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師匠は自称一般市民  作者: 猫宮蒼
五 魔王の章

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魔剣使いと戦闘狂



 かつては神殿だった場所。しかし今は内部にまで植物が入り込み、床は木の根が覆いつくしている場所すらある。この木の根が勝手に動いて襲い掛かって来るような事がないのだけはまだいいが、進もうと思った場所が塞がっているというのは中々に面倒であった。


 時としてそういった場所は焼き払って道を強制的に切り開いたりもしたが、それなりの距離を歩いたような気がするものの未だに誰とも遭遇する気配がない。


「なぁ、これ本当にこの先に誰かいるのか?」

「そのはずなんですけど。使い魔同士の位置をこっちで探ってみましたけど、ここ進めばそのうち誰かしらと遭遇できるはず、なんですよ?」


 レオンが使い魔の位置をある程度把握しているとはいうものの、だからといって建物の内部を完全に把握しているというわけではない。実際こっちにいます、と言われて突き進んだ先は行き止まりになっていたり道が塞がっていたりで遠回りする事だってあった。建物の壁をぶち抜いて突き進めば一番手っ取り早いのだろうとは思うが、結果としてあまり大きな物音を立てて魔神ウルにこちらの居場所を知らせるような真似をするのは望むところではない。

 仮に壁をぶち抜いて突き進むのが最も手っ取り早い手段であったとしても、私がそれをやるつもりはないが。力を無駄に消耗するのは後の事を考える限り、決して得策とは言えないからだ。


 使い魔の口を通じて向こうの様子を知る事ができるのはいいが、向こうも大人しく同じ場所に留まるわけにはいかないと思ったのだろう。周辺の様子を探りつつ、他の者たちとの合流を試みるとそれぞれが行動を開始したようだ。向こうにいる使い魔たちもそれぞれ合流に向けてなるべく道案内を務めているようではあるが……そのナビがどれだけ使えるかは疑問でしかない。



 そうして誰とも遭遇しないまま突き進んでいった結果。

 恐らくは神殿の中心部とも呼べる場所へ到着してしまったらしい。

 本来ならば祭壇には神器と呼ばれるような物が置かれていたのかもしれない。とはいえ、魔神ウルを祀るにあたっての神器とは? という話になるが。

 どのみち今となっては何があるわけでもない、ただの開けた空間でしかない。


「疲れたので休みませんかー?」

 こちらに尋ねるような言い方ではあるが、既にレオンはここで休憩をとる事を固く決めてしまったようだ。よっこいせ、と言いつつ中央にあった祭壇に腰かけている。

 こいつを置いて進んでもいいが、後々また合流しなければならない事を考えるとあえてここでこいつを置いていくメリットが何もない。見ればこの部屋、他の通路へ続く扉がいくつかあるようだし、恐らく、もしかしたらではあるが、あいつらもそのうちここに到着する可能性が高い場所である……かもしれない。

 そう考えるとここで休憩というのはまぁ、理にかなっている、と言えるような気が。

 万が一ウルがここにやって来たとしても、逃げ場は他にもある。一方通行であるならば終わっているが、ここからなら逃げ道もそれなりにありそうだ。などともっともらしい事を考えて、私もレオンの隣に移動した。

 祭壇に座るにはレオンが既に座っているため窮屈なので、私は側面に背を預ける形で寄りかかる。


「んーっと、他の使い魔たちもそれなりに合流しつつあるようですねー。ちょっと見てみますか?」

「見る? 何を言っている」

「えーっと、こういう感じで」


 レオンが何やら呪文詠唱を開始して、術が発動する。レオンの目の前にぽっかりと丸い光が浮かび、そこに何やら景色が映し出された。

 ……遠見の術、に近いものだろうか。本来ならば大きな鏡や水鏡などを用いて発動させる術ではあるが、レオンは使い魔の目を通してそれを発動させているらしい。

 ……いやホント、こいつ何で当時私の側近にいなかったんだ? こういう便利な能力ある部下とか思えば私の周囲にはあまりいなかった事が悔やまれる。

 いざとなれば自力でこういう事ができなくもないが、やはりそれなりに労力がな……


 レオンの術によって映し出された景色は、先程まで私たちがいた神殿内部の通路と似たり寄ったりの場所ではあったが、恐らく私たちが通っていない場所なのだろう。かつんかつんという規則正しい物音がして、その音の発生源を使い魔が視界に収めたのだろう。

 カノンの後ろ姿が映し出された。

 そこから徐々に近づいて、横、真正面へと映し出されるものが変化する。


 多少の擦り傷はあるが、カノンは一応無事のようだ。


「やっほーカノン、とりあえずは大丈夫そうですねー」

「……レオンか。お前今どこにいるんだ?」

「ボクたちは何か祭壇のある所ですね。これ多分神殿の中心部だと思いますよー」

「中心部か。……合流するのであれば、中心部なら恐らくどこからでも繋がってそうだしまぁ、合流地点としては無難な所か。とはいえ、ここからどこに行けばそこに着くかはわからんが」

