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第四話 腹が減っては話はできぬ

今回も短めです。

 正直、私は困っていた。天才と呼ばれた兄に憧れ、兄のようになりたい、と、兄と同じように、諸国放浪の旅に出たのが十日ほど前。話には聞いていたが、自分達の国を出ると、思っていた以上に、自分達より大きな種族が多い、言葉を話せる種族では、だが、特にその中でも、人間が多い。脅威はあまり感じないが、不便なことこの上ない。何もかもサイズが大きいし、お金は持ってないし、働こうにも体が小さいせいで私はなめられるし、挙句の果てには、私を捕まえようと網を持って追ってきた人間もいた。当然、丁重にぶっ飛ばしてあげたが。話を聞くと、私達の種族は珍しくおまけに小さくて可愛らしいということで、金と時間を持て余したバカどもが、観賞用もしくは愛玩用として、高い金を払って手に入れようとするんだとか。

 その人間の国の一つであるレニングラード王国と言うところで、ちょくちょく、魔王を倒すためだ、とかいって、勇者とやらを別の世界から呼んでいるらしい。人間に魔王を倒すことなんて出来ないと思うし、正直、意味ないと思うのだが。そこまで遠くないし、ちょっと勇者って言うのを見てみるのもいいかな。危なそうなら隠れてればいいし。そう思い、その王国の王都近くまで来たのだが。

 結構やばかった、主に胃袋あたりが。

 短い期間ながらも培った経験で、私は、人の居る街には一人で近づかない方がいい、ということを学習したのだが、それが仇になった。

 私は、自分で言うのもアレだが、温室育ちの箱入り娘で、知識としては知っていたものの、お金を稼ぐ方法から、食糧確保の方法まで、ほとんど、いや、全くの素人だった。お金に関しては、私の魔法の腕があればまだ何とかなるだろうが、食べ物はだめだった。私は、料理なんてしたことないし、まず食材が大きすぎる。店で食べようにも、やっぱり私には多すぎる。お金を出すときだって―――もし持っていたらだが―――普段は預かってくれるところがあるらしいからいいようなものの、私の体では一苦労だ。なにより、人目につくのは出来るだけ避けたい、私も自分がそうそう負けるとは思わないが、もし私よりも強い者が、私を捕らえようとしてきたら、かなりめんどくさいことになりかねない。

 そんなことで、今まで食料を確保できず、最近まともに食べていなかった。

 このままでは、草原の真ん中で餓死しかねない、というか、こういう問題は私達の種族がもっと積極的に世界に出ていれば解決するんじゃないだろうか。

 だだっ広いの上を飛びながらそんなことを考えていたのだが。あるものが視界に移り思考を中断する。

 対峙する剣を持った小柄な人影と三匹の狼形の魔物だった。

 人影がなにか言葉を発しながら剣を投げ魔物の中の一匹に突き刺さる。しかし、これで人影は、武器を失ってしまった。流石に見ていたのに助けなかったのでは、後味が悪いし、悪人だったら改めて叩きのめして捨てておけばいい、ということで、とりあえず助けることにする。魔物二匹がタイミングを合わせて人影に跳びかかる、その瞬間に私も魔法を発動する。横向きの小さな竜巻を起こす魔法で、名前はそのまんまだが『トルネード』、中級ぐらいに位置づけされる魔法で、人間で並みの腕ならもっと時間が掛かるだろうが、私は間違っても並と分類されることはないし、しかも使い慣れているので、これくらい一瞬で出来る、その一瞬の間に全ての構成を終わらせ、おまけに人影を巻き込まないように威力を調整できる私は優秀だ。

 竜巻が収まったので人影に近づいていく。上手く威力を調整できていたつもりだったのに、地面が削れて、草原の一部が茶色くなっている、それを見て私が思ったままのことを口にすると、人影は私が居ることに気付いたようだが、どこに居るのか分からないらしく、辺りを見回している。ただでさえ体が小さくて気に入らないのに、助けたのに命の恩人がどこに居るのかも分からないような状況にイラッときて、少し挑発的に声をかける。その声を頼りに人影が私の姿を見つけることが出来たようだ。

