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第二話 異世界の人は良心的?

長いですね

  俺は、自分のことは、実に平凡な高校生だと思う。見た目も中身も普通以外の何者でもない。

 少なくとも、気付いたら変なところに居て、髪と目が真っ白になっている。なんてことに遭遇したりはしない筈。

 うん。だから、今俺が覗き込んでいる、一見鏡っぽい板は、実は顔が俺に似ていて若白髪で目の病気を持っている人の良く描けた肖像画に違いない。

 この肖像画をどければ後ろにいる筈の女の子が、どう考えても自然に生まれてくるようには見えない髪と目の色なのは、髪は染めて目はカラーコンタクトなんだろう、それか、俺が知らないだけで、薄紫の髪や目を持って生まれてくる国があるということだろう。

 何でこんな所に居るのかは、・・・・・・・・・・・・多分、きっとここは病院なんじゃないだろうか、通学途中で何かあって倒れたりしたんじゃ無いだろうか。同じ高校の奴がいたから、多分そいつが人を呼んでくれたんだろう。きっとさっきの女の子は、看護士さんなんだな服装がおかしかったのは、緊急だからかな。病院にしては、レイアウトがアレなのは、院長さんの趣味だろう。

 俺が、現実と・・・いやいや、これであってるこれが現実。・・・・・・状況を自分なりに整理し終えたところで、看護士さんが肖像画の裏から回ってきて声をかけてくる。

「話をスムーズに進めるために、まず姿を確認してもらいました」

 姿?この肖像画かな。これあれか、院長さんか、若い頃の院長さん。

「それにしても、見事に真っ白だな、ちょっとうらやましい」

 院長さんのことだろうか、何か言いながら、同じ高校の男子生徒らしき奴も続いて出てきた。

「それでは、まず結論から言わせて貰います」

 未だに肖像画の前で突っ立ったままの俺の横に、看護士さんが寄ってきた。俺は、肖像画から視線を外して、看護士さんに向き直る。肖像画もあわせて動いたような気がしたが、気のせいだろう。

 真剣な表情の看護士さんに、俺も姿勢を正す。ひょっとすると、倒れて頭とか打ったとかだろうか。

「貴方には、・・・・・・この世界を救う為の勇者になってもらいます」

「だ、そうだ。よかったな!」

 どうやら、女の子は、患者さんの方らしい。


 白い頭を抱えて、ソファアに沈み込んでいる白頭を、しょうがないから慰めてやろう、と思い、声をかけてやる。

「まぁ、いいじゃないか白頭、勇者だって、英雄だぞ?」

「よくねーよ、しかも、白頭じゃねーし、さっき名乗ったろ、斉藤 裕也って」

 白頭改め、裕也が、抱えたままの頭を少しだけ春牧に向けて再び名乗る。

 現在、二人が召喚されてから二時間半くらいの時間が経っている。その間に、二人は既にここが、自分達の世界とは違うことを理解して、或いはさせられていた。もっとも、春牧は、説明の冒頭である『ここは、貴方方が元いた世界では、ありません』の部分で既に、なるほど、とか、唸っていたが。裕也は最初信じていなかったし、信じたくなかったが。例の女の子が、『これが魔法と呼ばれるものです』と言うと、彼女の手の平から、光の玉みたいなものが出てきて、しばらく漂っていたかと思うと、いきなりすごいスピードで動き出し、近くにあった木製のテーブルの一部をごっそり持っていったりしたら、信じないわけにはいかないだろう。春牧は、なにやら感激した様子だったが。どうやら、異世界なのに言葉がわかるのも、その魔法とやらのおかげらしい。 

 しかも、それだけならまだ、いや、全然よくないが。さらに悪いことに、この世界には、魔王を倒す勇者として呼ばれたらしい。ハッキリいって、普通の高校生である俺には、できないと思うのだが、一応そのための力が備わっているらしく、その証が、やっぱり真っ白になってた髪と目なんだとか。しかし、以前にも、勇者を呼んだりしていたが誰も魔王を倒せなかったとか。魔法を使って見せたのも、そうすると比較的早く異世界だと理解してもらえる、という記録が残っていたかららしい。

