第1章 黒色の指輪
魔法実技試験
「指輪」それは単なる飾りのことではない。
大いなる力を秘めた道具、
それぞれ指輪には階級がある「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」そして世界に10個しかない指輪を
黒色の指輪と呼ぶ。
主人公はアルス•フランメ•メークリヒカイト
王立魔法学園に通う一年生
魔法も戦闘もいまいちだった主人公がある日「黒い指輪」と出会い、運命が動き出す。
これは落ちこぼれの主人公が「指輪」の力を手にして最強の魔法使いになる物語。
「おい、アルス次はお前だぞ」
「ああ……わかってる、いくよ」
思わず溜息をしそうになったが、ぐっとこらえて僕は腹を括った。
的に向かって魔法を放つ、魔法使いになるものなら誰だって出来る
「火の矢よ」
でたのは今にも消えそうな弱い火だった、無論そんな火は的に当たる前に消えてしまった……
そうアルスは火属性の魔法が五属性の中で最も苦手のである。
「アハハハハハッ!」
「くくくっ、さすがアルスだわ〜」
周囲から笑い声が聞こえてくる。いつものことだと無理やり自分を納得させて、周りの嘲笑に我慢して列に戻る。すると肩を叩かれて横を見ると親友のテルンが居た。
「落ち込むなって、なあ」
優しい口調で僕を励ましてくれた。しかし、今は彼の優しさが僕にとっては苦しくて気丈に振る舞った。
「ありがとう。けど大丈夫、気にしてないから」
「そうか、ならいいけどよ。ほら、見ようぜヴィント家の令嬢のお力ってやつを」
ヴィント家はこの王国の中で絶大な力を持つ六大貴族の一つだ。中でもヴィント家は風属性の魔法を得意としている。代々優秀な魔法使いを輩出してきた。
「彼女がアウラ・ヴィントか……」
今魔法を放とうとしている少女は人形のような端正な顔立ちをしていて、腰まで真っ直ぐ伸びる銀髪は宝石のように輝いていて。的を射抜くように見る瞳はまるで翠玉のような綺麗な緑色の瞳だった。
「火の矢よ」
放たれた火は本来の魔法の威力を遥かに超えていた。的を焼き切り、学園の訓練場の壁に大穴を開けた。焼かれた壁は遠くからでも分かるほどの高温の熱を帯びていた。
魔法の威力とその才能に先程までアルスの魔法を馬鹿にしていた人たちも息を呑んで黙り込んでしまった。その沈黙をはっきりとした声で破った。
「さすが、ヴィント家の天才ですね」
「ヴィント家なら当然です。セレシア先生」
セレシア•アノールは王立魔法学園の教師であり、元黄金級冒険者。実力は折り紙付きだ。ほっそりと尖った耳に青色の瞳のハーフエルフ。ボブの髪には光沢が溢れている。どこか厳しそうな雰囲気がある先生だ。
(あれがヴィント家の天才、僕には一生かかってもあんな強力な火属性の魔法は打てそうにないな…)
「噂以上の実力だったな」
「ああ、だけどそれだけじゃない《銀色の指輪》をつけている」
「指輪」には階級があるその中でも「シルバー」からは指輪に見合う実力が求められる。銀色の指輪は指輪の属性と同じ魔法の効果を高め、装着者の魔力を高めてくれる。
セレシア先生の声が聞こえた。
「これにて魔法実技試験を終わりにする」
午前の授業は全て魔法実技試験だったので、今は昼休憩の時間だ。学園の生徒たちは食堂や庭、教室などで食事したり友達と談笑する。そして、僕とテルンは食堂に向かった。学園の料理は物凄く美味い、なんでも選りすぐりの料理人を雇っているらしい。
僕は大好物のオムライスをテーブルに置いて、テルンは今日の昼食をパスタに決めたようだ。そんな時、元気で明るい声が聞こえてきた。
「またオムライス食べてる〜」
声をかけてきたのは幼馴染のアリアだった。アリアは僕が小さい頃からの顔馴染みだ。向日葵のように明るい金髪のポニーテールで瞳の色も同じで可愛らしい。小柄な体から元気が溢れている。
「僕の大好物なんだよ、よく知ってるだろ」
冷たい目で見られた。
「今、ガキっぽいって思っただろ」
「別にー」
無言でパスタを食ってたテルンが口を開いた。
「まぁまぁイチャイチャすんなって」
『してない!!』
僕とアリアの声がハモった。気づいたら隣のアリアは顔を真っ赤にしてテルンに怒っていた。
(いつも思うけど二人は仲良しだなぁ)
話が終わったアリアが僕の方に顔を向けた。
「この後、アルスはどうするの?」
今日の魔法実技試験で僕の力が周りの人と比べて劣っているを改めて痛感させられた、もっと勉強と鍛錬をしないといけない。僕のなりたい目標に少しでも近づくために。
「僕はこの後図書館に行くつもりだ」