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あなたの部屋に私のパンツ干してもいいですか?  作者: さかき原枝都は
はじめましての彼女は可愛いと思った。

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第65話 一歩前進。そして……二歩後退 ACT4

「お待たせ致しました。ブレンド珈琲とケーキのセットでございます。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」


お客様のテーブルに注文の品をそっと置いて、一礼をして席から離れる。

バイトを始めて1週間が過ぎた。

始めはドキドキしながらの接客だったけど、今は意外と落ち着いて出来るようになった。


残念なのは、有菜と一緒にここでバイが出来なくなったことだ。

期末試験の成績、有菜全滅だったらしい。


夏休みは補習授業が彼女を待っていた。


「ううううっ、繭たんと一緒にバイトしたかったよう」

「私も一緒にバイトしたかったけど仕方ないじゃない。有菜補習頑張って。勉強なら私もこれから見てあげるから」


「ありがとう繭たん。お店には繭たんがいる時必ず顔出すからね」

「うんうん、分かったからもう泣かないの」

と、有菜をなだめるのが大変だった。


「阿久津、梨積さん大分仕事馴れて来たんじゃない?」

「う――ん」阿久津さんは腕を組みながら


「マネジャー、梨積さんって本当に高校生なんですか? あの美貌に落ち着いた雰囲気。なんかそそられるなぁ」


「あのなぁ、梨積さんに手を付けたらこの私が許さないからな」

「おお、こわ! マネジャー顔がマジですよ」


「はぁー」とマネジャーはため息をついた。

「まさか彼女の担任が彼奴だったなんて聞いてびっくりだ」

「ホント世間て狭いですねぇ」

「まったくだ! しかも友香とも繋がっていたなんてあまりにも偶然過ぎるよ。怖い位だ」


「ああ、友香さんってマネジャーの高校からの親友だった人ですよね」

「まぁな。友香に繭ちゃんのこの姿を見せてあげたいよ」

「呼んだらいいんじゃないんですか?」

「今はそうもいかねぇから、むず痒いんだ」


「ま、詳しい事情はこれ以上突っ込みませんけどね」


「ふん、お前はなんでも人の事に首突っ込みすぎなんだよ」

「えーと、僕ってそんなにマネジャーのプライベートに首突っ込んでいますかねぇ」

「ああ、どっぷりとな」そう言いながらマネジャーは苦笑していた。


「梨積さぁ―ん」

「はい」

「休憩、休憩」

阿久津さんが私に休憩の時間だと教えてくれた。


「すみません、もうそんな時間だったんですね」

「うん、そうなんだよ。(まかない)何がいい? いつものサンドウィッチかな? でも今日はパスタも出来るけどどうする?」


「ん―、どうしよっかなぁ。あ、そうだ、あのぉ阿久津さん」


「どうしたの?」


「今日の賄パスタにしたいんですけど、私自分で作ってもいいですか?」


ここで提供される軽食なんかは、阿久津さんともう一人の男性スタッフが調理してるんだけど、私もここで何か料理を作りたくなった。

阿久津さんはマネジャーの方をちらっと見て


「いいんじゃない。梨積さんパフェもすぐに作れるようになっちゃうほど器用だから大丈夫なんじゃない。どんなパスタ作るのかちょっと興味あるなぁ」

ニコッとしながら阿久津さんは言う。


「ありがとうございます」


使ってもいい食材を教えてもらい、準備に取り掛かった。

「あ、そうだついでにマネジャーの分も作ってくれるとありがたいなぁ」

「いいですよ。でもお口に合うか心配ですけど」

「まぁいいんじゃない、とにかくやってみてよ」


「はい」


使ってもいい食材をじっと眺め「よし!」と作るレシピを頭の中で組み立てた。

私が調理をしている姿を阿久津さんと、厨房専属の佐々木さんがじっと見つめていた。


なんだか二人に見られているとちょっと緊張するけど、もうこの店の雰囲気にも、そしてスタッフみんなとも打ち解けていたから、動けないほどじゃない。


「へぇー、梨積さん料理結構やっているじゃないのか? 高校生にしては動きがいいし、包丁さばきもいい感じだ」

佐々木さんが関心していた。

「うん、いいねぇ。使う食材のセンスもいいと思うよ」

そんな言葉が私の耳に入る。


褒められているとかえって緊張してしてしまう。

お湯がボコボコと沸いてきた。


実はどうして、パスタを作ってみたかったというと、ここで使っているパスタは生麺だからだ。

パスタと言えば普通は乾麺を連想するけど、生麺を扱っているところは多分珍しい。


一度この生麺のパスタを使ってみたかったというのが、正直なところだった。

湧いているお湯にオリーブオイルを少量入れ、麺を広げるように二玉投入。


「お、彼女やるねぇ。オイルをお湯に少量入れるところも知っているんだ」

呟くように佐々木さんが感心していた。

「う―ん」

なんだか佐々木さんの視線が一気に熱く感じる。


茹で上がった麺を今度は一気に冷水に漬け冷やす。このお店の厨房はさほど広いところではないけど、設備はそれなりに充実している。一般の家庭のキッチンよりはやりたいことがスムーズにできる。なんだかとても嬉しい。


冷水で絞めたパスタにオリーブオイルと、下ごしらえしてあった具材を混ぜ合わせ味を調整してから、ざく切りしたフレッシュトマトとトマトジュースをあえて、お皿に盛った。


「ふぅ―、ようやく出来ました」


「いやぁ、お見事! 梨積さん料理の腕大したもんだよ。ねぇ僕らにも少し味見させてもらってもいいかな?」


阿久津さんが褒めてくれた。


「いいですよ。私マネジャーさんに持って行きますね」

事務所にいるマネジャーさんの所にフォークとスプーンを添えトレーに乗せて持って行った。


ノックして事務所の戸を開けると、マネジャーさんはパソコンに向かっていた。


「あのぉ、忙しいところすみません」

「ん? どうしたの梨積さん」

「これ、賄で私が作ったパスタなんですけど、よかったら味見していて頂けますか?」


「へぇ―、梨積さん綺麗に仕上がってるじゃない。どれどれ」

ディスクの横にある小さなテーブルに作ったパスタを置いた。


「わぁ、本当に梨積さんが作ったの? 佐々木さんじゃないの?」

「えへへ、私が無理言って厨房を自由に使わせてもらいました」


フォークとスプーンをうまく使いくるっとパスタ麺をすくって口にした。


「うん、美味しい」

「本当ですか?」


「味に嘘はつかないわよ。それに梨積さんの想いが伝わってくる感じする」


私の想いって……。


「誰かに食べてもらいたいって言う想い」


「うん、そうですね。私が作った料理を食べてくれて、喜んでいるその顔を見るのが私は幸せなんです」


マネジャーさんは、杜木村(ときむら)さんは、そっと私を抱きしめた。

「訊いているよ。三島から……」

ただそれだけ、小さな声で私に言った。


そして。


「友香にも食べさせてあげたいね」

友香……。


鷺宮友香(さぎのみやともか)。あなたが前に居た高校の担任。そして私の大事な親友」


「嘘……。本当なんですか?」


「うん、あなたは一人じゃない、こうしてどこかでみんなと繋がっているんだよ」


だからだろうか。鷺宮先生は今の高校を私に推薦してくれた。またもとの場所に戻るんじゃなく、新たな生活と環境で私に歩んでほしいと。


これは偶然が引き寄せたんだろうか。それとも運命と言う悪戯が引き寄せたんだろうか。


でも今私は実感している。



……私は一人っきりじゃない。

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