 人影は近づいてみると、自分と同じぐらいの少年で、荷物は手に剣の柄を持っている他は大して大きくも無い鞄だけだった。と言うか、剣は投げたんじゃなく抜けたのか。

 少年は、私のことを珍しそうに眺めていてなにも反応が無かったので、今度は指を突きつけてけしかける。それでも少年は何も言わず、何か考え込むように私を見ている。やはり私達の種族は、珍しいのだろうか。

 いきなり襲い掛かられたときの為に、いつでも魔法を使えるように身構える、

「念のため訊いておくが・・・・・・」

やっと少年が、神妙な顔つきで、ゆっくりと口を開く、私は何事かと警戒する、が、

「・・・・・・君は妖精か、それとも羽虫の精か?」

 少年がそう言った瞬間、顔面に空気の塊が直撃したのは、とっさのことで事故だった、その証拠にちょっと仰け反るぐらいの威力しか出ていなかった。故意にやれば3メートルは飛んでいたはずだ。

「いきなり何をする?!」

「アンタこそいきなり何訊いてんのよ!」

 少年は、当然のこと、と言わんばかりに、

「妖精か羽虫の精か、確認したんだ」

「だからなんで、確認するのよ?!分かるでしょフツー?!」

少年は、いかにも、何を言っている、君は、みたいな態度で、

「分からないから確認したに決まっているだろう。それに、間違えたら失礼だろう」

「・・・・・・む」

確かに、私達の種族は珍しいらしいから、見たことが無くても不思議は無い。それに、直球で、お前は妖精か、と、訊かれるより、こっちの方が警戒心が薄れる。ひょっとしたら、私達が、人前に出ればどういう扱いになるか知っていて、わざとあんなふうに言ったと思うのは、考えすぎだろうか?

「・・・・・・羽虫の精に」

うん、考えすぎだろう。

「どうしてそっちなのよ?!」

「世界の羽虫全てを統べる者だぞ、妖精より偉いだろう。で、どっちなんだ?」

「妖精に決まってるじゃない?!」

そこまで、言ったところで、急に体から力が抜けた。空腹な上に大声を上げまくっていたせいで、頭がクラクラする、羽も動かせなくなり、そのまま地面に落ちるかと思ったが、そうはならなかった、

「どうした?・・・・・・大丈夫か?」

どうやら、少年が、とっさに手を出して乗せてくれたらしい。

「・・・・・・アンタのせいよ・・・・・・」

 さっきから、大声を出させるから。と、続けようとしたのだが、

 ぐぐぅぅぅ〜〜〜

盛大な腹の虫に遮られてしまった。

 私の顔が羞恥で熱くなってくる。笑われる。と、思ったが、

「腹が減っているのか・・・・・・」

 少年は意外と真面目な声音で言うと。私を静かに草の上に降ろし、剣の柄を鞘に戻し、持っていた鞄を開けて、ごそごそし始めた。私がその様子を眺めていると、少年が何か箱のようなものを取り出し、それを顔の前に持っていき蓋を開ける、中身を確認した後、それを私の目の前まで持ってきた、

「食べるか?・・・・・・君サイズでも米粒なら食べやすいと思うが」

 箱の中には、知っている食べ物や見たことも無い白い粒が入っていた。


 今回は、新キャラの妖精の視点の後、視点を変えて、もっと続けるつもりでしたが、長くなりそうなのでやめておきました。

 妖精の名前は出ていませんが、ちゃんと考えてあります。次回出てきます。

 誤字・脱字、アドバイス、励ましの言葉等ありましたら、評価感想におねがいします。

 出来ればもっと早く更新したいですね。

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