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あなたの部屋に私のパンツ干してもいいですか?  作者: さかき原枝都は
はじめましての彼女は可愛いと思った。

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第34話 好きと興味があるのは違うんだわ!

「せ・ん・ぱ・い!」

「あ、なんだ水瀬」


部長から送られてきたスケジュール。すでにこの前のミーティングで言われた通り、まだプレゼンも行っていないプロジェクトが組み込まれていた。

これは絶対に取らないといけないという、部長の暗黙の脅迫の様なものだ。

これを見て頭を抱えているところに水瀬が声をかけて来た。


「なんだ、はひどいですよ」


「はぁ、分かんねぇところでもあるのか? ああ、今やっている”やつ”の言語が違うからお前にはまだ無理だったか」


「あのぉ……。そう言う事じゃなくてですね」

「だから何だよ。急ぎじゃなかったらメールしといてくれ」



「んっもう! 先輩のバカ!!」



「はぁ? バカ? 何だよ」


少しばかり声が大きくなった。


オフィス内の視線が一斉に俺に集まる。

いつもとは違う気まずい空気がオフィス内に漂う。


この程度の声の大きさは前の部長は普通だったが、今の部長は物静かだ。

要件は各人にメールで送信し、声を上げることなどなくなった。

当然部長も俺のこの声に反応していた。


ふと水瀬の方を見ると、目を真っ赤にして、ポツンと涙が流れ落ちていた。


「あ、いやすまん。つい声が大きくなってしまった」


謝罪? あの水瀬が涙を浮かべている状態だ。多分何かを伝えたかったんだろうが、それを俺が無下に突っ返したのがいけなかった。


オフィス内の視線が熱い……。

「ああ、水瀬を泣かせてるよ。山田の奴」

そんな声が聞こえてきそうな視線が集中している。


「山田さん、何かありましたか?」


「いや、そのぉ、ちょっと声が大きくなってしまいまして」

「ふぅーん、声がねぇ」


部長の声のトーンがやたら低い……もしかして今物凄くやばい状況になってしまったんだろうか。


「ねぇ山田さんちょっといいかしら」


部長は腕を組んで俺をオフィスの外に出るように頭を動かす。

なんとも威圧感のあるその視線が有無を言わせなかった。


部長が動き始め俺は席を立ち、その後を追うようにオフィスの外に出た。

向かった先は喫煙所。

部長はくわえた煙草に火を点け、軽くふぅ―と白い煙を吐き出した。


「ねぇ、山田さん……ううん、浩太さん。あなたもしかして私が送ったスケジュール見て頭いっぱいだった?」


「え、っとですね……。実は……。」

「プレッシャーに弱いのね」


ニコットしながら、そんな言葉を吐かないでくれ。

でもさっき俺の事浩太さんて言ったよな。


「あのぉ部長」

「今はマリナでいいわ」

「先程は済みませんでした」

「何で謝るの?」

マリナさんは自分の煙草を俺に差し出した。


遠慮なくとり、火を点ける。メンソール系の煙草。

口の中がスーッとメンソールの刺激に包まれる。


「今日の水瀬さんの姿に浩太は気が付いてた?」

「水瀬の姿?」


何か変わったところがあったか? 今日の水瀬


「まったく何も気が付いていないみたいねあなたは。自分の直属の部下でしょ。もう少しちゃんと水瀬さんの事を見たげないといけないんじゃないのぉ? あんなにあなたの事を慕っているのに、あなたは彼女のその気持ちを少しでも気に留めようという気はないの」


「済みません。俺、そう言うのには本当に疎いんで」


「今日の彼女の服装、いつもと違うの気が付かなかったの?」


え、水瀬の服装……。彼奴はいつも紺色のスーツを着ているイメージしかなないんだが……。

あ、今日は紺色じゃなかった……。


「もしかして、俺のために……」

「今日でしょ例のプレゼン。水瀬さんも同行するのよね」

そっかぁ、彼奴そのためにいつもと違う……。


「はぁ、俺ってホント周りが見えてないですね」


「ホントそうね。プロジェクトリーダーさん、今はもう自分のことだけを考えていればいいという立場じゃないのよ。あなたはもうあのオフィスの長なのよ。いわばメンバー全員があなたの傘下、部下とは言わないけど、メンバーを仕切っていかないといけないの。最もそれは私も同じ事なんだけど、それなのに、一番側近の水瀬さんの変化にも気づかないなんて困ったものね」


