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浮かれ過ぎにご用心  作者: やゐゆゑよ
8/21

小山さん今更です

 田中が、もはや小山は田中にその話をしないつもりだろうと納得した矢先のこと。

 結婚式の一ヶ月前になって突然、小山は娘の結婚について告げた。

 田中は晴天の霹靂をに打たれた気分だった。


「おめでとうございます。どんな方なんですか」

 田中にはそれなりに社会経験がある。ひとまず自分の内面と表情を切り離す。気持ちとは無関係に相手の話に笑顔で対応する程度の術は身についている。言わなくてもいいことは言わない。まずは話したい事を話させる。

 どんな方なんですか。と訊ねて()()()。田中は小山から娘の話を聞いたことがない。今回の騒動で娘がいることを知ったくらいだ。その結婚相手のことなど田中が興味を持つはずがない。本当ならまず訊くべきはどんな娘さんなんですか、だろうに…。ばかばかしい程の上っ面の会話だった。

 田中は嬉々として娘と相手との馴れ初め語る小山を眺めた。


・家を出て遠方で夢に向かって一人暮らしをしていた次女が結婚相手を連れてきたこと。

・来月の第二土曜日に二人が暮らす遠方の地で結婚式があること。

・両家の申し合わせで黒留袖は着なくてもよくなり、ほっとしていること。

・娘は今勤めている職場を辞め、家事に専念し落ち着いたら仕事を再開すること。

 

 小山の話は今回の騒動が始まってから小山以外から聞いた話ばかりだった。

「そうですかー。よかったですね」

 祝意を伝えた。


 結局最後まで、小山は自分がこれまで田中には娘の存在を話していないことに思い至ることはないようだった。


 何故、今頃になって田中に話したのだろうと首をかしげたが、思い浮かぶ答えは見つからなかった。

 いくら何でも、

「小山さんが伝える人と伝えない人をわけるから、職場の空気が悪くて仕方ない」

などと面と向かって言うなど、田中には考えられなかった。言ったのなら……誰だろう。

 結局報告するのなら、半年前に年長未婚者達にも同じように伝えておけば小山も無駄に株を下げずに済んだのにとだけ思った。


 

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