「裕也、か、・・・・・・勇者とかけてるのか?」

 そんなことを訊いてくる春牧を、勢いよく身を起こして怒鳴りつける、

「かけてねぇよ!しかも、おまえなんでそんなに、うれしそうなんだよ」

なんでって、そりゃあ、ねぇ、

「ほら、異世界だぞ?剣と魔法でファンタジーだぞ?面白いだろう」

そんなことを言っている春牧に脱力してしまう、

「面白くねぇよ、そりゃあ、おまえはいいかもしれないけど、俺は、下手したらこのまま成功率0パーセントの魔王討伐に向かわなきゃならないんだぞ、・・・・・・そんなに楽しいなら代わってくれ」

そう言って再び俯く裕也。そして、春牧は自分の胸をドンッと叩き、

「よし!了解した、世界は任せておけ!」

「ホントに代わるのかよ!?」 

すぐに起き上がりツッコミを入れる裕也、すると、春牧は、不満そうに文句を付ける、

「なんだ、嘘だったのか」

「いや、本音だけども!代わってほしいけども!」

 そんな二人に声をかける者が居た。

「あのー、状況が整理できたなら、続きをよろしいでしょうか?」

「あ、えっと、はい、すいません、ミルファさん」

その人物に、向き直り、言葉を返す裕也、

「いえ、混乱するのも、無理はないと思いますから」

 そういって、少し困ったような、申し訳なさそうな表情をする、薄紫の髪と瞳が綺麗な、白い、いわゆるローブっぽい服に身を包んでいる少女、ミルファ・カルネストさん。どうやら一応、17歳で春牧達より年上らしいので、裕也は敬語を使っている。

 召喚されたときに、春牧とぶつかってしまった為に、二人の説明役に、大抜擢されてしまったらしい。これが、成人男性とかが説明役をかってでていたら、裕也も怒鳴りつけるなりしていたが、相手は女の子で、しかも、終始申し訳なさそうにしているために、そう言うわけにもいかない。女の子をいじめて喜ぶような趣味は、裕也も春牧も持ち合わせていない。尤も、春牧に関しては、相手が誰だろうと怒ったりしなかっただろうが。

 とにかく、説明役が彼女であったことが功を奏して、今のところ順調に話が進んでいる。

「では、その、続きを、・・・・・・それで、ユーヤさん、お答えは今すぐになどとは、言いません。嫌だと思われるなら、断っていただいてかまいません、本当に。・・・・・・ただ、その」

 そこで、いったん言葉を切り、窺う様に裕也と、次に春牧に視線を送る、

「これは、ハルマキさんにも言えることなんですが、・・・・・・」

非常に言いにくそうにしているミルファに代わって春牧が口を挿む、

「なんとなく、予想出来るが、帰れない、とかか?」

結構重大である筈のことをなんでもないかのように言う春牧に、しかし、ミルファはすぐに否定した、

「いえ!いえ、帰れないわけではありませんが・・・・・・私達ではできないんです」

私達、というと二人を召喚した面々だろうか。いまいち分からなかった裕也が訊き返す、

「っていうと、つまりどう言う意味ですか」

「あっ、はい、つまりは、お二人を帰すための方法も、それをできる方々も存在しますが、私達は、その方法を知らないので、それができない。ということです」

さっきより詳しく言ってくれたおかげで、裕也にも理解することができた、しかし、

「なんで方法を知らないんですか?呼べたなら、帰せそうな気がするけど」

そう言うと、頬に手を当てて、なにか考えるように唸りはじめたミルファ、

「えっとですね、正確に言えば、元の世界には帰すことができます。ただ、場所の限定ができないんです。召喚する分には、出る場所は、あらかじめ決まっていますが、大まかな条件の限定はともかく、ある人物を限定して呼ぶことは、私達にはできないんです。それとは逆に、送還、・・・送り帰すことですが、送還するときは、人物を決めることは出来るんですが、送還した後出てくる場所を決められないんです。・・・・・・つまり出てきた場所が危険である可能性もあるんです」

