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第十四話 やっぱり敵には特殊能力があったほうがいい気がする

 更新が遅れましたが。予告どおり、新キャラでパーティーメンバーです。名前はまだ、な・・・・・・出ません。

 森の中を、人間では到底出せないような速度で、一つの影が駆けていく。その影は、線が細く長い髪がなびいていることから、女性だと思われた。

 魔物には、その上位種と言われている存在がいる、それは魔族と呼ばれ、人に近い形をとることが出来る。ただあくまで、とることが出来るというだけで、生まれたときからその姿なわけではなく、魔物と似たような姿をとることもある。そのときは、基本人の姿のときより数倍くらいは力が強くなっている。ただ、だからと言って普段から魔物の姿をとっている者はほとんど居ない、理由は単純で、一部例外を除いて、魔物の姿の方が人の姿のときより、場所をとるからだ。

 当然、上位種と言うくらいだから、人の姿をしていたとしても、魔物よりずっと強い、魔力も人では遠く及ばない。だが、魔物との最も大きな違いは、その力だ。一般的に魔族と呼ばれる者達は、個々が特別な能力を持っている。その能力は人によって様々で被っていることもあるが、どれも自分に有利なものばかりだ。魔力や腕力が無くても、能力によっては、かなり上の部類に入ったりする。私の知っている魔族の中では、あらゆるものから水分を奪ったり、魔物を従えたりする力を持っている魔族が居た。魔族の知り合いが二人だけと言うわけではなく、教えてくれたのが二人だけだった。自分の力を明かすと言うことは、手の内をさらけ出しているのと同じで、力を持っていても、人前で使う者はあまり居ない、大体の者は本当に最後の切り札と言った感じだ。魔族全員の能力を把握しているとすれば、それは魔族のほぼ全員を支配下に置いている魔王ぐらいだ。

 そんな魔族の中で私は、他に類を見ないくらい下の部類に入る。

 腕力だけなら、人の姿のときは並み居る魔族の比ではないが、私には魔力がほとんど無い、それこそ静電気を起こすのがやっとと言うくらいだ、おまけに、魔物の姿をしているときと、人の姿をしているときで、見た目と、飛べるようになること以外大した差が無い。だが、何より私には、魔族なら必ず一つは持っているはずの能力が無い。魔物の姿をとっている時なら、空を飛ぶ事も出来るが、それを能力とは言わない、そんな魔族は腐るほど居る。

 だから、私は魔族の中で孤立しているし、本当に魔族なのかも疑わしいと思われている。

 兄は、普通の・・・・・・寧ろ腕力も、魔力も、能力も全てが魔族の中でトップクラスで、性格を除けば完璧といっていいくらいなのだ。だと言うのに、なぜか同じ親から生まれた私は腕力以外は本当に皆無で、兄も私のことが気に入らないらしい。

 だから、こんな手間ばかり掛かって、それでも意味があるのかどうか解らない『お使い』を兄に押し付けられる。

 私は、ソレが入っている背中に背負った袋を背負いなおして、溜息を吐きたい気分になる。

 私に押し付けられたお使いと言うのは、所謂『魔剣』と呼ばれるものを手に入れてくることだった。

 ただ、その魔剣が凄い伝説とかになっているかというと、そんなでもなく、せいぜい地方のちょっとした言い伝え程度で、そもそも、本当にあるのかどうかも判然としなくて。物凄い力を秘めているかというと、いまいち判らなくて、ひょっとしたら何かあれば儲けものぐらいな感覚で、そのくせやたらと遠い所までその魔剣を取りに行かされた。

 つまるところ、パシリついでの嫌がらせだ。

 実際ソレらしきものはあったわけだし、かなりすんなり手に入ったけど。

 しかし、またこの魔剣が気持ち悪い。封印とかそう言うののつもりだろうか、分厚い肉の塊のようなもので、まるで鞘のように刀身がすべて覆われている。出来れば触るのもイヤだったがその肉の塊を剥がそうと、引っ張ったり、焼いてみたり、引っかいたりしてみたが、傷一つつかなかった。ちなみに、ひんやりしていた。

 今も、布越しとは言え、あんなものを背負っていると思うと、悪寒が走る。

 魔族の拠点までは、私の足でも休憩を含めれば、あと一ヶ月ほど掛かる。魔物の姿で行けば早いだろうが、もしもそれが人に見つかったりすると嫌なので、今は人の姿をとっている。人に見つかったとしても、そう簡単にやられないとは思うけど、必要の無い争いごとはしたくない。

 そもそも、魔族は人の敵だと言われているが、実際に人を襲っているのは、魔王を筆頭に魔族の三割程度だ。しかも、その五割が娯楽のような感覚で、四割は付き合いだ。ただ魔王を含めた残り一割は、私怨で動いているらしい。