「あ、一応使い魔がナビってくれると思うのでー、その子たちについてって下さいー」


 カノンの方からはこちらの姿が見えていないらしくやや不思議そうに使い魔であるコウモリを見て、それから大丈夫なのか……? と言わんばかりの顔をしていたものの頷いた。

 こちらからはカノンの様子がばっちりなので、カノンの周囲を飛んでいるコウモリたちの姿を確認するなり先導するコウモリの後を素直についていくのをしっかりと確認した。


 ……いや、ほんと、何でこいつ当時私の部下じゃなかったんだろうか。部下じゃなくても友人くらいの近い距離にいてくれると大助かりだったんだが。

 何度目かのこいつの能力ホント便利だなという確認をしていると、カノンの足が早々に止まる。

 コウモリが連れていこうとしているその先は、ものの見事に行き止まりだった。木の根が塞いでいるとかではない。普通に壁がある。


「えーっと……その先が多分こっちに続いてるっぽいんですがー……迂回した方がよさそうですね?」

 恐らく使い魔同士はそれぞれお互いの位置を把握しているのだろう。だからこそ最短距離で仲間と合流しようとした結果、障害物とかいうものの存在をまるっと無視しているのだろうが……流石に物理的に隙間もないような場所を突っ切れというのは無理がある。

 レオンもその事については理解しているらしく、壁をすり抜けろとかそういった無茶は口走らなかった。私が自らの部下に対してなら容赦なくそういう事を言ったかもしれないが。


「いや、もう面倒だからここ突っ切る」


 何を言っているんだ? と聞き返す間もなく、カノンは拳を壁に突き刺した。ごっしゃぁ、という音を立てて壁に突き刺さる拳。そしてそれから僅かに遅れてぴしぴしという音が響き、ばごんっ、という音がしたと思った直後には壁は粉々に粉砕されていた。


「よし、引き続き進行する」

「え、えぇ~?」


 どこか納得いかないとばかりにレオンが声を上げていたが、カノンがそれを気にした様子はない。むしろ何を気にする必要があるのかとばかりの態度でもって使い魔であるコウモリたちとともに突き進んでいく。


「こちらクライヴ、不本意ながら愚弟と合流した」

「不本意なのはこっちのセリフだ」


 使い魔を通じて、クライヴとカインの声がする。


「こちらも、お師匠と合流した」

「おー、ちなみにルディはまだ気を失っているからこいつ抱えて移動するのもきついしこっちはまだあまり身動きとれそうにないな」


 一瞬の間を置いてから、今度は小娘とゲイルの声がする。


 ふむ、引きずり込まれたとはいえ、何だかんだそれぞれがそう離れた場所に引きずり込まれたわけではなかったのだな、と少しばかりどうでもいい事を考える。

 今の所単独で行動しているのはカノンだけか。


 この状況であいつらや魔神ウルと遭遇しなければよいのだが……

(知ってますか、そういうのってフラグっていうんですよ)

 宿主の声がどこか呆れたように響く。フラグ、という言葉の意味は確か旧文明で使われていたように思うが……はて、どういう事柄を指すのだったか。


「ふむ、どうやら少しばかりそちらと合流するのは遅れるかもしれないね」

「あぁ、まったく面倒くさい」

(あれ!? そっち!? この流れってカノンじゃないの!?)


 使い魔がクライブとカインの声を通すと、何故か驚いたように宿主が叫ぶ。正直あまり私の頭の中で叫ばれるとこっちの精神が疲れるのでやめていただきたいのだが。


「おっと、何かあったみたいなんで一端映像そっちに繋ぎますねー」

「それぞれの連中を同時に映すのはできないのか?」

「それやるとめちゃくちゃ疲れるんでー。あまりに消耗しちゃうと使い魔とのパスが切れるかもですしー」

「成程」


 私も同じように全員の映像を映せと言われれば恐らく面倒極まりないだろうなと思うのでレオンがやろうとしない事に関して文句を言うつもりはない。


 カノンを映していた術が、一瞬暗くなったかと思うとすぐさま別の景色が映し出される。

 そこにはそれぞれが腰の刀に手をあてて、いつでも抜刀できるようにしているクライヴとカインの姿があった。

 そして、彼らと向かい合うように立っているのは――


「今日の俺はついてるかもしれねぇなぁ? こんな所で魔剣使いと遭遇するなんてよぉ」


 どこか気怠げに見えながらも、目は爛々と二人を見据えているノエルの姿だった。

 ……うわぁ。カインじゃないがこれは確かに面倒くさいと言いたくなるな。

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