「もっともです。弁解の余地もありません」


「でもさぁ、浩太は、繭ちゃんの事になると物凄く敏感になるんだよね」


「そ、そうですか?」


「うん、あなた達二人を見ているとお互いに壁作りながらも、その壁を大切に保とうとしている。本当は壁なんか邪魔なだけなんだけど」


壁かぁ。メンソールの刺激が俺には少しきつい。


その壁が今、俺と繭の関係を何とか保っているような気がする。

でも、水瀬についてはその壁は……。と、言うよりも俺は水瀬の事をどう思っているんだ?


この2年間ずっと一緒に仕事をしてきた仲だ。俺と水瀬、その水瀬が俺の事が好きだと告白してきた。

俺の傍に繭と言う存在がいることを知ったからか?

いや違う、水瀬はずっと前から俺の事が……。それに俺は何も気が付いていなかった。


仕事を水瀬に振れば的確にそして卒なくこなし、大きな問題も起こさずに俺の片腕として成長してくれた。

それは彼奴にそれだけの能力があるから、出来るからだとばかり思っていた。


でも……。


水瀬が配属された時に俺が一番先に感じたことは、何でこんなスキルのない奴が、ここに配属されたんだと思ってた。

でも水瀬は俺が出す仕事は自ら処理をしていた。


確かに始めの頃はひどかった。水瀬が処理をしたデーターをもう一度俺が再度修正を何度もかけないといけないという作業にも追われていたのは事実だ。それがたった2年間で今や俺と同等くらいの処理をこなせるようにまで成長している。


それは彼奴の努力……。


ふぅ、水瀬は見えないところで相当な努力をしてんだ。


それを俺は当たり前のようにそれが普通であるかのように、そして水瀬がそこまで頑張れたのも、彼奴が俺の事を好きだという想いそのもの一つでここまで這いあがって来たのだとすると、俺は、彼奴に何もしてあげていない。


それでも水瀬は俺についてきてくれている。


「俺、馬鹿でした。水瀬の努力に気がつこうともせずに彼奴の事を何も考えてやっていませんでした。本質的なところで」


「そっかぁようやく浩太もそう言うところに気が付くようになってきたのね。これも成長だね」


ふっと、彼女の唇が俺の口を覆った。

同じメンソールの味がする。その時不思議とあの拒否反応は出てこなかった。


ふいにされたためだろうか? それともやはり徐々にあの想いが薄れてきているんだろうか。


今はもう繭とのキスは、普通という表現は良くないかもしれないが、俺は受け入れている感じがする。


そしてマリナさんの事も俺は受け入れようとしているのか?

だが、なぜか俺の胸の中は悲しみに支配されそうになる。


「今日のプレゼン頑張ってね……。浩太」


金色のその長い髪にあのあどけない微笑が、なぜかその悲しみを少し和らげてくれるような気がする。


「マリナさんは俺の事好きだといったけど、本当に俺の事をそう思ってくれているんですか?」


「うん、浩太の事は私好きよ。でも私はあなたを愛することはないと思う」


「それってどういうことですか?」


「好きと興味があるって言うのは違うってことかしら……。恋愛としてね。そして、繭ちゃんも私と同じなのかもしれない。でも今はそこにはあなたは触れてはいけない部分だと思う。今の関係を保ちたいのなら」


俺が繭に抱いている疑心感。


もしかしたら今のマリナさんの言葉が、何かをさしているようなそんな気がした。



そして喫煙室のドアの外で、俺たちが出てくるのを待っている水瀬の姿があった。


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