子は合流まで時間がかかるようですし。」


「そうだね雨崎さん!それじゃあ皆にこのゲームの概要を説明するね。」


そこで僕は部室にあるプロジェクターにゲームメモリーの概要と説明欄を投影する。


「ここにも書いてあるけど、このゲームはクトゥルフ神話TRPGなんだ。」


「まじで楽しみすぎるぜ!」


「…雄治の大好物ってことか。」


雄治が食い気味に反応し、幸太はシノビガミと呼ばれるTRPGが好きな為、少々反応が薄かった。ただ、このメンバー全員はどのTRPGも大好きな為、種類で喧嘩などは起きないのが幸いだ。


「そこで普通のクトゥルフ神話TRPGとは違う点がいくらかあるんだ。」


「何々?!超気になるよ和明!!」


「まずはこのシナリオは一本だけって最初に言ったけど、厳密には一つのシナリオがいくつかに別れて収録されているらしい。」


「つまりは第一章、第二章…とシナリオが続いてって最終章をクリアしたら一つの作品として完結するってことか?」


「流石雄治!飲み込みが早いね!!」


「まあな、数こそは少ないがそういう作品も一応あるからな。」


雄治はクトゥルフ神話のシナリオは動画を見たり、オンラインセッションに参加したりなどしているため知識が豊富なようだ。


「では和明よ。クリティカルやファンブルなどの成長判定は各章ごとに振れるということか?」


「一ノ瀬の言う通り、成長判定は各章が終わることにダイスを振れるようだよ。」


「良かった。こういう系のシナリオは同じ探索者を連続で使用するだろうから、毎回成長出来るのはありがたい。」


クトゥルフ神話TRPGには成長判定という概念がある。


成長判定とは、そのシナリオをクリアしたときに一部の条件を満たした技能が成長するという報酬である。


技能はPLが最初に運で決まったINT(賢さ)とEDU(教養)の数値で覚えられる上限が決まる。


また技能は職業と興味で得られる二種類の技能がある。


クトゥルフ神話TRPGでは職業に就くことが必須であり、その職業に合った技能をINTの数値を参考に取得&成功値の設定ができる。


例として、職業を警察官にすると柔道などの戦闘技能や、目星と呼ばれる探索技能が職業ポイントを使用し技能の成功値を割り振れる。


また興味ポイントはそのキャラにとって不可能と思われない物であったら好きな技能の取得&成功値を割り振れる。


クトゥルフ神話TRPGはサイコロで行動を基本的に決める。


基本は1~100の値をサイコロで決め、自分が割り振った値以内なら成功。値を超えた場合は失敗となる。


例えばパンチの成功値を75に設定した場合、パンチをしたいときにゲームマスターにパンチの宣言をする。


そこで許可が下りた場合サイコロを振り75以下が出た場合成功。76以上が出たら失敗である。


一ノ瀬が発言した、【クリティカル】と【ファンブル】は基本的に1〜5で【クリティカル】95~100で【ファンブル】と呼ばれる。クリティカルでは普段より良いことが。ファンブルでは普段より悪いことが起きる。


またどちらかが発生した場合、基本的にシナリオ終了後に【成長判定】をすることができ、クリティカルかファンブルのどちらかが発生した技能を判定し、失敗した場合のみゲームマスターが決めた値の分技能値を増やすことが出来る。


馬鹿な僕は覚えるのに3ヶ月もかかったんだよな。

あの頃はよく雄治に教えてもらったっけ…。


「なるほどな。それは中々に美味しい話だな。」


「美味しいってどういう意味さ?」


僕は雄治が何を考えているのかが分からなかった。

そりゃあ成長判定は美味しいルールだけど、特別な物でも無いからわざわざ美味しいなんて表現しなくても良いと思うし。


「和明にも後で分かるさ。まあ、クトゥルフ神話TRPGってのは工夫すればするほど楽しめるってことだ。」


「ふ〜ん。僕はあんまりそういうのは分からないから、後々を楽しみにしてるよ。」


僕は戦闘とか逃げるとか頭を使わない行動は得意なんだけど、謎解きとかそういうリアルで賢さを使う行動は苦手なんだよね。


「その他に質問はある?」


「俺は特に無いな。」


「私も特にありません。和明君たちが分かりやすく説明してくれたおかげです。」


雨崎さんがそう答えてくれると、僕の頬が緩んでしまった。やっぱり人に褒められるってのは気持ちがいいね。


「自分も特に質問することは無いかな。もう成長判定の話は聞けたしね」


「…右に同じく」


「う~ん、僕はそういうのよくわかんないから特に無し!困ったら皆に教えてもらうよ!!」


「よし!それじゃあ皆、ゲームを起動するよ!!」


「「「おう!!(はい!!)」」」


「アウェイクン!!」


僕がそう宣言すると視界が暗転し、気がつけば何もない白い空間に皆が居た。





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