第41話 ちょっと山田くぅーん! ACT2
「アイス買ってきたよぉ! アイスだよぉ。おおッと!」
驚くのこっちだ!
なんとまぁ、この部屋に全員集合ほんとにしちゃったよ。
「ぶ、部長?」
「何で長野君まで?」
「ええ、っとクライアントからの帰りに様子見に寄ったんですけど。部長は?」
「え、私、や、山田さんと水瀬さんのお見舞いに」
「オフィス開けてまでですか?」
「そ、そりゃねー、部下が具合悪ければねぇー……」
「て、もしかして部長、水瀬さんが山田の所にいるという前提で来ていませんか?」
「ん、そうだけど。何か?」
「えーとですね長野さん、それはですね。私と先輩……」
ばらしていいのか水瀬さん! 住んでいるところがここと目と鼻の先だっていう事。
「まぁいいじゃない。それよりアイス食べよ。溶けちゃうよ」
おお、マリナさん話の矛先をちょん切った!
でもさぁ、さすがに人口密度高すぎ!
長野さんに、水瀬さん、マリナさんと私と浩太さん。5人もいるんだよ。浩太さんの集めたフィギアさんたちも入れたら相当な人数になるな。
あ、フィギアさんはこの際いいか。
「マリナさんアイス頂けますか?」
「あ、いいよ繭ちゃん食べて食べて」
納得が行かないという感じの長野さん。浩太さんに
「ちょっと山田くぅーん。具合悪いとこなんだけど、いろいろ聞きたいことあるんだけどなぁ……僕」
長野さんのにまぁとした顔つきは、何となく危機感を感じさせるのは私だけだろうか。
「ええぃ、もうなんでも聞いていいぞ。俺は何も隠す必要もねぇからな。なぁ水瀬」
「えーと、な、長野さんならいいかなぁって……思うんですけど」
「な・が・の・くぅーん! そんなに女性社員を追い込んじゃいけないわよ。いいのぉ? 総務課のぉ、町村友理奈さんに嫌われちゃうわよぉ」
「げっ! な、何で部長彼女の事知ってるんですか?」
「なぁ長野。マリナさん基、部長には隠し事しても無駄だぜ」
「どこまで知っているんですか部長!」
「えーとねぇ、町村さんと長野君がいつも人の目を盗んでは二人で会っている仲だっていう事は知ってるわよ。ああ、それと人事部の中井真理子さん。まだあなたの事諦めきれないでいるらしいわね。このぉ、社内1・2の美人系女性社員を抱え込んで、モテる男だねぇ長野君」
「ええッと、それって……」
顔色悪いよ長野さん。よっぽど切羽詰まっている状態なの? まったく男ってどうしてこういう時になると逃げ越しになるんだろう。
「あのう部長って何者なんですか?」
「あら、私は単なる管理職よ。それ以上でもそれ以下でもないわよ。あ、そうそうそれと私と山田さん、ううん浩太とはLoverの関係なんだけどね」
「Loverって、いつからそんな関係なんですか此奴と」
「いつからだったかしらぁねぇ? 忘れちゃッた」
んー、大人の魅力とこのわざとらしい天然さは使えるかぁ。
マリナさん、勉強になります。ありがとうって何にありがとうなんだろう。
小声で水瀬さんに声をかけた。
「ねぇねぇ、こっち来てアイス食べない? 面白いよぉ、あの3人の会話聞いてると。
「え、でもぉ。いいのかなぁ」
「いいって、いいってそのうち落ち着くところでまとまるでしょうから。それより美味しいよこのアイス。さすが高いだけあるよね、私なんかめったに食べれないから幸せ!」
「そうぉ」
「でもさぁ、あの三人会社でもこんな感じなの?」
「ううん、違う違う。社内だとほとんど会話なんてないんだよね。私がたまに直接先輩に話しかけたりするくらいで、後はメールとかでやり取りしてるから。あ、そうそう長野さんはよく先輩と話してたりしてますよね。やっぱり同期だから気が合うんでしょうかねぇ」
「ふぅーん。それじゃこんな光景なんてめったにみられないんだ」
「そうですねぇ。あ、これ美味しい! 私も久しぶり、やっぱり中々手が出ないんですよねぇ、このアイス」
「でしょでしょ、やっぱり部長さんだけあってマリナさん高級なものしか買ってこないよねぇ。やっぱり部長さんくらいになるとお給料もいいんだよねぇ」
「多分ね。どれくらいかは分からないけど。私よりは、はるかに高いでしょうけどね」
「そう言えば浩太さんもお給料上がったって言っていたなぁ」
「そりゃそうでしょう。だって先輩今やプロジェクトリーダーなんですもの、部長の次の職位なんですよ。もう私たちみたいな一般職とは違いますからね」
「へぇーそうなんだ。浩太さん会社じゃ偉い方なんだ」
「そうですよ。でも先輩物凄く辛そうな顔してますね」
そう言いながらアムっとアイスを口にほおばり、幸せそうな顔をする水瀬さん。
「ありゃ、多分もっと熱上がってるんじゃないのかなぁ。もう顔が赤いの通り越して白くなってるよ」
「やばいですかねぇ」
「やばいかも」
と、その時だった。浩太さんがたまりかねてごろんとベッドに体を倒した。
「おい山田大丈夫か?」
「わりぃ、もう限界だ。横にならせてくれ」
「あらあら、お見舞いに来た私たちが悪化させちゃったかしら」
「んーなんだかそうみたいですね」
「この様子じゃまだしばらくは無理そうね。どうしようかしら、長野君浩太の分の業務ある程度受けてくれる?」
「それがですねぇ、今日クライアントから大幅な修正依頼が来まして、山田の分引き受けられなくなりそうなんですよ。それも含めてちょっと相談に寄ってみたんですけど……、この状態じゃ無理ですよねぇ」
そこで水瀬さんが手をあげた。
「あのぉ……、私が先輩の業務代行するのは駄目ですか? あ、私の出来る範囲だけなんですけど、で、よければなんですけど……リモートでここで先輩見ながらと言うか指示受けながら回復するまでリモートで業務は出来ないでしょうか」
「あ、その手があった。OK! 何とかそれで今回は切り抜けましょう」
「それしかないかぁ、山田はいいんだろ」
「ああ」
もう浩太さん上の空だわ
「ところで水瀬さん、聞いたよ自宅すぐ近くなんだって」
「ええ、まぁそうなんですけど」
「いやぁそれって偶然? ……あ、それ以上は聞かない方がいいよね」
困った表情をしなが顔を赤くしている水瀬さん。
もしかして、水瀬さん浩太さんの近くにわざと越してきたの?
そこまでして水瀬さんは浩太さんの事……。
そっかぁ。ずっと水瀬さん浩太さんの事追っかけていたんだよね。
……そうだよね。
水瀬さんも急遽、パソコンの設定をするため二人と一緒に会社に行った。
一気に静かになった。
今、この部屋には、私と浩太さんの二人しかいない。
なんか不思議な感じがする。
でも、これがもとの私たちの生活だったんだよね。
私たちの生活……。
ううん、私はただ、浩太さんと共同生活をしているだけ。
……。
そうだった。




