第十一話 ‘ある日のこと’
お久しぶりです。やっと投稿できた…課題に追われてました。計画的にすればよかった。
俺はあのあと、牡丹さんや雀さんに何が起きたのかの説明をした。二人とも、真剣に話を聞いてくれたので気持ち的にはとても楽だった。説明が終わって皆で片付けをして、俺はやっと家に帰って来ることができた。
「なんか、色々、つか…れ…た…ぁ……」
そうして俺はまた、意識を手放した。
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10月3日 a.m.3:00
「ん…ぅ…ん〜〜む……ふぃい………よっし、起きよ」
まだ、太陽が顔を出さないこの時間。俺はあまり寝付けずにいつもより早く目が覚めていた。
「…やることねぇな…」
ぼそっと呟く。しかし、今日は家族総出の用事があった。そのことを考えるだけで気持ちが少し暗くなる。
「もう一年か…」
吐き出すようにして出たその言葉に視界がゆがんだ。つぅ…っと頬に冷たい水が流れ落ちる。そう、一年…
黄朽葉 小豆が亡くなってからもう一年が経つ。あの日はいつもとなんら変わりないそんな日になる予定だったのに…
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前年同日
「まだ寝てたい…」「同じくぅ…ふぁぁ…」
「おはよーござまーす」「おはよー」「んー…」「おーい起きろー」「ぉはよぉ」
朝七時。各部屋から目覚ましが一斉に鳴った。それに伴ってぱらぱらと聞こえる朝の挨拶。そんな中、まだ易しい陽の差す廊下を俺はのそのそと歩いていた。
「ふぁぁ…」
今日も良い一日になりそうだ。そう思いながら俺は廊下を進んでいく。
ドンッ
「!?」
直撃を受けたおでこをさすりつつ俺は顔を上げた。
「あぁ、朱か。ごめんごめん」
「雀さん。一体ここで何をしているんですか?」
「少し外の様子を見てきていたんだ。ほら、最近カラスが多いだろ?ま、なんともなかったんだけどね」
そう言ってあははと笑う雀さん。
「あっ、朱。さっき牡丹が呼んでいたよ」
ふと思い出したかのように重要なことをさらっと言う雀さんに殺意を覚えつつ、俺は急いで牡丹さんのもとへ向かった。
「ただいま参りました」
右膝をついて敬意を表す。蘇芳さんと茜さんがしているのを見て覚えたこれは何気に気に入っている。
「普通に座ってくれるかしら。堅苦しいのは初めだけでいいのよ」
俺は言われた通り跪く体勢から正座に変えた。
「今から話すのはまぁまぁ大切な事よ。絶対に、なにがあっても忘れないでもらえるかしら?」
「分かりました。しっかりと記憶します」
頭のメモ帳を開き脳に焼き付ける準備をする。いつ話が始まっても大丈夫なように、だ。
「一つ目は絶対に今日一日甚三のそばを離れないこと。海松は私が、浅葱は霞がつく。他も二人ずつペアを組ませるのだけれど、一人余ってしまうのよ。だから、小豆は甚三と朱のペアに入れることにしたの。三人で動いてね」
「はい」
三人で動く。他は二人ずつで動く。絶対に一人にはさせない。子供には強く生きている年数が長い者がついていると俺は見た。何かあるのだろうか。なにもないことを願いたい。俺は少し不安を覚えた。
「次、二つ目ね。家の外には極力出ないこと。縁側もあまり近づかないでほしいわね。いざとなったら武器を出すのも止めないわ。」
家の外に、何があるというのか。恐ろしい事でもあるのか?不安に押しつぶされそうになる。
それと同時に俺は悟った。始まるのだ、と。いや、もしかしたら前触れだけなのかもしれない。嫌なことに変わりはないがそちらのほうが幾分か楽に思えた。
「最後、三つ目よ。これは一番忘れてはならないこと。死ぬ気で覚えて頂戴。」
頭に響く、その声は俺の不安を容易く最大限まで引き上げた。
『死ぬな。そして、死なせるな』
朝ごはんを食べるため、大広間(?)に戻った俺はご飯を運ぶときも食べるときも片付けをするときもずっと言われた三つの事を考えていた。
「――。ぁ――」
一体何が起こるというのか。
「あーかー」
死なせるな、それは誰かが殺される、そういうことなのだろうか。
「あーかー!!」
死ぬな、ということは俺もその対象に入っている、そういうことなのだろうか。なんにしろ忠告されたのだ。しっかりと本体を守らなけれb「朱!!!!!!!!聞いてる!?」
「ぅっわああああああ、えっ、何!?地震!?え!?」
突然耳元で大声を上げられ俺はついつい叫んでしまった。
「うるっっさ!!!朱、俺むっちゃ呼んでたのに!!!てか、うるっっさ!!」
うるさいって二回も言ったな。その言葉、浅葱、お前だけには言われたくなかった。
「二人共喧しいわ。朱、地震とちゃうで。なんか顔色悪そうやったから様子見にきてん」
俺は少し違和感を覚え、海松と浅葱の格好をまじまじと見た。俺の視線に気がついたのか浅葱が口を開く。
「あぁ、この服な。色違いなんだ。俺の部屋に朱の分もあるから。なんなら今から行くか」
そう言って俺たちは歩きだした。
二人が着ていたのはデザインが同じの服だった。浅葱は黒地に青緑色の線の入った七分丈のパンツに胸ポケットの付いた半袖。海松は短パン半袖でどちらも黒地に深緑の線が入っていた。
「着いたぞ」
声をかけられハッとする。いろいろ考えているうちに浅葱の部屋に着いたらしい。
「おじゃましま~す」
二人に続いて俺も部屋に入る。予想に反して綺麗に片付いている部屋だった。
「こっちこっち」
手招きされた方に行くと紙袋を渡された。
「こん中に入ってるから。俺達は部屋から出るから着替えていいよ」
「うん、ありがとう」
着替えれたら教えてや〜と手をふる海松に手をふりかえして着替えを始めた。
「おぉ〜ええやん!!似合ってんで!」
「朱って感じだな!」
俺は着替え終わったので、二人に見てもらっていた。俺の服は長袖長ズボンの黒地に赤色の線のデザインだったが、一つ二人と違うところがあった。
「あれ、朱の服結構ゆったりしてるんやな。なんでやろ」
海松が言う。そう、その通りなのだ。俺の服は下は細身のパンツなのだが上が二人に比べてゆったりとしているのだ。しかし、俺の服がこうなっている理由に、俺は気がついていた。
すぅっと軽く息を吸う。
「俺は蛇を使って蛇と一緒に戦う」
「お、おぅ、どした?急に」
「俺は敵に見つからないように移動しなければならない」
「確かに。見つかったら襲ってくるかもしれへんなぁ」
「蛇は見つかりやすい。俺が守らなければいけない」
「…ん?…ぁ、あぁ、そういうことか!」
「俺は」
「蛇を隠して移動する」
「朱は」
過去最長なんじゃないかな。話の長さ。