第33話 あのぉ、ちょっといいですか?
「えっと、えっと。マ、マリナさん!!」
「繭さんのとのキスとても気持ちよかったですから」
そ、そんなこと言われても……同性同士でキスした初めてなんですけど。
「繭ちゃん可愛い。山田さんが惚れるのも分かるよ」
山田さんが惚れるって? えっ、どういう事?
そりゃぁ、さぁ……。私ははっきり言うと浩太さんの事好きだよ。
でもさぁ、おもてざたに私好きですって言えないでしょ。
だってさぁ、高校生だもん……。多分これは自分を納得させる自制心がそう言わせているのであって、そのぉ、だからさぁ……ああ、なんか物凄くじれったい。
「そ、そんなことないと思いますけど。マリナさん昨日言ってましたけど、浩太さん……山田さんの事好きなんですよね」
「ええ、気に入っているわよ。でもね、私の好きと言うのと多分あなたが思っている好きって言うのはちょっと違うかなぁ」
「違うってどう違うんですか?」
「そう言う事ひっくるめてあなた理解あるんじゃない?」
「理解って……」
「別に隠さなくてもいいわよ。何となく分かるんだぁ。私とあなたって同じなんだって」
「同じってどういうことですか?」
「ん、わぁぅ。ああ、頭痛い。おばようござあういまぁす」
水瀬さんが起きて来た。
「あーー、ボーとする。頭がガンガンするぅ」
見るからに二日酔い状態だというのが良く分かる姿だ。
「ああ、部長起きていたんですね……て、な、なんですかその恰好。裸じゃないですか」
「あら、何言ってるのちゃんと下は履いてるわよ」
「はぁ、でもその豊満なバスト様が目立ちます!」
「そう言うあなただって下着姿じゃない?」
「え、ええッとわっそうだ!」
「よかったですね今山田さんがいなくて」
「あ、そうだ先輩どこ行っちゃたんですか?」
「そうねぇ、私がベッド占領しちゃったからかしら。私、お酒はいると一気に意識が切れるみたい」
「ああ、そっかぁそれで」
道理で、糸が切れたみたいに寝ちゃうのはそのせいなんだ。
「あのぉもしかして部長、私が寝ている間に先輩を襲ったりしていませんよね」
「あら、いけなかった?」
「ええっ! やっちゃったんですか?」
「うふふ、ご馳走様」と言いながらマリナさんはお腹辺りをポンポンした。
「ええ、っとええッと……」
水瀬さんがいきなりぽろぽろと涙を流し始めた。
「私だって先輩の事本当に好きなんです。私部長の様に男性経験豊富じゃないし……。今までなかったし、でもこの体こんな体でも先輩なら捧げるつもりでいたのに。私が寝ている隙にそれもすぐそばでそんなことになっていたなんて、先輩は私よりもやっぱり経験豊富な部長を選んだという事なんですね。えっくえっく」
「オーよちよち、水瀬さん。多分心配しなくても浩太さんマリナさんとは何もなかったはずだよ。ねぇ、マリナさん」
「あはは、ばれちゃったか。襲おうとしたけど、山田さん受け付けなかったわよ。それに私多分また一気に寝に落ちちゃったみたいだし」
「本当ですか?」
「うんうん、本当だよ。だって浩太さん今私の部屋で寝てるもん。もうじき起きてくるんじゃないかなぁ」
「ええ、じゃ先輩繭ちゃんと一緒に寝てたんですかぁ!! 同じ布団で!」
おいおい、水瀬さんあなたは私たちの事を見ていたのか?
「ええ、っとそうなんだけど、でも何もないよ。だって浩太さん生身の女性には物凄い拒否反応起こすから」
「そうなんですよね。それは繭ちゃんから聞いているから分かってはいるんですけど、これもどうしたらいいのか。でも先輩の趣味にリンクできれば、それも克服できるんじゃないかなって思っているんですけど」
「んー山田さんよっぽど女性拒否症重症なんですね。これは本当に何とかしてあげないと。これはこれで楽しくなりそう」
んーマリナさん浩太さんを更生させようとしているのかな?
色仕掛けで?
でもそれを言ったら水瀬さんだって、コス衣装で攻めようと考えていることが見え見えだし。
そこで水瀬さんがこんな提案をする。
「あのぉ、私たち3人ライバルなんですよね?」
「んーライバルね。そうです私たち3人は山田浩太を奪い合うライバルですね」
「で、その当人の先輩は生身の女性を受け付けない症候群。私たち3人でここは協力と言うか力を合わせませんか?」
「力を合わせるって?」
でもそんなことしたって、浩太さんにはあの事情があるんだから……。
「……でも私はそんなんじゃないから」
「繭ちゃん今さらそんなことまだいっているの? 先輩を好きでたまらないのは繭ちゃんだって一緒じゃない。それに繭ちゃんが今一歩リードしてるんだから、ここで繭ちゃんだけ別行動は許されないわよ。これは3人平等に先輩を更生させるために組むプロジェクトなんですもん」
「ああ、素晴らしいプロジェクトです!」
「連絡と行動は逐一3人で共有すること!」
んー水瀬さん、なかなか仕切るなあ。
「おお、水瀬さん、あなたのその行動力山田さん譲りですね。さすがです」
なんだか凄いことになってきた感じがするんですけど。
という事で、このアプリに私たち3人のグループ登録をしてと、会社の中での出来事、業務は別として私生活での変化やアプローチは常に報告し合う事。隠し事は一切なし!
「なははは、山田浩太攻略同盟の結成です!」
その時部屋の戸が開いた。
キッチンにいる私たち3人の姿を見るなり何も言わずに、静かにその戸を閉めてしまった。
「あのぉ、お二人ともいい加減、服着ませんか?」
「そ、そうですね」
ようやく我に返ったように二人は服を着始めた。
しかし、山田浩太攻略同盟だなんて、これってゲームの延長みたいなもの? 「はぁー」と何となくため息が出る私。
ようやく朝食が出来上がり4人で食べている時も、あの二人はずつとニヤついていたのが印象的だった。
「あのぉ、お二方、何かありましたか?」
浩太さんがこの異様な雰囲気に押されるように訊くと
二人は口をそろえてこういった。
「なにもある訳無いじゃない!」
ああ、これは後で浩太さんから問い詰められそうだ!
水瀬さんからは、「これは先輩には内緒ですからね。繭ちゃんそこんとこちゃんと守ってくださいよ」と念を押されてるから始末が悪い。
さてどうしたものか……。
やっぱ、抜け駆けはまずい? かなぁ。




