お祝い紛糾 続き
小山の行動は職場に既婚者・年長未婚者・若者という無用の分断を生んだ。
報告を受けていない年長未婚者の中にも、初めの段階では連名の祝儀程度なら出さざる得ない、と考える者もいた。分断ができた今となっては自分は出すと言い出しにくい空気ができ上っていた。
余裕のあった既婚者達も終いにはこの件はうんざりした様子だ。自然と祝儀の話はフェードアウトしていった。
結局、祝儀を出すのは本村と矢野の二人だった。連名で出す話は立ち消えとなった。そもそも呼びかけ人を買って出る者がいなかった。年長未婚者には白い目で見られ、若い同僚にはカツアゲか徴税人のように思われる。損な役回りだ。
矢野は、小山と田中がコンビを組む以前に小山とコンビを組んでいた。矢野が去年結婚した時、小山から個人で祝儀を受け取ったという。
「もらったからね、返さなくちゃいけないんだ」
と割り切った表情だった。
それなら仕方ないねというのが周りの反応だった。
本村は小山と同期だった。
暴走して若い同僚達に祝儀を出すよう説得して回り、反発を買ったのは本村だった。
実際は若者だけでなく、既婚者・年長未婚者・若者問わず、出資(!)するよう説得して回っていたらしい。懸命な説得は功を奏さず、最後にはあきらめて、
「小山さんとわたしは同期で特別な関係だから、ほかの方がどう動こうとわたしは最初から個人でお祝いを包むつもりでしたよ」
と言い分を変えた。
それを聞いた年若い同僚達は
「自分が出すお金を減らすために私達にあれだけ小山さんにはお世話になっているでしょとか、こういうのは助け合いの精神だから出しとけばいつかはそれが自分に返ってくる、とか色々言ってきたのに。結局お金を出せって言う話なんです。最初から個人でお祝いを包むつもりだったとかあんなの嘘です」
と怒っていた。
「おめでたい話を教えてもらえる内が花なのよ。年取っていつまでも一人だとそういう話も教えてもらえなくなるの。申し訳ないけど彼女達は自業自得。それをひがんでお祝い出さないなんて。そんな考えならそりゃ結婚もできないわ。あなた達は若いんだからまだ考えを改める時間があるわ。って言われました。ひどいって思いました」
そんな暴露話まで出てきた。それを聞いた年長未婚者の気分が良いはずがない。