 他人事のように言っているのは実際にそうだからで、人との争いに興味が無い者にとっては、遠い所で起こっている事のような感覚だ。進んで戦おうとも思わないが、魔族というだけで嫌って、というか襲われそうになるのだ、人が死ぬことを可哀想だとは思わない。

 それでもこんな魔剣らしきものを運んでいるのは、断ると後々兄から色々虐めをうけそうだからで、魔剣の力で人間どもを一掃してやる、とかそう言うのではない、と言うかこんな肉の塊がへばりついた武器らしきものにそんな力は無いと思う。実は錆びてるんじゃないだろうか。

 まぁ、実は、ちょっとゆっくり帰ってもいいかな、と思っている。遠くへ行かなければいけないとはいえ、兄から離れていられるのはかなり嬉しい。ただ、あまり遅すぎるとまた何か言われそうなので、見極めが肝心だ。

 その時、やっとと言うべきか、どこかからベキベキと木が折れるような音がしていることに気がついた。実際はベキベキなんて生易しい音でなく、もっとやばい感じの音なのだが。

 大体の予想はつくが、音の発生源を確認するために、近くの木に登る。登ると言っても、手を使ってよじ登るわけではなく、太い枝に飛び乗ったわけだが。

「やっぱり・・・・・・」

 音のする方を見ると、案の定、木をへし折りながら突進している魔物の姿があった。

 全長4メートルはあるだろうか、全身が黒い毛で覆われていて、かなり凶悪そうな黄ばんだ大きな牙を持った、猪と似た形の魔物だった。

 魔物のサイズを考えると、最初からこんなに小さな森に居たわけではなく、どこかから流れてきたのだろう、何かの原因で苛立っているようだった。

 と、其処まで考えた所で、猪と目が合った、気がした。

 その瞬間、私のことが気に入らなかったのか、猪がこちらに方向転換して突進してきたことから、やっぱり目が合っていたのだろう。

 魔族は魔物を従えていると思われがちだが、実際はそうでは無い。魔物の中には人語を解するものも居るが、あくまで基本は獣だ。野生の猛獣が人間に懐かない様に、小さい頃から育てたりしていないと魔物が懐くことは無い。そもそも、魔族は魔物の上位種というが、それは人が勝手に言っていることで、同じなのは根本だけで、かなり大雑把な分類がされているのだ。

 無謀にも、その猪は真っ直ぐこちらに向かってくる。私は、それを迎え撃つために、木を飛び降りる。

 猪の速度は速く、距離はすぐに縮まる。

 私も、魔族としては大したことはないが、あんな魔物に負ける事は無い、片手であしらえるくらいの自信はある。

 巨大な魔物が木々をなぎ倒し迫ってきていると言うのに、全く動かない少女は、一見、恐怖ですくんで動けないでいるように見えるかもしれない。しかし、実際はそうではない、それはあくまで、人であったらの話しで、人にとってはソコソコ強いこの魔物も魔族からすれば、飛び回るハエと大して変わりない。

 仮に、今此処で私が、本当に非力な人間の少女だったとしても、咄嗟に助けようとする者はまず居ないだろう。今から助けようとしても、自分も巻き込まれて死ぬのはほぼ確定事項だ、そんな状況で私を助けようとする人間など居ない。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あんまり。

 魔物が目前に迫り、衝突まであと二秒ほどとなったとき、私が手を伸ばす。それとほぼ同時、私から見て右から、かなりの速さで、剣だろうか、何かが真っ直ぐ飛んできて、魔物の目に柄まで突き刺さる、恐らく脳まで届いているだろう。あれだけの大きさの魔物なら如何に眼球と言えども、かなりの強度があるはずだ、それをあんなにあっさり貫くと言うことは、少なくとも人間だとしたら、かなりの実力者だろう。

 剣が飛んできたほうを、確認しようとしたが、それより先に、身体に軽く衝撃が走った。方向から魔物ではないし、何より衝撃が小さく、どうやら、抱きかかえられているようだった。

 自ら動くことを止めても、勢いがついていた魔物は、そのまま地面をえぐるように、土ぼこりを立てすべっていって、木をいくらかなぎ倒してからやっと止まった。

「・・・・・・大丈夫か?」

 私の顔を覗き込んで、声をかけてくるこの人が―――実際そうでなかったとしても―――助けてくれてのだろう。

 その人は、少し兄と似て、暗い紫の髪と瞳と、繊細な感じのする顔立ちだった。ただ、違うのは、射抜くような鋭い視線の中に、本物の心配と安堵が浮かんでいることだろうか。


 はい、予告どおり、新キャラで(レグルス君とこの)パーティーメンバー登場でした。

 ・・・・・・はい、次話で春牧のほうのがちゃんと出てきます。

 今回はちょっと解説チックでしたね。笑い要素もあまり無いです。

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