たしかに、なんとなく納得できるような気はする、が、

「ちょっとぐらい危険でも、やってみればいいんじゃないですか?」

裕也は、出来ることなら、否、できなくとも、早くもとの世界に帰りたかった。そのためなら少しくらいの無理はしてもかまわないと思っている。

 ミルファが何か言おうと口を開くが、それを遮る様に、春牧がニヤニヤしながら口を挿んでくる、

「白頭、言っておくと、危険性はちょっとくらい、じゃないからな」

さっき言ったばかりなのに呼び方が白頭のままなのはなぜなのか、

「どうしてそんなことが言えるんだよ?」

 さっきからやたらと嬉しそうだったりしているせいか、春牧を見ているとイラッときて口調に棘が生える、しかも、どことなくバカにしたような言い方なのでなおさらだ、

「どうして、か、なら逆に聞くけどどうして君はちょっとしか危険が無いと言えるんだ?」

「どうしてって・・・・・・」

「考えても見ろ、地球上で安全な場所に出るなんてそうそう無いぞ、下手をすれば、深海とか空とか地中に出てくる。それ以前に地球に出てこれるかもわからないな、範囲が世界全体ってことなら、宇宙に出るなんて事も、いや、そっちのほうが多いか、僕もどれくらい宇宙が広いか知らないが、地球なんて針の先っぽほどもないぞ、きっと。君だって、奇跡でも起きないと星の彼方に出てくるような、方法はいやだろう?」

