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第十話 ライバルが悪者とは限らない

 いろんな意味で、ライバル登場です。でも、一緒に旅はしませんよ。

 森の中を、十七、八歳くらいの、少年が歩いていた。

 少年の顔立ちは、整っていて男らしいというより繊細な感じのする顔立ちをしている。しかし、なよなよしている、と言うのとも違っている。切れ長の瞳は、暗い紫で、眼光が鋭く、まるで睨みつけるように、真っ直ぐ前を見ている、同色の髪は、女性のようにさらさらしていて、襟足まで伸びている、少し血色の悪い唇は、固く引き結ばれていて、肌は、色白だ、身体つきは、細いが引き締まっていて、全体的に、冷たい印象を受ける少年だった。

 しかし、見た目の印象とは裏腹に、好きな言葉は、正義、将来の夢は、正義の味方、だったりする。

 実は、正義の味方としての一歩を踏み出すために、先日、召喚されたらしい勇者のところに行ったのだが。どうやら、その勇者が元の世界に帰りたがっていて、そのために、妖精族を探していると聞いたのだ。彼は、きっと、元の世界に帰れなくて、さぞかし困っていることだろう。正義の味方を目指すものとして、困っている人を放っては置けない。ということで、独自に、妖精族を探す旅を開始したばかりだったのだ。どうせ探すなら一緒に、と、勇者の居る砦の人に薦められたが、妖精族が見つからないのは、実は、人見知りが激しくて、人がいっぱい居る所が、苦手なためではないか、と考え、一人で行動しているのだった。

 この少年、現在結構困っていた。

 先ほどまで、近くの町から伸びる街道を、歩いていたのだが、丁度、腹が減ったな、と、考えていたときに、視界の端に、野ウサギが映り、獲物発見、と思い、追いかけていたところ、気がついたら、森に迷い込んで、迷子になっていたのだ。

 迷子になっただけなら、そこまで困らない、しかし、彼は今、腰に挿した剣と着ている服以外、何も持っていないのだ。というのも、今朝、町を出る前に、武器屋らしき店の前を通りかかったときに、ヨボヨボのおじいさんが、膝を付いてうなだれているのを発見し、何事かと思い、声をかけると、なんと、店の手伝いの仕事の依頼を受けた輩に、大事にしていたコレクションをことごとく壊して捨てられた上、食料や食器などを盗まれたと言うのだ。そのおじいさんを不憫に思い、特に考えもせず、持ち物を全てあげてしまったため、現在一文無しなのだ。

 しかし、犯人の特徴を聞き出し、見つけたら必ず謝らせて見せる、と誓うと、泣きながら、『お前さんのような、気概のある若者も居るなら、まだ捨てたもんでもないのぉ』と言って貰えたので、それだけで十分だ。

 しかし、それとコレとは話が別、早く森から脱け出さねば、このまま餓死、ということも、ありえなくはない。

 そのため、現在、森の出口を探している真っ最中なのだ。

 そのとき、不意に、背後から、風も吹いていないのに、木の葉がこすれあうような音がした。魔物か、と思い、急いで振り返る。

 その瞬間、孫の手が回転しながら飛んできて、右目に直撃した。

 両手で目を押さえて、うずくまり、これはちょっとヤバイかもしれない、と冷や汗を流していると、その孫の手が、飛んできたほうから、声がした。

「ん、あった。・・・・・・お?なにやら死んでる」

「死んでないわよ」

 若い男の声と、少女のような声だった。

「なにっ?まだ息があるのか?大丈夫か!?誰にやられた?!」

 男が芝居がかった声とともに、肩に手をかけてくる、

「・・・・・・いや、多分アンタだと思うわ」

 少女は呆れたような声で言って、一つ息をつく。

 目を押さえたまま顔だけをを上げる、声の主を確認する。一人は、孫の手を持った黒髪黒目の少年、もう一人は、その肩に乗っている・・・・・・

 その人物を確認した瞬間、ガバッ、と跳ね起きる。

 目の痛みも忘れ、いや、我慢して、その少女に、妖精族に詰め寄る、

「おい、妖精族のお前」

 すると、少女は、自分を指して、戸惑ったように言った、

「わ、私・・・・・・?」

「そうだ、お前だ」

大きく頷いて、その妖精族を見つめる。本人が見つめていると思っているだけで、はたから見れば睨んでいるようにしか見えないが。

「お前に、用がある、俺と一緒に来てもらいたい」

 いきなりな上、主語が抜けているそのセリフを、正確に理解できた者は、本人以外に居なかった。


「ダーメ」

 なんとも緊張感のないセリフで、断ったのは、サイフェリアではなく春牧だった。

 孫の手が、当たったらしい人物が、いきなり迫ってきたため、サイフェリアは、固まっていたのだが、その一言で、我にかえった。そして考える、相手は恐らく、たまたま自分を見つけて、これ幸いとばかりに、攫って売り飛ばすつもりなのだろう。それは避けたい。

「そうよ、渡しちゃダメよ」

 サイフェリアがそう言うと、春牧が、意外と優しくサイフェリアを押さえて、大股で一歩下がった。

 それを見て、少年は、なぜついて来るのを拒むのか考える、そこでやっと、まだ、ついて来て欲しい理由を話していないことに気がつく、

「安心しろ、害意はない。勇者を元の世界に帰すのを、手伝って貰いたいだけだ。お前が、送還魔法を使えなくても、探すのに役には立つはずだからな」

 その言葉に、サイフェリアは疑いの色を示し、余計に警戒する。春牧に至っては、それでは、勇者の仲間との絆が芽生えて魔王を倒しに、という、計画が台無しになってしまう、と思い、もう一歩さがった。

