第七話 威力を追求すれば攻撃は自然とエグくなる
短めです、次の街へ付くまでの間をつぐために書きました。
「山菜〜さ〜んっ采〜山さ〜い〜」
「・・・・・・・・・・・・」
春牧とサイフェリアが森に入ってから、約二時間が経過していた。既に日は傾きかけていて、ただでさえ薄暗い森の中はいっそう暗くなっていた。
「山〜さぁ」
「ねぇ」
「ん?どうした?また山菜を見つけたか?」
「・・・・・・実は道に迷っていたりしないでしょうね?」
森に入ったばかりの頃は、当初の予定通り勘で進んでいたのだが。春牧が視界の端に食べられそうな野草を見つけ、探してみると他にも食べられそうなものがあったため、現在までそれを探しつつふらふらと進んでいた。既に春牧は両手に山菜を抱えている。サイフェリアも最初の頃は、食糧確保、などと喜んでいたのだが、流石に辺りも暗くなってきて不安になったらしい。
「安心しろ、そんなことは絶対に無いと断言できる」
「・・・・・・どこからそんな自信が来るのよ・・・・・・?」
心なしかサイフェリアは少しぐったりしているように見える。
「だって、元から道なんて無いしな、無い道には迷いようが無い」
春牧はそう言って少し胸をそらす。サイフェリアとは違い現状に不安のかけらも無いらしい。
「威張って言うことじゃないでしょーが!」
春牧の顎に、肩に座っているサイフェリアの蹴りが炸裂する。体の大きさが大きさなので、デコピンと大して変わらないくらいの威力しかないが。そのため、春牧も大してダメージを食らった様子は無い。精神的にも。
「はっはっはっ、まぁとりあえず、大丈・・・夫だ」
しかし、春牧は途中言葉を詰まらせ、立ち止まりある一点を凝視している。その様子に、サイフェリアが、ほらね、とでも言いたげに胸をそらす。
「やっぱり、ダメなんじゃないの。ホントに、このまま出られなくなったらどうしてくれんのよ?!」
だが、春牧は、まだあらぬ方向を向いたままだ。流石におかしいと思ったのか、サイフェリアが声をかける。
「・・・・・・ちょっと、アンタ聞いてんの・・・・・・?」
「・・・・・・デカイ・・・キノコ」
「はぁ?なに言ってんの?」
春牧の意味不明な言葉に、眉をひそめつつ、春牧が向いている方を向く、そこには、
「・・・・・・・・・・・・確かに、デカイキノコね・・・・・・?」
赤黒い笠の、全長一メートルはあろうかというキノコが生えていた。
春牧は、我にかえると、ためらいもせずその巨大キノコに向かっていった、
「・・・・・・こっちの世界には、こういうキノコは普通にあるのか?」
「ど、どうかしら、私は始めて見たけど・・・・・・」
キノコは近くで見ると、横に三本、横に並ぶように短い線が二本と、その下に長い線が一本、胴の所に線が入っている。キノコの目前まで来て、ソレを見下ろしながら、春牧が恐ろしいことを口にする、
「これは、食べられると思うか?」
「無理!どう見てもこの色は毒があるでしょ?!それに毒無かったとしても気分的に無理!」
「いや、意外と・・・・・・」
「無理!!」
サイフェリアの反応を気にせずに、春牧が身をかがめると、いきなりキノコの横の三本線が開いた。
「ヴォア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ!」
二人のやり取りがうるさかったからだろうか。キノコがお目覚めになられた。
さっきまで三本の線だと思っていたものはどうやら、目と口であるらしかった。黄色く濁った目を見開いて、毒々しいまでに赤い口を大きく開き、涎みたいなものを飛ばしながら叫び声を上げる様は、キノコと言う姿もあいまって、かなり、
「うわっキモっ!!」
そう叫んで身を引くサイフェリア、
「キモイ!」
どうやら春牧も生理的嫌悪は人並みなようで、声を上げる。
ズムン
しかし、春牧は過激派だった。