「それはまぁ・・・・・・たしかに」

「そう言うことだから、無事に帰りたいなら、ちゃんと探すしかない見たいだぞ」

春牧の言うとおりなのだが、しかし、

「探すって、なにを?」

裕也がそう訊くと、春牧は呆れた様に、

「話の流れでわかるだろう、僕達を帰せる方法を知っている人たちを探さないといけない、ってことであってるか」

最後のはミルファに向けられたものだ、

「はい、正確には、人ではないですが」

「人ではないと言うと?」

「そのままの意味です、彼らは妖精族と呼ばれていて、人前には滅多に姿を現しません」

 春牧も裕也も今更妖精が居ると言われても驚かない。

「じゃあ、その妖精族って言うのを、見つけ出して頼めばいいわけですか」

 裕也が若干身を乗り出して確認する、すると、ミルファはどこか残念そうに、うなずいて、

「はい、そうなりますね・・・・・・ユーヤさんは、やはり帰りたいのですよね」

「そりゃあ、まぁ」

「そうですか・・・・・・」

 そう言って、ミルファが俯いてしまったので、さすがに罪悪感があり、言い訳を試みるのだが、

「でも、ほら、俺が行ったところで、魔王を倒せるとも思えないし」

「いえ、いいんです、元から無理なお願いでしたし、・・・・・・色々と準備や伝えてくることがあるので、少し待っていてください」

 そう言うと、ミルファは立ち上がり、部屋から出て行ってしまった。


「それで、当分の目的は妖精探しになるわけか」

 春牧が、のんきに欠伸なんかをしながら独り言のように言った。

「・・・・・・まぁそうなるな」

後味の悪さからか、どこか反応の鈍い裕也、

「これで、僕も勇者パーティーの仲間入りか」

「いや、勇者じゃないんだけど」

「でも、ゲームとかだと最初は帰るつもりでも、仲間とともに旅をする中に、強い絆が芽生えて、魔王との戦いに身を投じていったりしそうだろう」

「いや、ゲームじゃないから」

「そうか、まぁ、どの道、僕は、そう簡単に帰るつもりはないけど」

「は?」

「おまたせしました。開けていただいても、よろしいでしょうか」

 丁度そのとき、ミルファが扉のむこうから声をかけてきた。両手で荷物でも抱えているのだろう、と思い、裕也が扉を開けてやる、

「ずいぶん、早いですね。・・・・・・なんですかソレ?」

そう言って、裕也が指したのは、ミルファが抱えている二振りの剣だった。

「こういうことは初めてじゃ無いので、もとから断られた場合どうするか決めてあって、私は報告するだけでいいんです。・・・それで、これは剣と言いまして・・・」

 帰ってきていきなりの質問にも答えてくれようとするミルファを、しかし、裕也が遮った、

「いや何かは、知ってますけど、どうしてそんなものを持ってきているんですか」

「それは、当然、僕達に渡すためだろう!」

剣と言う単語に釣られてやってきた春牧がためらいもせずに、目をキラキラさせながら、二振りの中の一本に手を伸ばす。そして、それをいきなり鞘から抜いて、ためつすがめつし始めた。

 春牧が手に取ったソレは、柄の部分にハンドガードの付いた、反りの無い片刃の剣―――と言うか刀だろうか―――で、刀身は分厚くは無いが、幅が広く、長さは春牧の脚と同じくらいだ。

「ふぅん、意外と重いな」

 どこか残念そうにつぶやく春牧。

 僕としては、もっと軽いほうがよかったんだが。この分だと、敵を打ち上げた後、空中で連続攻撃を決めて、最後に派手なエフェクトを決めつつとどめとして地面に叩き落したりしたかったのだが、出来そうも無いな。

 たとえ、爪楊枝程度の重さしかなくても、春牧には出来なかっただろうが。

「ユーヤさんも、どうぞ」

 ミルファに差し出され、裕也も渋々手に取る。春牧と違い、鞘から抜いていないので、はっきりとはわからないが、鞘の形からして、両刃の剣だろう、春牧とは違い、ハンドガードではなく鍔が付いている。しかし、

「全然、重くないんだけど」

もしかして、中身が入っていないんじゃないだろうか、とも思ったが、

「君は確か力が強くなっているんだろう、そのせいじゃないか?」

 剣から目を離さないままの春牧にそう言われて思い出す、いままで、歩く、立つ、座る、以外の動作をしていなかったので気がつかなかったが、力が強くなっていると言うことだった、

「そう言えばそうだったな」

 どの道、帰るつもりなので、ありがたくも無いが。

「それから、これもどうぞ」

 次にミルファが差し出してきたのは、今まで剣にばかり気を取られて、気がつかなかったが、肩から掛けていたらしい、ベルトの様な物だった。多分剣をつるすためにあるのだろう。

 春牧はそれも、さっ、と奪い取り、剣を鞘に収めないまま、ソレの取り付けを始め。そこに剣を引っ掛けるのか、金具の部分をガチャガチャやっている。

 裕也が、それを横目で見つつ、ミルファに問いかける、

「でも俺、剣なんて使えないんですけど?」

「でも、いざというとき持っていたほうが、少しはマシだと思います。ユーヤさんに関しては、振り回すだけでも威力を期待できますし」

 裕也からすれば、こんな物を貰っても困るだけなのだが。そこまで言うなら、まぁ、持ってるだけなら、とベルトに手を伸ばす。

 二人が剣を吊るし終えると―――尤も、春牧はまだ抜き身のまま興味深々といった感じで眺めていて、鞘だけが吊る下がっていたが―――ミルファが部屋の外へ出るようにと言ってきた。

「これから、妖精族探しを手伝ってくださる方々の所まで挨拶に行きます」

 そう言って、二人より少し前を歩いていくミルファ。

 部屋から出ると広くて長い廊下になっていて、壁も床も石作りで、広いが飾りっ気がなく、城といった感じではない、

「あの今まで訊いてなかったけど、ここってどこなんですか?あ、この建物が、ですけど、・・・・・・城って感じじゃないですよね」

 なんとなく、勇者といえば城、と考えていた裕也の質問に対して、ミルファは前を向いたまま、

「はい、ここは城から、と言うより、王都から人の足で三時間ほどのところにある砦です。王都では、召喚魔法も含め魔法が使えないので。ユーヤさんに勇者になってもらえた場合は、このまま王都に向かう予定でしたが。・・・・・・ちなみに、魔王の居城まではここから歩いて三ヶ月程の距離です。また詳しい地理も地図を見ながら説明させていただきますね」