「それ、本当・・・・・・?怪しいわね・・・・・・」

「勇者を帰すんだったら、なおさらダメだな」

 そう聞いて、少年がなぜなおさらダメなのか考える、と、そこで、もう一度春牧の格好をよく見てみる。黒髪黒目、歳は十五、六歳ほど、見慣れない格好、

「お前・・・・・・最近武器屋で依頼を請けたか?」

「ん?おぉ、そうだが、何で知ってるんだ?」

 不思議そうにしている春牧を無視して、考えをまとめる。一人暮らしの老人をいじめる、平気で物を盗む、勇者を困らせたい、=悪者、しかも、魔王に与している。と言う式が、いとも簡単に、完成した。

「お前・・・・・・魔王の手先かっ・・・・・・?!」

「どうして、そうなるの?!」

 少年の頭の中など、知る由もないサイフェリアが、訳がわからないと叫ぶが、春牧は悪乗りして、

「フッ・・・・・・もし、そうだと言ったら?」

 芝居っ気たっぷりに言い放った。悪役っぽいセリフが様になっている。サイフェリアが、顎を蹴ってくるが、気にした様子はない。

「・・・・・・ここで、倒す・・・・・・!」

 少年がそう言って、目から手を離し、片目をつぶり、剣を引き抜くと、春牧も孫の手を構える。この時点で、既に決着は付いていそうだが。サイフェリアは、とりあえず、危なくなったら助ければいいか、と魔法を放てる準備だけはしておく、

「しかし、いいのか。まさか、片目がまともに使えないで、この僕に勝てるとでも?次は、目に当たるだけでは済まないかもしれんぞ」

 それを言うなら、孫の手で剣に勝てるとも思えないが、春牧は、いざ戦いになっても、楽勝だ、と思っていた。対して少年は、春牧が孫の手などを使っているのは、それで十分だと考えている、と思っており、必要もないのに警戒する。

「くっ、だが、勝てなくとも、悪を見過ごすわけには・・・・・・」

 春牧の余裕に、ありもしない力の差を感じ取ったのか、悔しそうに、歯を食いしばって、方目をきつく閉じる。春牧は、それを見下したように、言い放つ、

「バカめ、ここで貴様が死ねば、僕が魔王の手先だと知る者はいなくなる、同じことだ。しかし、そうだな、戦う意思がないなら見逃してやってもいい」

 その一言で思い出す、おじいさんとの約束、ここでやられれば、春牧に謝らせることは出来なくなる。

 剣の切っ先がゆっくりと下を向いていく、それを見て、春牧が背を向けて歩き出そうとする。それを、少年が呼び止める、

「ま、待てっ」

春牧は顔だけ振り向いて、次の言葉を待つ、

「名前・・・・・・名前は何だ?」

少年に聞かれ、春牧は、表情を変えないまま、

「春牧だが、親しみを込めて、ハルと呼んでくれてもかまわない」

「ハル・・・・・・ハルだな」

少年は、春牧を睨みつけると、

「俺は、レグルス・ラニアータだ、覚えておけ、次ぎ遇ったときは必ず・・・・・・」

そう言って、自分も春牧に背を向け小走りで森の奥へ消えていった。

 

 レグルスが、ちゃんと遠くに行ったことを、確認した後、サイフェリアが噴出した。

「アンタもバカだけど、今の奴もかなりバカよねー、あんなので、コロッと騙されて」

春牧もニヤニヤして、

「いやでも、面白かったぞ。悪の手先だと思い込んでたし」

 相手は、真面目にやっていたというのに、春牧は、遊んでいただけのようだ、解りきったことだが。

「さてと、それよりも、そろそろお腹空いたわ、御飯作りなそいよ」

 レグルスをからかったことで、少し機嫌が回復したのか、サイフェリアがニヤニヤ笑いながら言う。

「はいよ、食材もあることだし、あ、火は君が点けてくれよ」

「わかってるわよ」

 とりあえず、醤油はないし、塩コショウで野菜炒めでも作ってみるかな、と春牧はリュックの中をあさり始めた。

 そこへ、

「なにっ?またこの場所に戻ってきたのか?!」

先ほど、消えていった方とは、別の方向から、レグルスが現れた。

 春牧と鉢合わせて、慌てて引き返そうとするレグルスを春牧が呼び止める、

「君、レグルス君、せっかくだから、君も食べていきなさい」

「えーーっ、勿体無いじゃん」

 サイフェリアから講義の声が聞こえるが、食事は大勢で取ったほうが、いいような気がするので、レグルスを誘うのを、優先させる。

 春牧にいきなり食事に誘われた上、さっきと全然雰囲気が違うので、かなり戸惑ったレグルスだが、腹も減ったし、多分、今更何もしてこないだろうし、何より、敵の食料を減らす、ということで

「・・・・・・じゃあ、少しだけ」

 結局、レグルスは春牧よりも多く食べた。

 これから先、彼は、旅先で、悪の手先と信じて疑わない春牧と、度々出会うことになる。

 

 新キャラ出ましたね。前も言ったように、春牧のライバルです、バカっぽいですけど、実力はそこそこなんです、春牧を秒殺出来るぐらいには、強いです。これから度々出てくると思います。出てくるたびに、本人は、真面目にやってるつもりでも、ほとんど春牧に受け流されると思いますが。やるときはやるって、キャラにしたいんです。春牧も。

 今回は、いつにもまして、グダグダだった気がします、途中から、いまいち訳がわかりません、でも、レグルスの登場はこんな感じにしたかったんです。バカっぽさを出すために。

 今更ですが、お金の単位、イクスですが、これは、英語の出費と言う意味の、言葉から取っています。どんなだったかは、忘れましたが。

 今回は、後書きが長かったですね。

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