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小山さん…
小山が娘の結婚について話し、田中が祝意を伝える。それだけで十分だったはずだったのだが。
小山は田中の顔をのぞき込む表情で言った。
「田中さんは?田中さんは良いお相手はいないの?」
田中の社会人経験から導き出される正答は、
「いなんですよぉー。探してるんですけどぉー。なかなかねぇー。娘さんがうらやましいですぅー。あやかりたぁーい」
だ。出題者は上記を模範解答として期待している。自分の娘を羨ましがれというわけだ。
この半年、小山から娘の結婚の報告を受けた者がそれぞれ印象を語っていた。
「小山さん嬉しそうだった」
「小山さんちょっと浮かれているよね」
小山にとって娘の結婚は相当うれしいことなのだろう。
小山は田中が思っていたより、仕事にプライベートを持ち込み、他人のプライバシーに踏み込むタイプだった。
自分の他人を見る目の浅さが身に沁みた。