 本当ならこのまま王様に会いに行く筈だったのか、いやそれより、

「三ヶ月って、遠くないですか、魔王の城まで」

しかし、裕也の疑問にミルファは首を傾げ、

「そうですか?そこまで遠くないと思うんですが。あんまり近いようでは、異世界から誰かを召喚する余裕なんて無いと思いますし」

 それはまぁ、たしかにそうだろうが。

 そこで春牧が、抜き身の剣をブラブラさせつつ、口を挟んできた。はっきり言って、かなりアブナイ人に見える。

「イメージ通りとは限らないから、訊いておくけど、その妖精って言うのはどんな姿をしているんだ?」

「はい、剣はしまっておいて下さいね。妖精族は、形は人間と大して変わりません、地域によって色々違いますが、共通していることは、大きさが手の平ぐらいで背中に羽が生えていると言うことでしょうか」

「ふん、大体イメージどうりか。地域によっての違いと言うと、例えば?」

「例えばといいますか、それしか大きな違いは無いんですが、羽の形が違っています。虫のようなものもいれば、鳥の様な羽を持ったものもいます」

 どうやら、妖精の姿に関しては、向こうの世界のイメージと大して変わらないらしい、これなら、見つければすぐわかるだろう。

「それじゃあ、その妖精っていうのは、結構簡単に見つかるもんなんですか?」

 裕也の若干希望的観念を含んだ問いを、ミルファは残念ながらと言い、申し訳なさそうに。

「妖精族はそう簡単に人前に姿を現しません。今までの記録では、最短で半年、最長で六年弱、妖精族を見つけるのにかかっています」

「は?」

つまりは、今までの記録を見ると、帰るのに少なくとも半年以上はかかるらしい。しかも、さらに、と、ミルファが続けて、

「見つけたからと言って、妖精族が全員送還魔法を使えるわけではありませんし。たとえ使えたとしても、帰してくれるかは、彼らしだいなので、気に入られなければ、帰してもらえないんです」

 そこで、やっと剣を鞘に収めた春牧が、どことなく嬉しそうに、拳を握りしめ、

「らしいぞ、これはもう、一刻も早く帰るため、魔王を倒しに」

「いかねーよ」

 言い終わる前に、否定する裕也、すると春牧は、心底つまらないとでも言いたげな顔をして、今度は、鞘に入れたままの剣の、柄の辺りを弄くり始めた。

 それにしても、さっきから誰とも会わないと思い、裕也はミルファに訊いて見る事にした。

「なんだか誰もいませんね」

すると、ミルファはさも当然と言うように、

「ええ、ほとんどの方はこの先に集まっていますから。・・・・・・はい、つきましたよ」

そう言って、立ち止まったミルファの前にあるのは、大きな木製の扉だった。それをミルファがノックする。

「来ていただきました、開けてください」

 外開きなのであろう扉は、軋むような音を立てて、ゆっくりと開いていく。どうやら扉は外に続いていたらしく、三時間弱ほどの間ずっと室内にいた三人は目を細めて、手で日の光を遮りながら、扉をくぐる。

 辺りを見回すとざっと見ただけでも、百人以上の人が、二人、本人は気付かないが、特に春牧に好奇の視線が向けられている。春牧は知る由も無いが、彼らにしてみれば、何回も召喚されている勇者より、史上二度目の巻き添えを食らった春牧の方が物珍しいのだ。

「私を含め、ここにいる全員が、今回の妖精族の捜索に参加します」

 ミルファが、体ごと春牧たちに向き直り、少しだけ笑みを浮かべながら言った。裕也と珍しく春牧も驚いたように、目を見開いている。

「多いですね」

「僕は、断った勇者ごときに、割いてやる人員なんていないと、せいぜい十人ぐらいしかいないと思っていたんだが」

 春牧の言葉に、ミルファが逆に驚いたように、

「そんな!元からこちらの勝手で呼び出したんですから、恨まれるのはこちらの方でしょう。これでも物凄く少ないくらいです、もっと人手があれば、もっと早く見つけられるでしょうけど・・・・・・」

