勇者とおまけ召喚
それは、この国の歴史で幾度も繰り返された儀式。
広く薄暗い部屋の中、床に描かれた魔方陣が淡い光を放っている。そして、十数の影がソレを取り囲むように立っている。
私がこの儀式に参加するのは、二度目だ。
これは、召喚の儀。魔王を倒す異界からの勇者を呼ぶための儀式。
しかし、今まで成功したためしがない。召喚が、ではなく魔王を倒すことが、だ。
今まで召喚された者は、誰一人魔王に勝てなかった。それどころか魔王と戦おうとする者のほうが少ない。当然といえば当然だ、知らない世界にいきなり呼び出されて、魔王を倒せなどといわれれば誰だって嫌だろう。
しかし、こちらも誰彼かまわず呼んでいる訳ではない、勇者となれる素質のある人物に限定して呼んでいる。彼らは皆こちらの世界に来ると、髪と瞳の色が真っ白く変色する、そして、常識外れの魔力を持ち、身体能力も数倍に跳ね上がっている。本人達がいうには、髪や瞳は元は違う色だったと言う、魔力はどうか知らないが、身体能力が上がっているのは確からしい。
一度だけ巻き込まれて召喚された者がいたが、その人物は、見た目も身体能力も元のままであり、魔力も人並みだったと記録に残っている。
そのために、純白の髪と瞳は勇者の証となっている。
魔方陣の輝きが徐々に強くなっていく。
しかし、と私は思う、彼らを本当に勇者と呼んでいいものだろうかと、私からすれば、彼らは生け贄のように思える。
もしかしたら、次は魔王を倒せるかも知れない。という希望を捨てきれないでいる私達に、少しでも希望を与えるための、あるいは諦めをつけさせるための、生け贄。
そんな彼らを哀れだと思う。それでも私がここにいて、勇者を呼び出そうとしているのは、私も希望を捨てきれないでいるからだ。
・・・いつか。
魔方陣はいよいよ部屋全体を照らすほど強い光を放っている。
いつか、本当の勇者が。
視界が白く塗りつぶされる。
私達を救ってくれるんじゃないか、と。
そして光が収まり、まだ眩んだままの目であたりを確認しようとする。しかし、
「おっと、ゴメ・・・んぉ!?」
なんとなく気の抜けるような声とともに、私の体に何かがぶつかった、しかも結構な勢いで、
「っきゃあっ!?」
珍しく、というか久しぶりに女の子らしい悲鳴を上げて尻餅をつく私。その私にぶつかってきた何かが、私に声をかけてきた、
「えっと、大丈夫ですか?」
私は声の主を確認する、そこには私と同じか、少し年下くらいに見える少年が、私の顔を覗き込んでいた。その髪と瞳は両方とも黒い。そして、ふと彼の後ろに眼を走らせると、当惑げに辺りを見回す少年が居た。歳は私と同じくらいで、髪と瞳は、真っ白だった。
歴史上二度目のまきぞえ召喚だった。
初めてなので、誤字・脱字や文法が間違っているところもあるかと思いますが、これから頑張っていきたいと思います。
まだ無理でしょうが、話が進んできたら、感想などもらえるとうれしいです。
できるだけ早く更新できるようにしたいです。
よろしくおねがいします。