第十話 ‘再開’
いつも見てくださりありがとうございます。不定期更新気まぐれなやつですが、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
フラグっていうもんは早々に回収されちまうらしい。俺はそれを身を以て知った。
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「朱〜お肉持ってきてくれる〜?」
「ついでに皿も持ってきて!!」
「おいっ、海松それ俺の肉!!!」
「知らんわ!放置してた浅葱が悪いねん!!」
うるさい。そう思いながら肉と皿を取りに行くため、重い足を動かす。
もうお気づきだろう。俺達は今、BBQをしに夜明山に来ている。
今朝、俺は叩き起こされた。しかも、朝の四時半に。
「いいだろう…たまには…」
「ヒッ…」
後ろから突如聞こえてきた低音ボイスに思わず短い悲鳴をあげる。俺は肩に置かれた手を凝視した。
「やっほー」
顔を上げる。そこには明るい声でこちらの反応を楽しむような笑顔の雀さんがいた。
「雀さっ…!あんたホントいい加減にしてくださいよ!?」
ここ一年で雀さんの性格がやっと分かった。この人、いわゆる残念イケメンである。初めて顔を合わせた自己紹介のときの穏やかでザ・イケメンの面影は、今や欠片も残っていない。人の不幸は蜜の味。そんなヤバい人だったのだ。
「えー無r っぃいっってぇぇぇぇ!!!!アノ、チョット!?叩かないでくれます!?アカネサン!?」
「ごめんなさいね、朱くん。雀がまたいじめてきたんでしょ?いつでも言ってね。しっかり言い聞かせるから」
「ハイ、アリガトウゴザイマス…ハハッ…」
自分でも礼を述べる顔がとてもひきつっているのがわかる。いつも忍者のように忍び寄ってくる茜さんは、雀さんの幼馴染らしい。浅葱が言っていた。茜さんは怒ると怖い。今も雀さんに笑顔でチョップを食らわしていた。怒らせちゃだめな人第二号として頭に刻み込む。ちなみに第一号は牡丹さんだ。なんと言ってもオーラが違う。ゴゴゴゴゴみたいな感じで。
俺は茜さんに回収されていくヤバい人を見送りながら目的地へと再出発した。
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待って、なんで?え?え?
まぁ、落ち着け。現状を把握しよう。
俺は車に物を取りに行って今、皆のところに帰っている最中だ。そして、あともう少しのところでこいつに会った。いや、おかしいだろ。
目の前に立ちはだかる二十五メートル級の白蛇。え、紅じゃないよな…?そう思い足元を見る。
下をチロチロさせて俺を見ている。相変わらずかわいーなーお前〜。
さて、紅はここにいる。なら、あの大蛇は一体何なんだ。
「切断者」
俺は念のため、出したカッターのボディをポケットに入れておく。刃は入れずにボディだけを準備することで相手に対して敵意が無いことを示すためだ。
「通してくれないかな」
俺は落ち着いて、話しかけた。あ、待てよ、言葉って通じるのか?
『ごめんね。また会えて嬉しいよ』
蛇が話しかけてきた。どうやら愚問だったようだ。ちなみに、俺はこの蛇に対して心当たりが一ミリもない。
「人違いじゃないのか?」
相手は人を簡単に飲み込めそうな奴だ。気を許したらいけない。そう思って少し冷たく返したのは間違った選択肢だったのかもしれない。突然蛇が一メートルほどにあっという間に縮んだのだ。
「え……」
『どうっ?思い出した?』
俺はかすかに当時を思い出すと同時に自分の意識が遠のいていくのも感じた。どうやらあの出来事はトラウマになっていたらしい____
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「ん……」
重い。お腹の上に何かが乗っているみたいだ。形的に…蛇…とかか…
「どけよ…」
俺はどかそうと手を伸ばす。
『ふぇっっ!?』
「え?」
恐る恐る目を開けてみる。
『あっ、やっと目が覚めたの?僕待ちくたびれてつい君のお腹の上で寝ちゃったよ。君を運ぶのは二回目だけど大きくなったね。僕なんだか嬉しくなったよ』
え、なんでいるんだ???え、紅は?
『紅ならあそこだよ。ほら』
蛇が指した先には俺のかばんに身を預けこちらを見ている紅がいた。
「紅ーーこっちおいでー」
俺がそう言った途端、のそのそと移動してくる紅。あーかわいい尊い好き。
『ねぇ、僕のこと思い出したでしょ?』
「あぁ、思い出した。昔、川に落ちそうになってた俺を助けてくれたんだろ?」
一応疑問形にする。間違っていたらこの上なく恥ずかしいからだ。
『そっ、正解。そして、ついさっきもう一度君を助けた、敬われるべき蛇である』
助けた。その一言で俺は視線を周りに移す。
「俺のテント…」
そう、今俺がいるのは、キャンプのために、と雀が用意した俺のテントだった。よく考えたら俺が今座っているのも土の地面ではない。ポリエステルの少しガサつく地面だ。
『じゃ、僕もう行くね。ばいばい』
「えっ、ちょっ、待てよ蛇っっ!」
『僕、蛇じゃなくて露って名前だから!じゃあね、朱!!』
「えっ、あっ、ごめん…」
そうして謎の喋る白い大蛇こと露は姿を消した。
「「朱〜?」」
小さく聞こえてきた声に俺は振り向いた。
「大丈夫か?」
浅葱が心配そうに聞いてくる。俺は何も問題ない。頷いて返した。
「食べる…?」
そう言う海松の手元には紙皿に乗せられた大量の肉と野菜があった。空腹感が半端ない。俺は即答した。
「食べる」
そう答えると二人はホッとしたような顔をして「食べたらでいいから来てね」とだけ残し立ち去っていった。
記念すべきは第十話!!!
主はやる気が無いときはアクセス数とかユニーク数見たりして元気もらってます。こっそりですけどいつか人気が出たらいいなぁとか思ってます笑。ブクマつけずともいつも来て読んでくださる方々に感謝の念を。