 そういって俯いてしまうミルファ、どうやら異世界の住人は、かなり人が良いらしい。そんな対応をされると、なんだか自分が迷惑を掛けているような気がして、眼前の人たちにしどろもどろになりつつ頭を下げる、

「・・・・・・えっと、それじゃあ、その、よろしくお願いします」

 すると、ミルファが再び二人に背を向けて、妖精捜索隊に指示を出す。

「皆さん、それでは、さきほどの班に分かれて、準備を行って下さい」

 その言葉で、春牧達をチラチラ見ながらではあったが、十数人ごとに分かれて解散していく。その様子を腰に手を当てて、なぜか偉そうに眺めながら、春牧がミルファに、いかにも早く何かしたくて仕方ない、とでも言うような声音で、自分達のパーティーを訊き出そうとする。

「それで、僕達は誰のところに行けばいいんだ?」

「はい、えっと、部屋を用意してありますので、そちらで、寛いでいてください」

「?いやだから、僕らは誰と一緒に妖精探しをすればいいんだ?」

 それを聞くと、ミルファは微笑んで、御安心ください、と言い。

「ハルマキさん達は、捜索に参加いたしません」

「・・・・・・・・・・・・は?」

 一瞬何を言われたのか、解らなかった春牧が訊き返すと。ミルファはさっきより笑みを強くして、

「勝手に呼び出しただけでも、迷惑を掛けているのに、帰るためのことまで手伝ってもらうわけにはいきません」

 その言葉を聴いて、裕也は胸をなでおろす。が、春牧は、

「つまり、僕達は、妖精が見つかるまで、ゆったりのんびり暮らしている、と?」

 その言葉に、ミルファはにっこりと、これで良かれと思って、言葉を返す、

「はいっ」

 春牧は、少なくとも異世界にやって来たと知ったときの五百倍くらいは衝撃を受けたような顔で後ずさった。

 今の言葉は、僕が夢見ていたステキな異世界冒険ライフを否定するものだ。つまりは、仲間とともに旅をしたり、立ち寄った土地で何か騒動に巻き込まれそれがきっかけで新たな仲間を手に入れたり、剣と魔法で戦ったり、じきに魔王との戦いに巻き込まれていったり、ストーリーの進行で新しい必殺技を覚えたり、エンカウントの最中新しい技を思いついたり、レベルアップしたり、登場キャラとのラブコメ要素があったり、眠れる力に目覚めたり、しない。ということだ。

 そんな、それじゃあ何のために、僕はここに来たんだ。

 たまたま巻き込まれただけなので、理由は無い。

 春牧は、頭を抱え、ひょっとすると生まれて初めてかもしれない、心からの悲痛な叫びを上げた。

「ぬぁぁあんだとおおぉぉぉぉぉーーーー!!!」

 本来ならそれは、異世界に来たと知ったときに上げるべき筈だが。

 春牧の絶叫に、その場にいた全員が動きを止めた。

 何はともあれ、ここから春牧のステキな異世界冒険ライフは始まるのだろうか。

すいません、なんだか長い上グダグダだった様な気がします。

どこら辺で区切れば良いのかわからず、長く読みにくくなってしまいました。

内容は、なんだかグダグダで表現力も乏しかったような気がします、もっとすっきりまとめたほうがよかったですね。

それから、内容ですが、砦でのんびりなんかじゃなく、ちゃんと春牧が思っていたようになります。

これからは、一話分を短くして、更新を細かく出来るようにしたいです。それのほうが名前もよく出てきますし。

評価・感想や、ここはダメだから、こうすると読みやすい、と言うのがあったらお願いします。

まだまだダメですが、見守っていてください、この作品を書き終えるまでには、まともに書けるようにしていたいので。

それでは。


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