叫ぶのとほぼ同時に春牧の右ストレートが巨大キノコの左目に、文字通りめり込む。山菜が辺りに飛び散ったが春牧は気にしていない。春牧は、お世辞にも力が強いとは言えないので、このキノコは意外と柔らかいようだ。
「アンタ・・・・・・良く平気で殴れるわね」
春牧の一撃に、仰向けに倒れる、と言うか、転がされるキノコ。どうにか起き上がろうともがきだすが、腕も足も無いので、そうもいかない。
「ブフゥゥゥゥ」
ソレを尻目に春牧は自分の右手を見つつつぶやいた、
「なんだ、ホントにキノコくらいの硬さしかないな・・・・・・・・・・・・フッ、雑魚め」
珍しく春牧の言うことが的を射ている。
「ヴゥオアァ・・・・・・」
倒れたままキノコは充血した黄色い目で春牧を恨めしそうに睨んでいる。そんな様子を見ながら、サイフェリアがちょっと顔を引きつらせている。
「・・・・・・確か、聞いたことあったわぁ・・・・・・見た目が大きなキノコで、生態もキノコで、強度もキノコ並みで、動きもキノコっぽく蠢いてる、不気味なだけの、物凄く弱いくせい人を襲おうとする魔物がいるって・・・・・・」
「なんだそんなに弱いのか」
春牧が左脇に抱えていた山菜を地面にそっと置いて、キノコに近づいていく、そして、膝を折るとキノコを両手で抱え上げた、
「悪かったな、いきなり殴って」
「うげっ!ちょっと、そんなの近づけ無いでよ!」
春牧がなでるように優しく笠に手を置くと、キノコが睨みつけるように春牧を見上げる、それを見て春牧は優しく微笑むと、
「そんなこと言うとでも、思ったかバカがーー!!」
勢い良く笠を引きちぎった。キノコ並みの硬さなので、春牧にも楽々だ。
キノコはそんなこと言うと思っていたのか、よく分からない悲鳴を上げている、
「・・・・・・別に優しくしたほうが良いとは言わないけど、やってること酷いわね・・・・・・」
「いや敵だし、とりあえず倒しとこうかと」
「・・・・・じゃあそれまでの優しい態度は何よ?」
「かわいい魔物がいたら仲間にするための予行演習だ」
「・・・・・・・・・・・」
サイフェリアは呆れてこれ以上何もいう気にならないようだ。
「さてと」
そう言うと春牧はキノコの笠の在った部分をを両手でしっかりとつかんだ、
「・・・・・・それ、結局どうするの・・・・・・?」
予想は出来るが聞いてみる。
「それはもちろん、・・・・・・真っ二つ!」
そう言うと春牧は、両手に逆方向に力を入れた。
真っ二つとはいかなかったが変な汁を飛び散らせつつ、二つには分かれた。
当然ながら、キノコは息絶えて白目を剥いている、春牧にここまで簡単にやられているところを見るに本当にとてつもなく弱いようだ。
「・・・・・・え、エグイわね・・・・・・」
「だが、威力は絶大だ」
春牧は、キノコの残骸の小さいほうを、ポイッ、と投げ捨て。もう片方を目の高さまで持ってきた、
「食料確・・・」
「いや、無理だから絶対に、っていうか近づけないで、とっとと捨てて」
サイフェリアの言葉が本気かつ揺るがないものだということを悟ったのか、春牧はふてくされたように少々乱暴にキノコの残骸をブン投げた。
キノコの残骸は森の中を飛んでいき視界から消えた。次の瞬間、
「ふきゃあっ?!」
女の子のものらしき間の抜けた悲鳴がキノコの消えたほうから聞こえてきた。
春牧とサイフェリアは無言で顔を合わせると、悲鳴のした方に歩いていく。すると、十歩も歩かないうちに森が終わっている、暗いせいでわかりづらかったが、どうやら意外と簡単に出れたらしい。
「ほら、僕のいったとおり、何とかなったな」
「私の言ったとおりよ。それよりほら」
サイフェリアが顎をしゃくった先には、十歳前後の女の子が、頭に変な物体を載せて、泣きそうになっていた。
最初の頃と書き方が違ってきたいるような気がします。早く丁寧にって難しいですね。
次はもっと丁寧に。
評価・感想、アドバイス等ありましたらおねがいします。