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師匠は自称一般市民  作者: 猫宮蒼
三 大体師匠の章

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弟子の交友関係と偽三角関係



 片道三時間。それが、俺達の住んでいる所からもっとも近い人里だった。


 それはまぁ、いい。選んだのは俺だ。でもまぁ、片道三時間、往復で六時間、と考えると気軽に出かけられる距離ではないと俺は思っている。まぁなぁ? 俺も勇者として世界を一年で巡るっていう強行突破やらかしたけど、全部が全部徒歩だったかっていうと違うし世界を巡ったとはいえ全ての地を丁寧に巡ったわけじゃない。

 通り過ぎた場所だって当然存在するし、通る必要のない場所は当然立ち寄りすらしなかった。

 そうでもしないととてもじゃないが一年で巡るとか無理だから。

 そもそも魔王倒しに行けっていう無茶振りが事の発端だったんだが、そこはもう今更なので振り返るつもりもない。


 思い返せばあの一年は毎日が無駄に忙しい日々だったわけだが。



 何が言いたいかってーとだ。

 片道三時間って正直気軽に出かけようって思える距離じゃないよな。

 生活の為にどうしても行かなければならない、っていうならもう仕方ないけどそうじゃないなら気軽にちょっと遊びに行ってきますね、なんて感じで行く距離じゃないよな?

 馬鹿弟子もメトセラも別に近所と言うには少々難色を示したいその村に頻繁に出かける事もないし、必要最低限でしか足を運んでいないわけなんだが。


 それでも何故かここ最近馬鹿弟子が村に足を運ぶ回数が増えた。


 兄弟子殿兄弟子殿と普段馬鹿弟子にべったりなメトセラもてっきり一緒に行っているのかと思いきや、そうではないらしい。誘われれば一緒に行くが、自分から言い出す事はあまりしていないようだ。

 一緒に行きたいって言えば馬鹿弟子の事だから普通に首を縦に振るとは思うんだがな。


「いえ、でもあまりにもべったりしすぎると兄弟子殿に鬱陶しいと思われるかもしれませんし」


 などとメトセラは言っていたが。


 ……いやもう普段の様子を見る限り、既に鬱陶しいって言われる程度にはべったりな気がするんだがな?

 もしかしてそれでも言い出せない馬鹿弟子なりの避難なのだろうか、村に行くの。なんて思っていたのだが。


 馬鹿弟子曰く、最近村で友人が出来たそうだ。


 お前……ホンット、何でそんな所でコミュ力の高さを発揮してんの!? 馬鹿弟子を拾った時からの付き合いだけど、正直俺がほら、基本人里から離れて過ごしてるから他者との接し方ってあんまり教えてないし教わる機会も馬鹿弟子にはなかったわけなんだけど、その状況でコミュ力高いって何それ怖っ!

 普段は全く活かされないチートを見た気分だぜ……!!


 まぁ、俺が普段から割と馬鹿弟子相手に傍若無人に振舞ってるから? それを反面教師にした結果人当たりの良さを発揮してるだけかもしれんが。



 最近覚えた治癒魔術の練習も兼ねて村に行ってるらしいとは思ってたけど、まさかそこで友人できてるとか……まぁ確かに馬鹿弟子が自分で怪我をしてそれを治すにしても、限度ってもんがあるしなぁ。

 小さな怪我なら村のガキどもとか結構こさえてそうだし、そういう意味では実験台としては打ってつけだもんなぁ。馬鹿弟子はきっと実験台だなんて考えてすらいないだろうけど。


 ともあれ、友人ができたという馬鹿弟子はここ最近こまめに村に足を運ぶようになった。



 本来なら、もっと小さい時にそんな感じの生活をさせるべきだったのかもしれんな。などとほんのちょっぴり思ったりもしたが、その頃の俺は慣れない子育てに悪戦苦闘中だったのでそれも今更の話だ。

 そもそも俺は前世、彼女はいたけど結婚なんて話はまだまだ先のものだと思っていたし、キャンパスライフを満喫している真っ最中に死んだわけで。子育てとかそういうの無縁の存在だったからなぁ。

 そんでもってあれこれ異世界転生してないか? と思った時にはまぁ、それなりに生きていくために自衛程度に身体鍛えたりだとか、親の店継ぐのにあれこれ学んだりだとかで生活するので一杯一杯だったし。

 店を継いでさぁこれからだ! って所で勇者としてちょっと魔王倒しに行ってきてよっていう国からの命令。実際は捨て駒扱いだったわけだが。

 あの時そんな事がなければ多分店を経営しつつ、誰かしらと結婚する流れになってたとは思うんだけどな。


 今から所帯持つにしてもなぁ……普通の人間のお嬢さんが現状ロクな職についていない俺の所に嫁いでくるかというと有り得ないだろうし、メトセラみたいに転がり込んで行く場所がないからってんで俺と一緒になる物好きがいたとしても、まず間違いなく相手に先立たれるし何なら子供が生まれたとしてもそいつも俺より先に死ぬのがわかってるからなぁ……何せ俺不老不死。妻を看取って子を看取って、孫が生まれたとしてもそれらを看取り続けるのは正直きついものがある。


 人間以外の種族ならもうちょい寿命も長いだろうけど……まぁどっちにしても結婚するつもりがないからなぁ。したいと思ってもこの状況でできるとは思ってないし。


 馬鹿弟子の中にある魔王アイオンの存在が問題ないと太鼓判押せれば馬鹿弟子も独り立ちしてもいいだろうとは思ってるけど……まぁまだ無理だろうな。


 このまま何事もなく独り立ちもできなかったとして、まぁそれでもいいかと思ってる部分もある。

 あいつがいずれ年老いて俺より先に死んだとしても、それを看取るくらいならまぁいいかと考えた事は何度かあった。あいつが死んだなら、その時はアイオンも完全に死ぬだろうしな。それを看取るのは、ある意味で俺の責任でもある。


 できれば完全制御して独り立ちしてくれる方が楽っちゃ楽なのは確かなんだが。


 馬鹿弟子の処遇についてはまぁ、馬鹿弟子次第としか言いようがない。

 ところでメトセラはどうするつもりなんだろうか?


 メトセラにとっての最大の脅威であった魔女ヴァレリアは既に死んだ。これであいつは晴れて自由の身だ。もう己を脅かす存在はいないのだから、ここから先は自由に生きる事だってできるけれど。

 メトセラはそれでも俺の弟子という立場にある。

 ヴァレリア以外の脅威がないとも限らないし、最低限身を護る手段を身に着けたいとか何とか言っているけれど。


 ……正直な話、それ、俺の弟子である必要ある?


 いやだってほら、ヴァレリアの所で影武者として強制的とはいえ戦う手段は身についてるんだよな、メトセラって。もうこの時点で馬鹿弟子と比べて圧倒的に自衛手段は身についているといっていい。

 というかだ、カノンあたりと結構いい勝負繰り広げられてる時点でお前もう一人でも生きていけるだろって思うんだよな。戦闘力的な意味では。


 ……まぁ、馬鹿弟子と比べると圧倒的に家事能力は低いから、メトセラが一人で旅立つとして、どこかで暮らすにしても家の事をやってくれる相手がいないと厳しいだろう。冒険者とか傭兵としてなら充分どうにかやっていけるとは思うが、戦闘以外がからっきしと言うのもそれはそれで問題があると思う。

 そういう意味ではここにいるという選択はある意味メトセラにとって正解なのかもしれない。


 メトセラが独り立ちする際に馬鹿弟子と一緒に旅立つとかって展開があれば、多分今すぐにでも一緒に出てくとは思うんだが、馬鹿弟子はまだ独り立ちするの無理だからなぁ。

 メトセラが馬鹿弟子に向けている感情は恋愛なのか親愛なのか友愛なのかも微妙な所すぎてわからんが、まぁ恋愛寄りの親愛ってところだろうか。


 馬鹿弟子がメトセラに抱いている感情は多分普通に妹とかに向けるそれだと思うのだが、まぁ、それがここからどう変化するかはあいつら次第か。

 というか、まずメトセラの頑張り次第だろうか。馬鹿弟子がメトセラを意識しない事には話は進まんだろうしな。しかしメトセラが馬鹿弟子にアプローチするとなると、カノンが妨害するんだよなぁ。

 カノンは姿がアレとはいえ、中身は男だし別に馬鹿弟子にそういう感情を持っているわけじゃないし単なる忠誠心とかなんだが、傍で見てると泥沼の三角関係かな? としか思えないっていうのが何ともかんとも。



 ……まぁ、カノンの存在がもしかしたらいい感じに当て馬とかになるかもしれんので、俺は口を挟むつもりはないし、ウィンディも面白い見世物くらいにしか思ってないだろうからきっとそこら辺に関しては放置されるだろう。



 他にも馬鹿弟子に思いを寄せるような相手が出てきたらわからんがな。ハハハ。



 ――なんて思ったのがもしかしてフラグだったのだろうか。

 馬鹿弟子が村で新しい友人ができたと言っていたそれが、まさかそうだとかこの時点での俺は考えもしなかったのである。

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